- ダークツーリズムとは何か?
- ダークツーリズムとは戦跡や墓地などのような死と関連付けらる場所への旅を指します。そこに死を認識できるかという旅行者の主観性に左右されることもあり、墓参りや慰霊もダークツーリズムとして位置づけられるかという議論もありますが、人々が移動するプル要因となっていることもまた事実かと思います。今回の報告では冷戦体制崩壊後に行われたシベリア抑留経験者による現地訪問が扱われました。そのため長勢了治『シベリア抑留』(新潮選書、2015)におけるシベリアの墓参に関連する箇所をまとめておくこととします。
長勢了治『シベリア抑留』(新潮選書、2015)におけるシベリアの墓参に関連する箇所
ソ連/ロシアへの墓参
- 冷戦期における墓参状況
- ゴルバチョフと「捕虜収容所に収容されていた者に関する日本政府とソ連政府との間の協定」
- ソ連……に変化が現れたのは、ミハイル・ゴルバチョフが昭和60年にソ連共産党書記長に就任してペレストロイカとグラスノースチを進めてからである。ソ連大統領ゴルバチョフが来日し、平成3(1991)年4月18日に「捕虜収容所に収容されていた者に関する日本政府とソ連政府との間の協定」が締結された。この協定により、抑留中死亡者の資料、墓参、墓地調査、遺骨収容などに関する基本的な枠組みが定められ、ソ連地域での遺骨収容と新たな埋葬地への墓参、慰霊碑の建立が可能となった。このとき約3万8000人の死亡者名簿(ゴルバチョフ名簿)と549枚の埋葬地資料が提供され、日本国内できわめて大きな反響を呼んだ。……このあと政府、抑留者団体、個人によるソ連各地の墓地への墓参が、毎年のように行われるようになった。(pp.289-290)