スマホゲームのライブイベントを利用した群馬県前橋市の観光政策(002)「SNSの情報共有によるコト消費形態と地域経済の活性化について」

前橋市が取り組んだ観光政策】

【観光マップのコダワリ×AR技術】

  • 具体例:結城晴というキャラにちなんで「結城屋」に配置するコダワリ 
  • ゲームのキャラクターに対する深い理解と、ユーザーの行動理念の把握
    • 特筆すべきが、(4)の観光マップです。これは適当に地図にキャラを並べただけではありません。キャラの配置にコダワリがあり、キャラと関係性のある名産品や地名に縁づけて配列されているのです。しかもそれは「分かる人には分かる」という「謎解き」要素を含んだ形として提示されています。例を挙げると、「結城屋」というお蕎麦屋さんの位置には「結城晴」というキャラが配置され、「まゆ」というワードは「佐久間まゆ」にちなんで他の文字が青色なのに「まゆ」の字だけ赤になっています。他にも色々と小ネタが満載です。皆様もレッツチャレンジ!MAPはこちらからDLできます⇒(http://www.city.maebashi.gunma.jp/653/654/p020028.html)
    • キャラクターを重視するコンテンツツーリズムでは、キャラにちなんだものの需要が掘り起こされます。アイマスというゲームシリーズは、キャラクターのプロデューサーとなって二人三脚で歩んでいくというゲーム内容であるため、特にキャラに愛着が湧く仕組みとなっているので、こういう細かい配慮に反応しやすいのです。例えばアイマスシリーズの「高槻やよい」というキャラの設定上の誕生日3月25日には定食の店「やよい軒」の高槻店が大行列になるほどです。(毎年3月25日に行列 「やよい軒」高槻店の不思議 今年は100人待ちも - withnews(ウィズニュース))
  • AR技術とSNSと観光の組み合わせの実践例
    • その上、ちょうどタイムリーなことに9月7日に「デレステ」に「ARスタジオ」が追加されました(Social Game Info 2018年09月07日 17時49分)。これによりスマホのカメラでキャラクター達を日常風景の中に映し出すことができるようになりました。プロデューサーさんたちは、早速この「ARスタジオ」の機能を利用し、「観光マップを見て実際に訪れた土地で、3Dのアイドルを召喚し遊ぶ」という行為を実践したのです。これをSNSにあげることで情報を拡散させるとともに、それを見たユーザーたちに同様のことをしたいという欲望を喚起させる装置となったのです。「AR」技術を用いた新しい観光スタイルの事例としても、この前橋市の「デレステ3周年イベント」は歴史的意義があるものとなりました。
  • マップ製作者による裏話

 

デレステ3周年イベント×産学官連携地域活性化イベント】

  • キャラクター商法
    • 2日目にあたる9月8日(日)は、「デレステ」の3周年イベントにかけ合わせて、産学官連携地域活性化イベント「まえきフェス」(pdf)が展開され、これが大当たりとなったのです。上述の通り、キャラクターに特別な愛着を持つプロデューサーさんたちにとっては、話題作りのための「関連アイテム」が欠かせません。また販売者がゲームの小ネタを理解した上で提供すれば、プロデューサーさんの方たちもテンションが上がります。
    • 今回特に注目を集めていたのが、「ころとんのしっぽ」こと「ソーセージマルメターノ」と「赤城山」の御神水で作った「かき氷」でした。前者の「ころとんのしっぽ」は「北川真尋」というキャラがゲーム内で「ソーセージマルメターノ」を食しており話題を呼びました。また赤城山の御神水で作ったかき氷は、「赤城みりあ」の聖水で作られたかき氷である!と一部のみりあPの方々から認識され販売促進効果を生みだしました。
  • 赤城みりあの御神水

まとめ

  • 小括
    • 民間のライブイベントを上手く取り入れた行政による観光政策の成功事例
      • 今回の取り組みはコンテンツツーリズムが上手く機能した事例として観光政策のサンプルとなると思います。また以下の2010年代後期の社会状況に前橋市が上手く適応した点で社会史的にも記憶されるべき事例となりました。
    • 携帯端末(スマホ)の普及による社会変化
      • スマホによりゲーム産業が家庭用据え置き機からスマホゲーへと変化した(デレマス/デレステの登場)。
      • スマホによりいつでもどこでもインターネットに接続できるようになった。
      • スマホにより人々がSNSで情報を共有することに楽しみを見出すようになった。
      • 資本主義社会が成熟し、モノ消費よりもコト消費へ重点を置くようになった。
      • 以上を踏まえてコンテンツツーリズムが盛んになった。
    • コンテンツツーリズムを利用した観光政策の側面
      • 安易な商業主義に走るのではなく、元ネタとなったゲームやイベント、ユーザーの特性を深く理解していた。
      • 行政主導の観光政策だけではなく、産学官連携地域活性化イベントにデレステ3周年のイベントを掛け合わせた。
      • ゆるキャラ(ころとん)が一発屋で終わるのではなく、味わい深いキャラクター像を確立した上でSNSによる宣伝活動に努め、ゆるキャラ自身の認知度を上昇させ、キャラクターグッズがバカ売れした。

前橋観光を楽しむ人々の報告

  • ころとんのしっぽ

  • シャンゴ(パスタ)

  • 臨江閣(内部)

  • エベレストダイニング

  • ハルナメガネ