満洲研究

【レポート】満洲国の観光について 終章

本論文のリサーチクエスチョンを確認しておく。まず対象としては満洲国の国策機関や観光協会などの事業者とともに、旅行記・紀行文の分析により観光者に重点を置いた。それを踏まえ、観光者の旅行行動の実態を通して、満洲国の諸都市が観光者の視線にどのよ…

【レポート】満洲国の観光について 第四章「観光から見る哈爾濱」

はじめに 第四章では観光者の視点で描かれた哈爾濱を見ていく。哈爾濱はロシア色の強い地域で、三国干渉の見返りとして東清鉄道の敷設権を獲得したことを契機に建設が始まった年である。ロシアの中国進出の拠点となり、一九三五年に北鉄が譲渡されるまで、ロ…

【レポート】満洲国の観光について 第三章 「観光から見る奉天」

はじめに 奉天は新京と異なり、満洲国成立を契機に新たな都市建設が進んだ都市ではない。清朝ゆかりの地であり、初代ヌルハチと第二代ホンタイジの居城であった奉天城を中心に城内と呼ばれる市街地を形成していた。また清朝崩壊後には軍閥の拠点が置かれ、奉…

【レポート】満洲国の観光について 第二章 「観光から見る新京」

はじめに 第二章からは各都市における観光者の旅行行動及び観光者の視点から見た都市の様相を見て行く。新京における観光の特徴として、観光事業者側は日本が建築した近代的建築群を観光資源とし、観光者に見せようとしていた。しかしながら観光者は、それら…

【レポート】満洲国の観光について 第一章「満洲国における観光国策の展開」

はじめに 満洲国が成立すると、満洲国への観光が活発化した。これまで観光斡旋は満鉄旅客課とジャパン・ツーリスト・ビューローが担っていたが、満洲国は統一した観光政策を展開するため、国務院総務庁弘報処に観光委員会を組織し、その実践機関として満洲観…

【レポート】満洲国の観光について 序章

第一節 問題の所在 観光というと、物見遊山などの娯楽的なイメージをされる場合が多い。さらに満洲国への観光というと、一九三〇年代から四〇年代という非常時の中で観光など出来たのかという疑問も生じる。しかしながら、観光を娯楽として捉えるのも歴史的…

哈爾濱観光について指摘された点

近代植民地史の演習において哈爾濱観光について報告してきたが、そこで助言された点などをメモしておく。 先行研究に対する関わり 観光事業者側が提示した「教科書的な」観光(観光バスルート)と実際の旅行者が訪問した「逸脱」について 観光案内・パンフレッ…

【草稿】満洲国の観光 第4章「観光から見る満洲国哈爾濱市」

1.序論 1-1.問題意識 1-2.先行研究 ①満洲旅行の機能を4つに類型化し、満洲観光の政治性を強調 ②観光バスによる「楽土」的都市空間と帝国のファンタジーの創出を挙げ、観光の権力性を指摘 ③観光地としての満洲表現を考察しツーリストの「まなざし」から観光の…

【史料】観光客・旅行者から見る満洲国新京市

満洲国新京市については既に論文の草稿を報告した。h30shimotsuki14.hatenablog.com その時の指導教授のコメントは、満洲国における現地住民の活動にクローズアップせよというものであった。このことは研究室訪問をした際に、研究計画書を見てもらった時から…

【史料】観光客・旅行者から見る満洲国哈爾濱市

旅行記・紀行文から満洲国の都市社会を分析するシリーズの哈爾濱編 この間、打ち込んだ史料を整理・体系化したもの。 哈爾濱市概観 植民地的都市の性質 哈爾濱の地形と建物 松花江 松花江 舟渡し 松花江の遡上 夜の松花江 松花江での淫行 埠頭区 キタイスカ…

