2018年 東京大学 世界史 第1問 「近現代女性地位向上史」の紹介・解説


はい、受験世界史を紹介するコーナーです。増えろ受験世界史選択者!!
東大世界史は大問ごとに大論述、中小論述、小問集合となっており、毎年大論述のテーマが何か注目されています。
今回は近現代女性史ということで近現代における女性の地位向上がテーマとなっています。


近現代女性史は近年注目されていて資料集などではピックアップされてテーマ史のネタとなっているわね。
と、いうわけで問題をば。



出題者の要求は以下の二つを具体的に記述すること。
(1)19〜20世紀の男性中心の社会の中で活躍した女性の活動について
(2)女性参政権獲得の歩みや女性解放運動について


それではまず使用キーワードの整理から始めるのだわ。
まずは女性の地位向上史の時系列的にワードを整序するのだわ。

  • 産業革命
    • 前近代農村社会における分業と協業は性的性差(セックス)であったのに対し、近代資本主義社会は社会的性差(ジェンダー)を生み出したことを指摘する。プロレタリアでは低賃金労働の担い手とされ、ブルジョワでは家庭内部に専念された事を述べる。
  • 人権宣言
    • 人権思想によって「法の下での平等」が説かれた。しかしその対象となる近代的「市民」には成人男性しか含まれていなかったことを指摘する。
  • フェミニズム(第一波)・キュリー・ナイティンゲール
    • 女性参政権運動。プロレタリアによる労働運動や社会主義運動と女性参政権運動が結びつき、運動が本格化していったことを指摘する。
    • キュリーやナイティンゲールは理系(自然科学や医療)における男性優位社会の中で活動し、女性の地位向上に貢献したことを指摘するために利用する。
  • 総力戦・第4次選挙法改正(1918)
    • 戦争と社会契約。総力戦により銃後が動員され戦争に社会的弱者(プロレタリア・植民地人・女性など)が協力したことから戦後にその代償として地位向上を求める動きが現れたことを指摘する。
    • 第4次選挙法改正は総力戦による女性の地位向上のイギリスにおける具体的事例として扱う。


この流れで整理すると、産業革命による近代資本主義社会の成立が現代における女性差別の根本を生み出し、世界大戦による総力戦が女性の社会進出を促して制度上の平等が進み、第二次大戦後に社会的性差のステレオタイプ(結婚・生殖・育児)に対し自己決定権が要求されるようになったことまとめれば良いという方向性が立ちそうですね。


ちゃんと自分でも書いてみなさい。そしたら予備校のwebサイト見に行って、自分の答案と比較しなさいね。自分で解答作らないで、アレコレ言うのはダメよ。


と、いうわけで書きました。皆さんはどんな視点で書きましたか?

産業革命により近代資本主義社会が成立するとジェンダーが発生した。従来の農村社会では女性は性的性差に基づく協業を行っていたが生活と労働が分離されプロレタリア階級では女性が低賃金労働の搾取対象となりブルジョワ階級では家事の担い手とされた。人権宣言において「法の下での平等」が説かれたが対象は成人男性であり女性は含まれていなかった。このような中、社会運動が盛んになると女性もそれと結びついて第一波フェミニズムが起こり参政権を求めた。男性優位の社会で活躍し女性の地位向上に貢献した人々もいた。キュリーは高等教育の門戸が女子に開放されていない中でラジウムを発見する等しノーベル賞を得た。またナイティンゲールは上流階級出身ながら当時娼婦のような職業であった看護婦の道に進み、クリミア戦争で負傷兵の看護に励み、病院改革に貢献した。だが制度上の平等の決定的な要因となったのは総力戦体制である。第一次世界大戦は銃後の戦争協力を必要としたため、労働者・植民地人・女性等の社会的弱者も戦争に動員された。これにより戦後、社会的弱者の地位向上が実現した。例えばイギリスでは第4次選挙法改正(1918)で30歳以上の婦人に参政権が付与された。しかし結婚・生殖・育児を女性の理想像とする固定観念は払拭しがたかった。それ故、第二次大戦後、第二波フェミニズムが起こり性と生殖に関する自己決定権が追求され、国連で女性差別撤廃条約(1979)が成立した。(597字)