泥亀の月(面影レイルバック・エピソード捌)の感想・レビュー

不況期における下請け中小企業の取材ルポという形式で主人公くんの父と樹理ママの慕情を描いたはなし。
いわゆる身分違いモノ。不妊に悩む樹理パパが妻を抱いてくれと親友である主人公くんの父に懇願する。
仁義に厚い主人公くんの父はしばらくの間、樹理ママを匿うことになり、心の交流がスタートする。
紆余曲折を経て主人公くんズ父子と樹理&ママの疑似家族が形成され平穏な時を過ごすのだが・・・
その時間は長く続かず、大手ゼネコンの権力闘争に巻き込まれた結果、全てが崩壊していく。
と、いうかこんな面白いシナリオ見せられたら樹理ゲー直行フラグまっしぐらなのでは?

主人公くんと樹理の出会いの話なのだが、主役は主人公くんのパパ:泥マサのはなし


  • 不況期における下請け中小企業の悲哀
    • シナリオの冒頭は、不況期において中小企業が必死になって大手ゼネコンを接待し下請け仕事を受注しようという場面からスタートします。傲慢なゼネコンに媚び諂ってでも仕事を得ようとする姿をとくとご覧ください。その酒宴の際、主人公くんのパパ:泥マサは、本編のメインヒロインである樹理の父、吉岡隼人と再会します。中小企業サイドの泥マサと吉岡建設の若き後継者:隼人は竹馬の友だったのです。やり手の泥マサはどんなに挑発されても見事に対応したのですが、友情の為ならば立ち上がらざるを得ません。吉岡隼人は中小企業側の接待を侮蔑する身内:吉岡重太郎を諫めようとするのですが、逆に男子の跡取りを生ませられないインポとしてやりこめられてしまうのです。それを見た泥マサは吉岡建設の用心棒たちをちぎっては投げちぎっては投げ。・・・接待はご破算かと思いきや、なんと数日後には下請けを受注することに成功していたのです。



  • 歪な疑似家族の形成
    • 吉岡隼人が権力闘争で吉岡重太郎から攻撃されていた要因の一つに、男子の跡取りを生ませられないということがありました。さらに妻が出産後不妊となってしまいます。隼人は苦渋の決断として親友である泥マサに妻を抱いてくれと懇願するのです。親友の頼みを断り切れなかった泥マサは隼人の妻;ルイディアーナを傍に置くことになります。ルイディアーナは泥マサの生活の世話を甲斐甲斐しく焼きました。泥マサは妻を亡くして以来、酒と喧嘩に明け暮れていたのですが、次第にルイディアーナに癒されていったのでした。
    • そんな折、隼人とルイディアーナの娘である吉岡樹理がママンを助けるために単身乗り込んできます。樹理の口からは自分の父親が如何に不甲斐ないかが語られます。曰く、吉岡重太郎がルイディアーナを寝取ろうと寝室に忍び込んだのだが、その強姦未遂の現場に直面しても父:隼人は何も言わなかったのだと。さらに樹理は重太郎から隼人が妻を他人に抱かせていると聞かされたとのこと。以上により樹理は泥マサの所にやってきたのでした。
    • 樹理は幼少期から吉岡家の仕込みを受けていた才女であったが故、自らたのむところすこぶる厚く、周囲を顧みない傾向がありました。そのため窮地に陥ってしまうのですが、それを颯爽と救ってくれたのが主人公くんだったのです。主人公くんは自らの身を挺して、樹理に世間の厳しさや低賃金肉体労働者の世界を教えていきます。自分の価値観をパラダイムシフトさせてくれた主人公くんに対し好感度はうなぎ上りですとも。こうして泥マサ、ルイディアーナ、主人公くん、樹理の歪んだ家族関係が成立したのです。泥マサは工場の仕事に専念し、ルイディアーナは医療スキルを活かして村人の信頼を獲得、樹理は子どもながら廃品リサイクル貿易を考案し、主人公くんは出稼ぎ外国人娼婦の子どもたちの世話をする託児所の真似事とそれぞれが活躍していきます。


  • 平穏な時間の終焉
    • 不妊だったルイディアーナが見事懐妊します。父親ははいったい誰なんだ!?ということが普通だったら問題になるのでしょうが、主人公くんも樹理も誰も気にしません。寧ろみんなハッピー。樹理は生まれてくるのは弟と確信し、ワクワクが止まりません。泥マサの亡き妻の父である工場長は、ルイディアーナに泥マサの後妻となってくれと頼む始末です。亡き泥マサの妻の月命日における3つの誓いと報告会に樹理が招かれたところもグッときますね。しかしそんな平和な時間も長くは続かず、ルイディアーナを抱きたいと願う吉岡重太郎が襲撃してくるのです。見事それを凌ぎ切った泥マサファミリーでしたが、吉岡重太郎から隼人が解雇されたことを聞かされると、ついにルイディアーナは袂を分かつことになります。そもそもルイディアーナは芯の強い人であり、今までおとなしくしていたのも、隼人のためにということでした。しかし隼人が吉岡家から解放されたならば何の遠慮はいりません。隼人を救うためにルイディアーナは出ていくことになりました。しかしそれは行き違いとなり、何もかも失った隼人が泥マサを逆恨みし、泥マサの腹部を刺して逃走します。しかも泥マサの住居であった廃工場には火を放たれたのです。絶体絶命の危機に際しても泥マサは男を見せ、全員を救出します。この時、主人公くんに助けられ、泥マサに救われた樹理は、全力を賭けて将来主人公くんの力になることを誓うのでした。「泥亀の月」はここでお開きとなります。

  • 「泥亀の月」と体験版の間
    • 「泥亀の月」の終局部では泥マサはまだ生きています。また、ルイディアーナは出ていったきりで精神崩壊していません。ゆえに、ここからどのようにして泥マサが行方不明となり、ルイディアーナが精神崩壊し、樹理が会社を乗っ取って自分の勢力を確立し、主人公くんが吉岡家の養子となるのかが描かれていないのですね。・・・と、いうか本編できちんと描かれるのでしょうかね?非常に気になります。これだけでも購入意欲が高まってきますね。個人的には吉岡重太郎のntrや隼人と泥マサの決着などがあってルイディアーナが精神崩壊するのではな?とテキトーに思っています。
    • そしてエンド後の製品版のお知らせには「コマ(主人公くん)と樹理の再会の物語」とキャッチコピーが謳われており、樹理エンド直行フラグまっしぐらであることがうかがわれます。と、いうかこのシナリオやったら好感度高すぎて本編1周目は樹理√を選ばざるを得ません。養子となった主人公くんはそれこそ樹理のために頑張ってきたのですから!!
    • あと気になるのは樹理が三姉妹ということですかね?二人目不妊ということから樹理が長女で妹が次女かと思っていたのですが、樹理には実姉がいるのでどういうことなの?という伏線も気になりますね。