雑録

夏海公司『ガーリー・エアフォースⅦ』(KADOKAWA、2016年)の感想・レビュー

本作の世界設定が明らかになる話。ポストアポカリプスなナウシカ展開×ループモノだった。
未来の人類は滅亡に際し愚かさを反省。文明レベルを抑える歴史改変システムを過去へ送り込む。
21世紀前半になると歴史改変システムが発動。人類を間引いて資本主義社会を駆逐しようとする。
だが当事者にとって人類という種の保存のために個人が犠牲になるのはたまったものではない。
故に歴史改変システムをグリペンの能力でさらに1000年前に飛ばし、21世紀前半の文明は保たれる。
歴史改変システムによる間引きを経験したことによりより良い未来ができると信じて。
つまりグリペンが犠牲となり続けることで円環の理の中に歴史改変システムを封じ込めたのだ。
7巻の話は、このループが発生することになった経緯、すなわち1周目を描いた内容だったのだ。

ポストアポカリプス×文明抑制×ヒロイン犠牲による円環の理なループ

  • 人類終焉の危機に際してようやく愚かさを反省し文明制御装置を過去へと送り込む。
    • 7巻でようやく世界設定が明らかになりましたね。最初は『ガーリー・エアフォース』って現代の航空機を主軸として空戦をメインにしたものだと思ってました。まさかこんなにも世界設定考察系だったとは。物語の背景には二つの要素があり、一つ目がポストアポカリプス。二つ目がループです。まず一つ目のポストアポカリプスについてみていきましょう。
    • ポストアポカリプス
      • これは漫画版ナウシカを想起して頂ければ分かりやすいです。資本主義社会により形成された人類の世界文明は最終的に地球を滅ぼすに至ります。ナウシカでは世界の浄化が試みられ、遺伝子組み換えにより闘争心や欲望などを切除された新人類に新たな世界が託されるはずでした。しかしこれには時間がかかるため、ナウシカたち旧人類は汚染された世界でも生きられるように肉体改変されたうえで、世界を維持するための道具として扱われていました。すなわちどんなに生き延びようとも清浄化された新世界においてナウシカたち旧人類は生きられなかったのです。このことに気づいたナウシカたちは清浄化システムが人類の希望として作られたものであると知りながらも、システムを壊し、旧人類自らによる社会改革を目指すのです。
      • では本作の場合ではどうでしょうか。文明の発達による人類の滅亡という点は変わりません。ガーリー・エアフォースの人類たちはその滅亡に際し、人類の救済は文明レベルの抑制であるという結論に至ります。それ故、過去の世界へ文明抑制装置=歴史改変システムを送り込み、文明が発達しすぎないよう仕向けたわけです。ある程度文明が発達し、セカイの汚染が始まると、文明を滅ぼすインベーダーが発生するという寸法です。
    • ループ
      • しかしながら滅ぼされる人々にとってはたまったものではありません。そこで試みられたのが文明抑制装置との対話でした。主人公くんは「人類はその理性により新しき世界を創造できる」ということを、文明制御装置から組成されたグリペンちゃんに体得させるのですね。これによりグリペンちゃんは自らと共に文明制御装置を1000年前に過去跳躍させることができるようになったのです。こうして11世紀~21世紀の間に円環の理が生成され、【21世紀前半に文明制御装置に滅ぼされかけることで人類が反省する】→【文明制御装置は11世紀に過去跳躍する】というループが発生成立したのです。ここからグリペンちゃんはひたすらループの環の中に一人閉じ込められることになったのです。何回も何回もループが行われ、その度に並行世界が増加していき、最終的には反省した人類による世界が分岐するけれども、グリペンちゃんは輪廻に取り残されるという呪縛が生成されたのでした。
    • 輪廻からの解脱を
      • 7巻ではこの円環の理が発生することになった1周目が描かれます。この1周目の絆があったからこそ、どの周回でもグリペン√に入ってグリペンエンドになるのですね。1巻でのグリペンとの出会いも必然であったということです。しかし、このことを知った主人公くんは、愕然とします。何周も繰り返されているということは、どの世界線の自分もグリペンちゃんを捨てて世界の存続をとったわけだろー!?と。ここでセカイ系展開が発動し、セカイの危機なんてどーでもいい。俺は世界を救わない。グリペンちゃんさえいればいいのだ!という結論に達し、第8巻へ続くエンドとなったのでした。