アニメ化記念でweb(ジャンプ＋)にゴールデンカムイが公開されていましたが期限は2月いっぱいまでだったようです。
結構楽しみに眺めていたのですが、ちょうど区切りが良い所で終わったのでひとしきり満足。
シカのウコチャヌプコロで話題となって以来、アイヌ漫画だと思っていましたが、一概にそうではありませんでした。
いうなれば日露戦争後の北海道漫画。諸勢力が自分たちの欲望に基づき金塊を巡って争う話でした。
手塚治虫の『シュマリ』がちょうど日露戦争あたりで終わるので時代的にはそれを引き継いだ感じ。
余談：こんなにも血みどろのシーンが多い作品をどうやってアニメ放送するのだろう・・・
web公開されてたところ(第31話)までの雑感
- アシリパさん
- アイヌ文化担当。アイヌ語やアイヌ文様などの紹介もなされるが、何といっても味わい深いのは狩猟文化。生き物を見ると大抵は「じゅるり」となり、狩りして食べようという流れになります。本人としては好意を示すため、やたらと杉本に獲物の目玉や脳みその生食を進めてきます。杉本が躊躇すると押せ押せで食べるように促してきて杉本は結局それを食べるという展開が見ていて微笑ましいですね。アシリパさんの集落の人々もその様子を感じてか暖かく受け入れており、アシリパさんのおばあちゃんは杉本とアシリパが結婚することを願っていたりします。
- アシリパさんが金塊を探す目的は父親の仇を討つこと。金塊はもともとアイヌの人々が集めたものでした。明治日本が蝦夷地を内国植民地化し、先住民であるアイヌ人たちを追いやっていくのですが、アイヌの人々はこれに対抗するため、川で砂金を採り集めていたという設定です。しかしアイヌの人々はこの金塊を奪われてしまい、その在り処を知っている者は収容所にぶち込まれています。犯人以外の日本人たちもこの金塊のことを狙っており、金塊が見つからないと、犯人も処刑されないというのです。アシリパさんは犯人の処刑が父親の仇となると捉え、金塊を見つけようとします。
- 不死身の杉本
- 日露戦争従軍後除隊。愛する女(幼馴染の未亡人)の目の治療のために金塊を探します。杉本は愛する幼馴染がいたのですが、杉本一族は結核にかかってしまい唯一生き残った杉本は村を出たのでした。この時女は杉本に一緒に連れてってと言います。しかし杉本は結核がうつることを恐れ、女を置いていったのでした。数年後、結核が発症しなかった杉本は村を見に行きましたが、既に女は親友の嫁になってしまっていたのです。その後、杉本は親友と共に大陸へ渡り日露戦争の二〇三高地戦に参加。なんとそこで親友は戦死してしまいます。その間際に杉本が惚れていた幼馴染の女は目を患っていることを聞かされ、女を託されるのでした。
- 日露戦争後、杉本は親友宅を見舞い遺品を届けに行きます。その際、女は視覚を失った代わりに嗅覚が発達していました。杉本のヒト殺しすぎた匂いを感じ取り、杉本に対し恐れを抱くのです。これに愕然とした杉本は自分が未亡人となった女と一緒になることはできず、せめて目の治療だけはと、アメリカ渡航費・手術代のため、金塊を探すこととなったのです。
- 杉本は殺人狂とも描かれていますが、他方で思慮分別も持ち合わせており、心優しいところもあるのが魅力的ですね。日本人としては食べにくい動物の生の脳みそや目玉も、アシリパさんが好意ですすめてくれるのを分かっておりヒンナヒンナときちんと食べるのです。そしてアシリパさんの村に招待された時には、ノコノコとついていくのではなく、征服者である日本人が訪問したら村を混乱させるのでは？と配慮したり、村の人々から愛されるアシリパさんを見て、闘争に巻き込んではいけないと静かに村を去るところなどはなんともいじらしいではありませんか。アシリパさんが動物を食べ物としてしか見ないのに対し、情をかけちゃう杉本もすてき。
- 第七師団のひとたち
- 北海道産業開発描写担当。凍てつく大地を産業化して人々に安定して恒久的な仕事を与えちゃうゾ☆戦争ではよくあることですが、戦争終結後の帰還兵の末路というものは酷いものです。国家のためにと言われて動員され、用済みとあればボロ雑巾のように捨てられます。旅順攻囲戦で活躍した第七師団の人々もそうであり、日露戦争後に待ち受けていたのは、国家による悲惨な待遇でした。そのため、使い潰された人々を救うために北海道の産業開発を目指していきます。北海道の内国植民地としての性格を実によく描かれており、戊辰戦争後の敗残者の受け入れや第二次世界大戦後の引揚者の受け皿などで北海道が果たしたその役割がとても面白いです。
- あとなんか新撰組の土方歳三とかも出てきます。『シュマリ』でも土方歳三が出て来たけど五稜郭で戦死している設定から実は土方死んでない説とかみんな大好き。
