夏海公司『ガーリー・エアフォースⅡ』(KADOKAWA、2015年)の感想・レビュー

役割分業(人間が操縦、ヒロインがレーダー/火器管制を担当する)の優位性を示す話。
軍用機ヒロインズの集中運用が始まり、徐々に兵力が集まっていく小松基地
2巻では衛宮切嗣よろしく人類70億救済の為なら日本人1億2千万は死ねヒロイン登場。
一方、異星人たちは前線基地を構築しだしたため、その破壊が主な任務となり沖縄へ行く。
冒頭で主人公くんはお荷物な自分に悩むが、グリペンちゃんと分業して活躍することになる。
あとグリペンちゃん=主人公くんの亡母説かのように感じられる描写がチラホラ。
そして異星人の正体の伏線も張られ、人類=地球の害虫説の匂いを感じる。

お荷物感に悩む主人公くんが役割分担で自分の存在意義を示し大活躍!

  • 分業と協業
    • 主人公くんがいないと意識障害に陥ってしまう演算装置少女グリペンちゃん。兵器としては片手落ちであり、演習でも成果が上がりません。それもそのはず、演算装置だからこそ人間にはできない動きをすることが強みなのに、主人公くんを乗せていればその動きが制限されてしまうからです。主人公くんは自分がお荷物になっていることを感じずにはいられず、苦悩します。この主人公くんの苦悩を解決することこそが、2巻のテーマとなっています。
    • その解決方法とはすなわち分業と協業。主人公くんが操縦を担当し、グリペンちゃんがレーダーと火器管制に集中することで能力の向上が増すという寸法です。この分業と協業はふたつの見せ場がありました。まず1回目は、腹黒新キャラファントムちゃんを懲らしめるために使われます。この新キャラは衛宮切嗣よろしく人類の救済を命題に掲げております。そのため人類70億人のためには、日本人1億2千万など切り捨てられるという思想の持主なのです。そしてファントムちゃんは勝つためには平気でウソやごまかしや裏工作を行い、協調性の欠片もありません。そんなファントムちゃんに言う事を聞かせるためには能力を示す必要があるわけです。ここで主人公くんは、ファントムちゃんの裏をかくために、グリペンちゃんではなく実は自分が操縦を担当するという作戦を使って大勝利を収めます。この作戦は有用性が証明され、2回目は敵勢力に対しても使われます。グリペンちゃんがレーダーと火器管制に注力すれば、どこからでもミサイルをあてることができ、超常的な動きをする必要などなくなるのでした。以上により、主人公くんは当初抱えていた役に立たない足手まとい扱いから脱却し、むしろ新戦術の担い手として無双するのでした。
  • 話の伏線について
    • グリペンちゃんと主人公くんが過去に会ったことがあるよフラグが1巻の時から建てられていますが、2巻では主人公くんがパイロットになるために目指していた資格取得の本が出てきます。このことからグリペンちゃんて実は死んだ母親の転生系?とも邪推してしまうのです。
    • そしてまた、人類って地球にいらないんじゃね?説話の匂いが感じられます。グリペンちゃんたち演算装置少女は異星人の一部を使って組成されていますが、ファントムちゃんの記憶の残滓には『この星を守らなければ』という強い思いがこびりついていたのです。もし「この星」が地球であることを想定すれば、星を守る存在が人類を殺しにきているので、地球に人類いらねーんじゃん?ということが感じられるのですね。