MUSICUS!「花井三日月」シナリオの感想・レビュー

花井是清の死により提示された「音楽とは何か」という問いの答えを見つける話。
映画『ボヘミアンラプソディー』の様にバンドグループの栄枯盛衰が描かれる。
主にインディーズ編・メジャー編・硫酸で顔を焼かれる編で構成されている。
インディーズ編では如何に売れるかという主人公の心情を延々と見せられる。
メジャー編では売れたら売れたでボーカル以外必要の無いタレント業に苦悩する。
そしたらその問題は深く扱われず三日月が顔に硫酸を浴びてPTSDが発動する。
最後は原点回帰し音楽とは何かの答えを見つけトラウマを克服再起エンドとなる。

ロックバンド「Dr.Flower」の栄枯盛衰

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  • インディーズ編
    • 共通√で音楽に人生を賭けることとなった主人公くんは郊外に広い一軒家を借り、そこで金田と共に生活を始める。花井是清の妹の三日月も葬式後無気力状態になっていたが、主人公の呼びかけで参集する。是清のバンドであった「花鳥風月」のベーシスト香坂めぐる、及びそのトモダチ:ドラムの田崎京香を加えて、ロックバンド「Dr.Flower」が誕生するのであった。ここで主人公はどうすればバンドが経済的に成功するのかについて頭を悩ませることになる。曲を書いたり、ライブをしたり、物販したり、全国ツアーをしたりと八面六臂。当初曲が書けなかった主人公に助言が入り、冷蔵庫のあり合わせ料理のようにとにかくまずは作り上げるしかないという境地に至るシーンとか結構印象に残っている。とにかくここでは延々と音楽で食っていくための試行錯誤が強烈に提示されるのだ。一方で三日月は中島敦現象に陥る。中島敦現象とはゆずソフトの『天色アイルノーツ』でも描かれていたが、人はどうせ死ぬし、子孫を残して継承するといえども最終的に太陽系も死滅するため、最後には何も残らず滅びるという思想である。三日月は自分の中の持て余すどうしようもない感情を歌っていくのだ。途中、主人公くんと共にバンドの運営方針を決めていたドラムの田崎京香が抜けてしまい、その穴を新メンバーの女装男子髙橋風雅が埋めたり、金田が女を孕ませてしまったりする。そこそこ有名になる「Dr.Flower」だが経済的に自立できるほどではなく、バイトと掛け持ちしながら苦労する。途中、三日月だけソロデビューする話が来て、主人公くんもそれを勧めるが、三日月は主人公くんが必要としてくれるから歌うのだと、ソロデビューを蹴る。その後、ワンマンライブを成功させて初めて、バンド全体にメジャーデビューの話が来て、その話に乗る。

 
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  • メジャー編
    • 主人公くんたちのロックバンドをメジャーデビューさせたのは高校生作曲家:澤村倫であった。彼は三日月がヒキコモリ時代に負の感情をネット配信で垂れ流していた頃からのファンであり、三日月のネット配信により音楽に目覚め自殺せずに済んだと三日月を信奉していた。当初は三日月だけを引き抜きたかったのだが、それが出来ず、またワンマンライブで「Dr.Flower」の実力を知り、バンド全体に声をかけたのだとか。当初は澤村倫は、三日月以外どうでもいいという扱いをしていたが、主人公くんたちが真摯に取り組む姿を見て心を打たれる。主人公くんたちはこのチャンスをものにして一挙に名前を売り、とうとうブレイクすることに成功する。しかし売れたら売れたで問題も起こり、テレビの音楽番組などでは、ボーカルの三日月が歌いはするものの、他の楽器は録音で担当者は演奏せずにただいるだけ状態となっていることに不満が生じてくる。また音楽以外のタレントとしての仕事も増えて来る。主人公くんたちは、いつの間にかインディーズ時代の一軒家を引き払っており、それぞれがマンションで暮らすようになっていた。そこへ、売れるようになったものの、結局は誰とも繋がれないと嘆く、寂しさを抱えた三日月が主人公を求めにやってきて、フラグが成立する。肉体関係を結んだあと、三日月は覚醒するのだが、主人公くんと同棲していることを知ったファンにより、硫酸をぶっかけられるのであった。

 
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  • 硫酸で顔を焼かれる編
    • 顔の半分が焼けただれ視力も喪失した三日月であったが、傷が癒えた後、再びマイクを手に取る。しかしPTSDが発動し、三日月は歌えなくなってしまっていたのだ。結局、バンドは事実上の解散・活動休止。主人公くんは三日月を嫁にする決意をし、婚約。新しく家を買い、自然に囲まれて穏やかに時を過ごすことになる。そんな折、主人公をロックの道に引きずり込む直接のきっかけとなった八木原から久しぶりに連絡が入る。なんと活動休止していた八木原のバンド「STAR GENERATION」がもう一度ライブをするというのだ。主人公くんはこのライブの際、亡き花井是清の幻影に会い、音楽とは何か、ロックとは何かについての悟りを得る。「ロックンロールという言葉はね、きみが勇気を持って暗闇で顔を上げるとき、いつもそこにあるものの名前なのさ」と。そしてこのライブは三日月の心をも動かしており、PTSDを克服させトラウマを解消させる。三日月は「人間というものは生まれながらにして音楽」という境地に至り、ただの音の振動でも文脈でも物語でもないと主張。身分を隠したまま路上で突如歌い始め、人々の心を動かす。こうして復活を遂げた三日月は、主人公くんとの婚約を解消し、「Dr.Flower」が復活する。「Dr.Flower」は音楽の研究者花井を指すのではなく、花は音楽のメタファーであり、その研究者という意味だったんだ!と考える。そして武道館で復活ライブを行い、「Dr.Flower」の新たな活躍が始まる!といったところでハッピーエンドとなる。

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