雑録

夏海公司『ガーリー・エアフォースⅧ』(KADOKAWA、2017年)の感想・レビュー

「少女>世界」。所謂セカイ系しようとした主人公くんが、セカイ系を否定し社会にコミットする話。
当初は愛する少女を永遠のループに嵌めてしまうぐらいなら世界なんて滅んでしまえ!と息巻くが・・・
少女は何よりも世界平和、地球環境の保全、人類の種の存続を尊んでいたため、すれちがう。
主人公くんは苦悩と煩悶に苛まれるが、ママンの教えを思い出し輪廻からの解脱にチャレンジする。
n周ループした俺たちには散っていった数多の並行世界の俺達の知識と記憶があるんだ!
愛する少女を救うため、社会的連帯を取り戻し、地球環境の保全に挑んでいく。

ループor世界の終焉 ではなく円環の理からの脱却を目指す

  • 本作のループ世界の設定とその問題点
    • ガーリー・エアフォース』のループは以下のように成り立っています。まず現代文明は火の鳥未来編やナウシカのように滅亡しかけます。その際、自らの過ちにようやく気付いた人類は、文明が世界を滅ぼさないようにするため、文明制御装置を発明し、それを過去の世界に送り込むのです。その文明制御装置は、人類が世界を滅ぼしてしまうほどの科学力を持つ程度にまで文明を発達させると、文明レベルを下げるまで人類を殺戮していくというものでした。この文明制御装置による人類殺戮の危機に直面した21世紀前半の人々は、その解決方法として、次のような方法をとります。すなわち、自らが作り出した演算装置少女を使って文明制御装置をさらに1000年前の世界に過去跳躍させることでした。こうしてループが発生し、【21世紀前半になると文明制御装置が発動し人類が滅亡の危機に陥る】→【一人の少女を犠牲にすることで文明制御装置を11世紀前半に飛ばす】という繰り返しが成立したのです。
    • 問題点は、そのループのために犠牲になる少女に、主人公くんが好意を抱いてしまったということです。1周目の自分の過去を見せつけられたn周目の主人公くんは、バックレかまして少女と共に逃げ出そうとします。しかし少女は自分の存在意義を人類の救済、地球環境の保全、種の存続に置いていました。そのため、少女は逃げ出すことなんてできないのです。主人公くんは現実から目を背け、ウダウダとボイコットを敢行し、駄々をこねる事しかできませんでした。
  • 如何にして主人公くんは再起せしか?
    • 何もかも投げ出し駄々をこねる主人公くんはどのようにして再起するのでしょうか?主人公くんを立ち上がらせるのはママンとの思い出です。かつて自分が幼かった時にやりこんだ問題集を見たことにより過去が想起されていきます。ママンが教えてくれたのは、「何度間違えてもいい、最終的にできるようになれば」という思想でした。引用しておきましょう。

『失敗を悪いことだと思わないで。人間はこれ以上ないくらいたくさんの間違いを重ねて進歩してきたんだから。たとえるなら、9割9分外れのあみだくじをみんな1本1本潰していった感じ。前の人が失敗してくれなかったら、私たちも勝率百分の一のギャンブルに挑み続けるしかなかったでしょ?だからがんがんチャレンジしてがんがん失敗すればいいの。あなたも周りの人も』(148頁)

    • このママンからの言葉を思い出した主人公くんは、これをヒロインの力でループの記憶を反映できる自分に当てはめることができたのです。俺にはかつて失敗していった並行世界の俺達の力がある!これを活かせばきっとループからヒロインを脱却させられるはずだ!!と再び生きる意志を取り戻すのです。一方、ヒロインはヒロインで自己犠牲により主人公くんを生かせるのなら自分はどうなってもかまわない、とヒロイックに陥っていましたが、これを主人公くんは口説き落とし、一緒にループを超えようと説得するのです。ここら辺の展開は結構アツいものがありますね。文明制御装置を止めるためには、装置に人類が地球を滅ぼさない存在であることを認識させねばなりません。いったいどのような手法をとるのでしょうか?