枯野瑛『終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか?♯05』(角川スニーカー文庫、2017年)の雑感

搾取の上に成り立つ平穏を無意識に享受する罪を罰せよ!がテーマなラノベ
主人公くんが求めるのは全種族の公平な罪の負担。全ての者が罪を贖えと願う。
その具体的な手段が、存在を知る全てのものを洗脳・動員する異能兵装。
シナリオの内容としては、登場人物増えすぎて時間軸もストーリーも全然進まなかった・・・。

雑感

  • 安穏と生きているだけで背負う無自覚という罪
    • 私たちがただ生きているだけのこの世界は、ただ生きているだけで、搾取の上に成り立っています。食べ物だって外国人研修制度で奴隷労働の上で生産されているものを口にしているわけですし、コンビニを利用するのだって低賃金非正規雇用労働者にレジ打ちをしてもらっています。教育産業だって授業料は教員や講師にではなく学校法人に支払われるのであり、教員には労働コストとして法人から人件費が支払われるのです。しかし、これらの状況を誰もが当然と思っており、異常だと思うものは皆無であり、日常を送っているわけです。この誰かの犠牲・搾取の上に無自覚に成り立ち、平穏を享受することにNOを突き付けるのが、我らが主人公くんというわけなんですね。自覚せよ!この世が搾取でなりたっていることを。お前の安寧は誰かの犠牲に成り立っているのだと。
    • そんなわけで主人公くんは全人種に、自分たちの平穏は妖精兵の犠牲に成り立っていることを自覚させることが目的なわけです。いや、自覚させるだけでなく、立ち上がらせて当事者として舞台に引っ張り出し責任を負わせることを望んでいるのです。しかしながら、あまりにも無力!舞台にすら上がれないほど無力!!主人公くんは当事者にすらなれず、現実と理想の狭間に苦しみます。
    • このような状況において作者が用意した問題を解決するための装置は、「存在を知るものを全て動員することのできる異能」。この異能を使えば主人公くんは負担を一部の非搾取人民に押し付けるのではなく、全人類の負担に分かち合えると考えるのでした。この異能を巡ってグルグルしている間に5巻は終わります。シナリオ全然進んでいないやん!!