雑録

【2020年5月】新作ノベルゲームは何を買ったらいいですか!?

2020年5月のトップは八宝備仁先生原画の美少女万華鏡シリーズ。短編の分割商法で体験版は出ないためここでは論じませんが、レベルの高い原画と深みのあるシナリオで人気を博しています。そのような美少女万華鏡シリーズの最新作と戦うのが、以下の作品群です。

【1】箱庭系思念体世界への挑戦がウケた『pieces』のFD、【2】懐古厨向け周年記念作品の『SHUFFL2』、【3】タイムリープを題材に高校編と社会人編を対比的に描いた『つきかな』のヒロインのうち中二病キャラに焦点を当てたFD、【4】リベンジポルノとデジタルタトゥーを用いて陰・陽2ヒロインとの複雑な三角関係を描く『petrichor』、【5】富裕層学園モノを出し続けるensembleの新作『Secret Agent』、【6】エウシュリーが送るいつものシミュレーションRPG『天冥のコンキスタ』という情勢になっています。

ここでは各作品の体験版をやった雑感を述べていきます。

【目次】

pieces/揺り籠のカナリア (Whirlpool) (2020-05-29)

製品版本編は世間的には高い評価を受けています。日常パートや個別√が退屈であるという側面はあるものの伏線を統合する思念体世界編がウケたようです。物語の舞台として提示されているセカイは作中で「天使の夢」と表現されるものであり、リトバスやABのように皆の思念でできています。その思念を一つにまとめているのがメインヒロインの結愛なのであり、それはある意味、結愛の犠牲によって成り立っているセカイといっても過言ではありませんでした。製品版本編では結愛の解放を果たしたというわけです。基本的にFDでは平和になった世界のその後を描くキャラゲーなのですが、そもそも本編の個別シナリオは面白みに欠けるものであるため、それだけで戦うのは非常に厳しいものがありました。まぁFDだから仕方がない?いえいえ、とある√が一手にシナリオ面のシリアス要素を引き受けていたのです。その√が小鳥遊紬アフター。製品版本編では、世界の犠牲になっていたのが結愛でしたが、その結愛に天使の夢を見させる役割を押し付ける形になったのが、この紬だったのです。それゆえ紬は引け目を感じており過去に縛られ、自分だけが能天気に主人公とイチャコラしていてよいのかという自責の念に囚われているのですね!体験版をやっていてこの紬√は面白く感じました。

SHUFFLE!エピソード2 〜神にも悪魔にも狙われている男〜 (Navel) (2020-05-29)

神族・魔族・人間の3種族のヒロイン達との交流を描く学園モノです。前作を知らなくても差し支えありませんが、完全に懐古厨向けの作品となっていて、ご新規さんをどれだけ取り込むことができるかが勝負となりそうです。過去忘却系鈍感難聴朴念仁ゼロ年代主人公とかって今でも通用するのだろうか?また基本的にNavelの作品はぶっ飛んだ性格のヒロインが強烈なインパクトを与える傾向にありますが、本作も皆ぶっ飛んでいます。特に私がおススメしたいのがガチ百合のきららさんであり、主人公の従姉にベタ惚れしており主人公のことはオプションかなんかだと思っています。主人公の従姉と接するときのきららさんのハイテンションっぷりやそれ以外の時の塩対応の落差の様子はじわじわくる面白さ。あからさまに主人公のこと等アウトオブ眼中だったきららさんがデレる様子は破壊力バツグンでもあります。また懐古厨向けでもありますが、『それちる』や『俺つば』の系譜も引いており、「胸が高鳴るぅー」をやってくれます。声優さんの演技も相まって、忘れられないキャラクター造形となっています。シャッフル2の中でもダントツのキャラです。一見の価値あり。

月の彼方で逢いましょう SweetSummerRainbow (tone work's) (2020-05-29)

