環大西洋革命【1】 産業革命

1.【イギリスから始まる産業革命

(1)なぜイギリスで初めての産業革命が起こったか?~産業革命三条件

  • ①資本蓄積
    • 毛織物工業が盛ん。
    • 18世紀のグローバルな戦争で世界商業の覇権を獲得し、大西洋三角貿易で資本蓄積。
  • ②世界市場……18世紀のグローバルな戦争で第一次大英帝国を形成、アメリカ大陸・インドを市場化
  • ③労働力創出…農業革命で第二次囲い込みが展開され土地を失った人々が都市に流入し労働者となる。
    • ノーフォーク農法…18世紀前半にイギリス東部のノーフォークで開発された輪作農法。農地を四区画に分け、1年ごとに大麦・クローヴァー・小麦・カブの順で植え、4年1巡の四輪作制をとる。従来の三圃制で生まれてしまった休耕地を無くしたところが革新的。

(2)産業革命は綿織物から始まった!

  • ①輸入代替…インド産綿布(キャラコ)が大人気となり、イギリス東インド会社により大量輸入されたので、しばしば議会により規制された。これにより「輸入代替」として綿織物を国産化する動きが強化され技術革新が起こった。
  • ②織機と紡績機の発明
    • ☆織機とは綿糸から織物を作る機械のこと。紡績機は綿花から糸を紡ぐための機械。
    • a.ジョン=ケイによる飛び杼(梭)の発明(1733
    • →布を織る装置。幅広布の製造を容易化。糸不足を引き起こす。
    • b.紡績機の発明
      • ハーグリーヴズ のジェニー紡績機(多軸紡績機)…1764頃。糸の大量生産が可能になる
      • アークライトの水力紡績機…1768。水車を動力源とし、熟練不要・連続作業を可能
      • クロンプトンのミュール紡績機… 1779。ジェニー紡績機と水力紡績機の長所を取り入れた紡績機を発明(ミュールとはロバと馬の混血ラバの意)。細糸の製造を可能。インド産に劣らない高品質。
    • c.カートライトの力織機…1785。動力源に蒸気機関を利用した織機。速度は飛び杼の4倍。
  • ③綿花生産量の増大
    • アメリカのホイットニーが綿繰り機を発明(1793)。手作業に比べて50倍(のち300倍)早く作業が進み、アメリカ南部の綿花生産高を激増させた。

(3)大西洋三角貿易と綿織物業

2.鉄・石炭の産業革命と交通革命

(1)工業用燃料の転換

  • 木炭…木炭の火力は弱く膨大な量が必要となり、イギリスの森は次々と伐採され、歴史上「森林の枯渇」として知られる環境破壊が起こる。
  • コークス…石炭を燃料としては良質な鉄を生み出すことができなかったためにダービー父子により開発された石炭加工燃料。石炭を空気と遮断した状態で燃焼させて、硫黄・コールタールなど不純物を除くことで高温燃焼を可能とした。
    • →コークスによる鋼鉄製造で鉄の生産量が急増!鉄製機械が普及する。

(2)蒸気機関の発明

  • ニューコメン…排水用ポンプに蒸気機関を動力源として利用することに成功。
  • ワット…ニューコメンの蒸気機関を改良。往復運動を回転運動に転換させ広範な機械へ転用させた。

(3)交通革命

  • 鉄や石炭の運搬のために交通手段の改善が不可欠 → 有料道路・運河の整備
  • 蒸気機関車の歴史
    • 19世紀初め、トレヴィシックがレール上を走る蒸気機関車を開発。
    • 1814年 スティーヴンソンにより炭鉱貨車牽引のための蒸気機関車が作られる。
    • 1825年 ストックトン・ダーリントン間でスティーヴンソンが開発したロコモーション号が客車の牽引に成功、実用化が達成。
    • 1830年 マンチェスター・リヴァプール間でスティーヴンソンと息子ロバートによるロケット号の営業運転が開始。
  • 蒸気船…アメリカのフルトンが外輪式蒸気船クラーモント号建造に成功し、ハドソン川を航行。

(4)産業革命の波及

  • ベルギー:1830年七月革命に乗じてオランダから独立してスタート。世界で2番目の産業革命
  • 仏:1830年七月革命後に本格化。リヨンにおける絹織物産業から始まるが自作農が多くテンポ緩慢。
  • 独:1834年のドイツ関税同盟で国内市場が統一され開始。重化学工業が中心。
  • 米:1812~14年の米英戦争の間に北部で綿工業が発達。南北戦争後に完成。
  • 露:1861年農奴解放令で労働力創出、1864年の露仏同盟でフランス資本が導入されシベリア鉄道の建設。
  • 日:1890年代の日清戦争期に軽工業、1900年代の日露戦争期に重工業。

(5)地域間格差の拡大

  • 産業革命はアジア・アフリカ・ラテンアメリカをこれまで以上に原料や食料の供給地としたため地域間格差拡大。

3.資本主義の進展

(1)産業革命の歴史的意義とは何か?

  • ①生産技術の進歩…マニュファクチュア(工場制手工業)から工場制機械工業へ
  • ②産業資本主義社会の成立…小規模な独立生産者が競争によって二大階級(資本家・労働者)に分解

(2)賃金労働者

  • ①賃金労働者の誕生…大量生産により熟練技術工が失職。第二次囲い込みにより独立自営農民から転落した人々と共に賃金労働者となる。
  • ②賃金労働者の悲哀…長時間重労働・都市における貧民屈(スラム)の形成・女性や子どもの雇用。

(3)労働問題の発生

  • ①工場法…しばしば制定され労働時間の短縮、児童・女性の労働条件の改善がはかられる。
  • ②労使対立…労働者が団結して労働組合を結成 → 政府は団結禁止法(1799)で弾圧。
  • ラダイト運動…機械化で失業した職人たちが機械打ちこわし運動を展開。
  • ④工業化批判