雑録

さくらいろ、舞うころに 体験版の感想・レビュー

卒業式実行委員会となった高校生たちの青春群像劇。
意固地で頑な、一人で空回りする実行委員会の委員長を救え。
「お世話になった先輩のため」と唱える委員長の想いは本物なのだが・・・
その一方で卒業式を「自己の能力証明」の手段として捉えていたことを吐露される。
思いやりがありながらも、その反面プライドが高く思い込みの激しい少女の力となれ。
体験版ではメンバーを集めて式典準備を軌道に乗せる所までプレイできる。
一番かわいいのはるちえ先生キャラデザの理子だが攻略できない。

「卒業式実行委員会は単なる自己の存在証明の手段にしか過ぎない」

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  • ホワイトグラデュエーション!
    • 卒業式実行委員会で有名な作品としては『はつゆきさくら』がありますが、霊魂崇拝をモチーフにしたファンタジー的傾向が強い作品でした。本作の場合はフツーの高校生が、卒業式を試行錯誤していく青春群像劇がウリになっています。
    • メインヒロインの水城みなは卒業式実行委員会の委員長。舞台となる学校では、実行委員会が特色ある卒業式を開催させることで有名なのだとか。しかし、近年の卒業式は形式的なものにしかすぎなくなっていました。そのため、みなは一念発起し、お世話になった先輩方のためにステキな卒業式を贈りたいと息巻くのでした。しかしみなは熱意はあるものの猪突猛進タイプであり深い考えはなく自分の凝り固まった思想に囚われ何もかも上手くいきません。主体的意志をもって実行委員会に入りたいという人物以外はお断りとでも言わんばかりに、教頭先生のメンバーを集めよとの助言にも反発ばかりでした。このような委員長の手助けをしていくことが体験版の主な内容となっています。



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  • 主人公の人物像
    • では、委員長を助ける我らが主人公くんはどんな人物なのでしょうか。あまり露骨ではないのですが所謂「なろう系さすおに俺ガイル的主人公くん」です。すなわち、問題を抱えている人々に対し、第三者的な新たな知見(しかしそれはかなりご都合主義的なことが多い)を提供して物事を解決に導くことで、安易な称賛を得るというものです。冒頭では、主人公くんを女子寮で受け入れさせるために、お涙頂戴的な妹とのエピソードが挿入されるのですが、これに耐えきれず投げてしまった人も多いのではないでしょうか?その他、ちょくちょく主人公補正で活躍する様を見せつけられる上、俺またなんかやっちまいましたかね?と鈍感難聴系の片鱗を見せてくれます。しかしそんなには露骨ではないので、まだ目を瞑れる程度です。



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  • 自分の内なる私的欲求を如何に正当化し社会に還元させるか。
    • 体験版の一番のウリは、委員長の水城みなが自分の内面性を吐露することだと言えるでしょう。みなは様々な美辞麗句を並べて先輩への想いを語っていました。確かにその想いを持っていることも確かなのでしょう。しかし、その根源は自分の私的欲求に過ぎませんでした。水城みなは何をやっても「中の上」であったことにコンプレックスを抱いていました。その上高校ではウルトラ進学校に入学したため、ただの凡人になり下がっていたのです。自分の存在意義を示したい、能力を証明したい、アイデンティティを確立したい、他者から承認してもらいたい、見栄をはりたいという様々な「存在証明の欲求」で腹の中が渦巻いていたのです。そんなみなは自分が任された卒業式実行委員会を見事成功させることで、自分の力を示そうとしたのでした。自己の能力証明のために公的行事を私物化したヒロインとしては、『大図書館の羊飼い』のメインヒロインや『かにしの』のみやびーとかが有名ですね。
    • メインヒロインの内面吐露を聞いた主人公くんは、友達を助けるのに理由なんていらないだろ?と告げ、卒業式実行委員会に所属することになります。同様の理由で昼飯一緒に食ってたメンバーズが大集合!過去の式典を参照し、to doリストを作り、今できる単純作業とアイディアが必要な仕事に作業を分類し、優先順位をつけ、テキパキと進捗させていきます。意固地になっていたみなは自分の愚かさを知るのでした。
    • しかし、やっぱりみなは暴走気味。熱心にやる反面で自分の考えを理想化しがちであり、教頭からの助言や指導を批判ととらえてしまい素直に受け入れることができないのです。ホレ、ゼミで進捗状況を報告する時などで、教授のコメント・指導にやたらと言い訳したり反発したりする子って一人くらいいるでしょ?そんな感じ。主人公くんはそんなみなに対して相手の助言の趣旨を汲み取り、その内容を分かるように良く言って聞かせて納得させるのでした。
    • 意固地で頑ななみおが少しだけ成長した姿を見せたのが、体験版のラストシーン。当初、みなは主体的意志のないイヤイヤやる人材を拒絶していました。しかし、オーバーワークを禁じられたテニス部特待生を部活から遠ざけるために卒業式実行委員会に加えることになるのです。不本意なテニス部員はやたらとみなに食って掛かるのですが、この時にみなは、自分の趣旨を明確に説明し、理解を求めることに成功したのでした。こうしてメンバーがそろった卒業式実行委員会は、式典の準備を進めていく、といったところで体験版はお開きになります。複数シナリオライターの弊害のせいか、攻略キャラ5人中2人がほぼ登場せず空気状態に。むしろサブキャラの方が目立っていて人物像の掘り下げもなされており、攻略したくなってしまいますね。



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  • 一番かわいいのは理子
    • 作画の中でるちえ先生のキャラが違和感バリバリに個性を放っています。るちえ先生原画の攻略ヒロインは眼鏡教員であり、このキャラも可愛いのですが、体験版ではほとんど活躍の場がありません。新任教員で主人公くんのクラスの副担で隠れゲーマーであることくらいか?その一方でるちえ先生キャラデザの人物としてバスケ部の理子がいるのですが、このキャラが一番かわいいです。最初は親友が絡まれたと主人公くんに難癖をつけてくるところから始まりますが、自分の非を認めるとすぐに謝罪しますし、クラスでも一緒に飯食う仲間になります。友達パワーで卒業式実行委員会も手伝ってくれることになりますし。そんな理子ですが、どうやらバスケ部で問題を抱えているよう。もし強制的に部活に卒業式準備の人員割り振りが来たらまっ先に送られるのは自分であったと述べるシーンは重要な伏線となっている気がします。ぶっちゃけ、テニス部員を攻略ヒロインにするより理子を攻略させてくれればよかったのになーと言うのが体験版を終えての雑感です。るちえ先生のキャラデザに加えて、攻略ヒロインに相応しい可愛さと健気さと憂いさを持っていています。

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