中二病の少女に焦点を当てた作品。天才であるが故に周囲と噛み合わずぼっちとなり、さらに家族崩壊もあって孤独を抱えていたヒロイン、それが雨音さんでした。本編では雨音の孤独を癒して家族問題を解決することがテーマとなっていましたが、ファンディスクでは中二病と向き合うことになります。高3編では、主人公が高校生活の最後に何かを成し遂げなければならないという焦燥感に駆られ、見えない将来の不安に苛まれます。一方主人公と一緒にいられるならどんな進路でも構わないという雨音さんでしたが、逆にいつまでも中二病でいられるわけではないという現実が差し迫ってくるわけです。そんな二人は夏休みのサマースクールに参加しサンフランシスコで映画撮影のアクティビティを選択するのですが、ここでヲタクであることの肯定を得るのです。一方で社会人編は雨音さんの家族作りがテーマとなります。家族崩壊を経験し、家族の暖かさを知らない雨音さんは自分が赤ちゃんを育てて主人公との家庭を築くことができるのかと悩み、主人公と二人三脚していくわけですね。高3編で雨音さんは主人公の実家で花嫁修業をしていた経験もあり、社会人編で主人公のママンが助けに来てくれるところはグッとくる展開となっています。

Petrichor -ペトリコール- (MELLOW) (2020-05-29)

正・陽の幼馴染と負・陰のセフレとの三角関係を描いた作品。フツーにセフレの方が人気がありそう。主人公は主体性の無い人間で理想論を掲げる幼馴染の尻に敷かれています。しかし模試を受けに行った帰り道、主人公が夕立で濡れる少女に憐憫をかけたところから物語が動き出します。この少女は主人公と同じ中学であり、一時の感情に流され肉体関係を持つことになってしまうのです。セフレ。このセフレ少女は文脈から父親から性的暴行を受けそうになっていることが匂わされており、父親に処女を散らさるくらいならと思ったのか、主人公に処女をもらってくれと頼んでくるのです。その後セフレは突如姿を消し、主人公は幼馴染に尻を叩かれて大学に合格するのですが、そこで偶然セフレとも再会することになります。実は幼馴染とセフレは親友関係であり(幼馴染が一方的にそう思っているだけだが)、再び交流しようと持ち掛けます。これに対してセフレは表面上友好的に接していますが、幼馴染が明るく無邪気に真っ当なキャンパスライフを送っていることに対してどす黒い感情の片鱗を醸し出すのですね。ここの描写が結構好きです。それでもこのまま何事も無ければセフレとの関係は自然消滅に終わったのでしょう。しかしセフレの父親は娘が主人公と初体験をする様子を盗撮しており、それをリベンジポルノとしてネットに流していたのです。この動画はデジタルタトゥーとなって現実に襲い掛かり、主人公との関係が幼馴染にもバレることになります。そんな危うい三角関係がこの作品の醍醐味となっています。

Secret Agent 〜騎士学園の忍びなるもの〜 (ensemble) (2020-04-24)→(2020-05-29)

ensembleといえばお嬢様学園モノであり、ひたすらお嬢様学園モノを作成、販売し続けるという特化型のメーカーです。今回のお嬢様学園は独自の騎士制度がある高度最先端技術学園で、そこに潜入して汚職事件の裏を取ることを目指すというスパイエージェントモノです。最先端技術学校に封建的騎士制度という矛盾にツッコミどころも満載ですが、ensembleの作品をやっている人々にとってはいつもの世界観です。そして当然のようにヒロイン達が皆問題を抱えたワケアリであり、少女救済を目指していくことになりますが、主人公がニンジャであるという特質をどのように絡めていくかに注目が集まります。ワケアリ少女たちを主人公がニンジャらしく救済できれれば本作の魅力は高まるのではないでしょうか。

天冥のコンキスタ(エウシュリー)(2020-05-29)

ゲーム性がウリのエウシュリーの最新シミュレーションRPG。敵キャラを捕縛し快楽堕ちさせることで味方ユニットにできるところがウリとなっています。元睡魔の貴族であった主人公は何らかの事情で人間に落とされており、天使に復讐を果たすというのがコンセプトになっています。体験版では戦闘パートと準備パートをプレイできますが、戦闘システムは『姫狩』や『神採』などと同じようにマス目状のマップでキャラを動かしていくという将棋的ゲーです。令和の時代になってもマス目マップゲーかよというツッコミは避けられないでしょう。しかしながら戦闘で捕縛した敵キャラをコマすことができるのは単純作業ながら征服欲が満たされますし、主人公の敵である高慢で誇り高き天使たちを落としていく「くっころ」な展開は下卑た感情が刺激されます。体験版では物語の目的が明確には提示されませんし、エウシュリーが得意としている経営要素のあるシミュレーションパートも無いので、そこらへんがどうなるかで評価が分かれる作品となりそう。