【史料打ち込み】旅行記・紀行文のうち満洲国哈爾濱市に関する記述

※作業中 とりあえず、片っ端から打ち込み。 日付は打ち込んだ日付。これを整理体系化する。新京、奉天ときて、次の演習での報告は哈爾濱です。 11月末の演習で哈爾濱、12月の演習で論文全体の要旨の報告、1月の頭に提出という流れ。製本の事とかを考えると、…

【史料打ち込み】旅行記・紀行文のうち満洲国新京市に関する記述

作業中 とりあえず片っ端から打ち込み。日付は打ち込みをした日。あとで整理体系化する。11/15打ち込み完了 公園 吉林から新京に向かう気車内 新京銀座 売買しているのが非日本人 満人妓楼 長春浴地 未整理 関東軍司令部 新京商埠地 11/11 夜の新京情緒 新京…

【史料】観光客・旅行者から見る満洲国奉天市社会

作業中・史料づくり メモ 主査曰く、満洲研究では都市社会において日本人と中国人、露西亜人、その他民族は分断されており没交渉だったというイメージであるとのこと。そのため、鉄道や百貨店なども非日本人は日本人経営のものを利用しなかったという。また…

【草稿】満洲国の観光 第3章「観光から見る満洲国奉天市」

【学術的意義?】教授の御助言・指導を踏まえると・・・ 植民地都市の内実は明らかになっておらず、特に満人や露人社会と日本人は没交渉だったとされている。そのため日本人が満人や露人の区域にも観光しに行っていたことを明らかにすることは意義があるし、…

演習(近代植民地史) 質疑応答及び指摘された論点

副査の教授(近代植民地史)の演習での質疑応答まとめ。報告したのはこれ↓ h30shimotsuki14.hatenablog.com 【質問事項】 Q.先行研究の問題点を指摘し、自分の研究の新規性と独自性を示せ →A.満洲国建国後の満洲旅行について、旅行記・紀行文の内容そのものの…

【草稿】満洲国の観光 第1章「満洲国における観光政策の展開」

一応、文章化したもの。ネタだし的な草案。 はじめに 1.満洲国の観光国策 1-①.満洲観光委員会の行政組織上の位置づけ 1-②.満洲観光連盟 1-②-a.観光週間の実施 1-②-b.欧米知識人の招聘 1-③.観光協会の観光事業 1-③-a.奉天観光協会の各事業の特徴 1-③-.b新京観…

レポート指導で指摘された点メモ

レポート指導を受けて来たので、指摘された点を忘れないようにメモ。 各章の概要及びこれまでに近代史系の演習で報告した内容を説明した。 章立て(没になったもの) 「満洲国の観光事業 都市と地域資源を中心に」 序章 0-1.問題の所在 0-2.先行研究 0-3.リサ…

【史料】『満州観光連盟報』に見る満洲国の観光国策

満洲国の観光国策は、1937年に国務院総務庁情報処(のち弘報処)内に設置された観光委員会が統率した。観光委員会は鉄道総局旅客課内に事業機関として満洲観光連盟を設置し、各地の観光協会を加盟させた。観光委員会は満洲観光連盟を指導することによって満洲…

【整理・分類】満洲国哈爾濱における観光資源の機能的分類

パンフレットや観光案内で取り上げられている哈爾濱の地域資源を機能ごとに整理、分類。 地図 『哈爾浜案内圖』哈爾浜観光協会、1937 哈爾浜交通株式会社 編『ハルピン観光案内』哈爾浜交通企画課、康徳6(1939) 哈爾浜観光協会 [編]『哈爾浜ノ観光 附・サー…

【史料】観光案内・パンフレットにおける哈爾濱に関する記述

新京、奉天と史料作成が進んだので、最後は哈爾濱。日本が建設した新京、清朝の古都奉天、そしてロシアが建設した都市である哈爾濱。これら3都市が満洲国の観光事業においてどのような役割を果たしていたか、各都市の観光資源・地域資源にはどのような機能を…

【整理・分類】満洲国奉天における観光資源の機能的分類 (地図・観光バスのルート・観光資源の宣伝紹介)

以下のパンフレット・観光案内で紹介されている奉天における観光資源をその機能から分類。 h30shimotsuki14.hatenablog.com h30shimotsuki14.hatenablog.com 【目次】 地図 1.鵜木常次『最新大奉天市街案内圖』滿洲日日新聞専賣所、1939.4 1-1.最新大奉天市…

【史料】観光案内・パンフレットにおける奉天に関する記述

満洲事情案内所 編『まんしう事情』満洲事情案内所、昭11(1936)、89-90頁 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1268420/56 『鮮満支旅の栞』南満洲鉄道東京支社、昭和14(1939)、73-79頁 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1122541 名勝地 【視察の順序】(7…

『昭和18年版 満支旅行年鑑』における奉天・哈爾濱に関する都市・観光資源の記述

満洲国の観光に関し、新京(日本建設)・哈爾濱(ロシア建設)・奉天(清朝建設)を比較するため、新京だけでなく哈爾濱・奉天についても『満支旅行年鑑』をはじめとし、『満洲グラフ』や『旅行満洲』、その他案内記、パンフレットを調べることとする。今回はまず…

【レジュメ】満洲国における各観光事業団の実践事業の特徴

前回は『満支旅行年鑑』を調査し、満洲国における各観光事業団の取り組みを整理した。 今回はこれらの事業の特徴を分析する。 【満洲観光連盟の各事業の特徴】 満洲観光連盟の各事業を分析すると、まず初めに観光資源の創出が見て取れる。具体的には、観光写…

【史料】満洲国における各観光事業団の年度別事業(昭和13年度~昭和16年度)

満洲国の観光政策は、国務院総務庁弘報処内に設置された観光委員会が担い、満洲観光連盟を設けて各都市の観光協会を加盟させこれを統制した。ここでは昭和13年度~昭和16年度に行われた満洲観光連盟及び奉天・新京・哈爾濱各都市の年度別事業をまとめておく…

【メモ】昭和16年版満支旅行年鑑(1941年5月)における満支観光ルート(ルートごとの日程・費用概算・各都市の観光資源)

満支旅行年鑑では、日本からの満洲旅行について、推奨ルートとその日程、それにかかる費用、観るべき観光資源について記載されてる。観光による移動は交通インフラに依拠する。満支旅行年鑑から、(1)関釜連絡船を使って朝鮮を縦断し満洲に至る往路朝鮮経由、…

【メモ・残骸】満洲国の観光国策-昭和16年度における各観光協会事業

参考文献 『満支旅行年鑑【昭和18年】』東亜旅行社奉天支社、昭和17年12月25日発行、439-446頁より作成 趣旨 満洲国の観光政策として満洲観光委員会をトップに満洲観光連盟が各観光協会を統率したが、ここでは奉天、新京、哈爾濱の観光協会が昭和16年に行っ…

【メモ・残骸】昭和14年版『満支旅行年鑑』における満洲観光連盟と観光協会の各事業

参考文献 『昭和14年満支旅行年鑑』ジャパンツーリストビューロー満洲支部、1939年2月改訂再版より作成 趣旨 満洲国の観光国策は、国務院-総務庁-情報処-弘報委員会-観光委員会-観光連盟-観光協会というヒエラルキーのもとで展開された。ここでは『満支旅行…

【レジュメ】「新京に至るまでの日満交通路について~京図線・北鮮三港ルートを中心に~」

目次 1.問題意識と問題設定 1-1.満洲国の成立と鉄道路線 1-2.新京/長春に至る二つのルート 1-3.新京への第三のルート 1-4.問題設定 2.先行研究 2-1.研究の中心はあくまでも日本サイドが論点であり、日本海航路の限界性を指摘する。 2-2.先行研究の問題点 3.…

【表】全満各港累年上陸乗船人員

『満支旅行年鑑【昭和18年】』東亜旅行社奉天支社、1941年12月25日より作成【上陸客】 【乗船客】