国史概説012「昭和と平成史」(最終回)

  • 今回のテーマ
    • 戦後札幌経済史から昭和史と平成史を見る!

はじめに

0-1 戦後経済史の時期区分
  • 戦後改革・復興 1945年〜1955年
  • 高度成長期 1956年〜1973年
  • 低成長期 1974年〜1990年
    • (バブル経済 86年12月91年1月 51か月間) →バブルの名称は終わった後の呼称
  • 失われた20年 1991年〜2011年? ※今の話なので仮説的な雑感に近い。
0-2.「失われた20年」
  • 日本の経済の行き詰まり 衰退 
    • 人口減少、貿易収支、通貨、国債などの指標で衰退
    • 1988年〜2001年 一人当たり名目GDPはベスト5から落ちることはなかったが、2009年に世界19位、2015年には27位に転落した。
  • 代表的な研究としては深尾京司『「失われた20年」と日本経済』
0-3.課題
  • 昭和と平成の違い 
  • 戦後経済史として札幌を事例とする。

1.札幌における産業構造の変化

1-1.経済のソフト化、サービス化
  • 産業構造が転換し、サービス業が台頭。製造業は産業構造5位以内から落ちる。
1-2.建設業の優位
  • 札幌経済にはすごく特徴がある→建設業の優位
    • 1968年から製造業よりも建設業の方が一貫して上回っている。
    • 政令都市のなかで建設業が製造業を上回るのは札幌と福岡のみ。
  • 大都市というのは工場がある。工業地帯。製造業が高く出る。それが一般的な傾向なのだが・・・
    • 札幌と福岡は工業地帯といえるほどの工場がない。
    • 札幌と福岡は成長が著しい都市なので、ビル建設などの工事が盛ん。
  • 不動産業の多さ 岩中祥史『札幌学』
    • 賃貸物件を扱う不動産業者が多い。
    • 平成18年札幌市内の不動産業は8344。東京23区、大阪市横浜市に次いで全国で4番目。「大都市比較統計表」平成18年
    • 札幌では物件を共有してデータベースが同じ。札幌独特の慣習がある。
    • 北海道という移民地・移住地という特性があってしきたりなどができている?(研究課題)北海道の開発地としての特徴
  • 札幌圏における北海道開発事業費(直轄)の推移
    • 平工剛郎『戦後の北海道開発−体制の成立過程と地域課題への取り組む−』(北海道出版企画センター、2011年、234頁)
    • 札幌市だけではなく、国が行っている事業を見なければならない。
    • 僻地を開発するという意味もあるが、札幌の開発に使われている。
    • 北海道開発は札幌にも影響を与えている。
  • 新聞を史料として使うよさ?
    • その時の情報が出る 今から見ると実現していなかったり事実になっていないことがある。
    • 新聞を使うとその時の最新情報がでるので、変わっていく契機を読み取ることができる。
  • なぜ昔は鉄道は高架中心だったのか?
    • 川の下をくぐるのは大変だった!?
      • 東京の場合・・・東京の地下鉄で川の下をくぐっているのは?日比谷線隅田川を越える区間はくぐっていない→ミナミセンジュウ駅とキタセンジュウ駅の間は高架。東西線隅田川をくぐっている(67年9月)。
    • ゴムタイヤなのはなぜ? 
    • 坂を上りやすい。高架と地下の上がり下がり。登坂能力をつけようとした。
    • 市の交通局の見解は鉄だと音がでかいからと、騒音ないことのメリットをあげたが、当該教授は交通局の見解に疑問を抱いている。
1-3.工業立地
  • 明治42年、43年 ナエバ駅? 
    • 鉄道車両関係の工場 鉄鋼関係が中心 国鉄との関係で工業地となる。
  • 戦後改革・復興期
    • 札樽経済協議会(1951) 国鉄・国道・工業化を目指す
  • 高度経済成長期
    • 通産省企業局工業立地指導室と北海道庁が合同で行った工場最適地の結果、札幌市域における工場立地状況が判明
  • 低成長期
    • 札幌郊外へ工場移転 周辺市町村へ →環境問題がやかましく言われていた時代。食料品、出版・印刷など以外は郊外へ。

2.平成の経済史

2-1. 札幌の事例
  • 経済指標 平成に入るとガクッと落ちるか、伸びが止まる
  • モノづくりからサービス業へ
    • 札幌ではサービス業のなかでもソフトウェア関係が伸びている
    • 【仮説】平成5〜9の間、ウィンドウズ定着するときにNSDOSのソフトウェア会社が影響を受けた!?
  • サッポロ=バレー(シリコンバレーのもじり)
    • 札幌駅北口は家賃が安かったので、北大工学部と組んで情報関連サービス業が盛んになる。
    • クリプトンは初音ミクを売り出した会社。元北大職員であり、いつも仕事中眠そうで有名であったそうな。
2-2.「日本のモノづくり」の曲がり角
  • 日本の閉塞感の原因
    • 事例1.全国石炭業
      • 戦前戦時中がピークで戦後復興したけれども石油にとって代わられたというのが定説だが・・・→いわゆるエネルギー革命が原因とされていたが・・・
      • 今に至るまで石炭需要が伸び続けている!!戦争中以上に石炭を使っている。鉄鋼と火力発電。
      • 石炭を掘ること自体はやめてしまったが、使われ続けている。
      • つまり、日本の石炭採掘はコストがかかる!国際競争にまけた。
    • 事例2.綿糸の場合も・・・
      • 戦後に復興するが、・・・綿糸・化繊(レーヨン)・合繊(ナイロン)は、現在では衰退。
    • 事例3.織物生産の場合も同様。
      • 戦後に復興するが・・・現在は衰退
  • 戦後、綿製品輸入は増え続けている。我々は衣服については輸入品を使うしかない。
  • 石炭・繊維関係 日本で国産出来て輸出できていた分野で70年代80年代で産業は壊滅し、輸入に依存するようになった
  • 日本でモノ作りをやめてしまって輸入依存型になってしまった!
  • 失われた20年のその後
    • 2012年以降 景気指標でみると不景気ではないのだが・・・
    • 実感がない 労働分配率の低下 企業に入って来た収入のうち労働者に分け与える分は一貫して低下 米独よりも激しい
    • 世界のGDPや世界の株式時価総額があがっているのに資本家が搾取
    • 成果に比べ賃金は伸びず
    • 労働生産性が上がっているのに、実質賃金は上がらない 好景気になりつつあるのに豊かさが感じられない
  • その原因とは!?
    • 1.非正規雇用の問題 
      • 日本は正社員がほとんどだったのに、今現在すごい勢いで増えている 同じ仕事をしていても一緒の内容でも賃金格差 生産性は同じなのに 非正規社員を増やせば増やすほど実質賃金は下がる
    • 2.通貨供給量金利 
      • 水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』 日本の超低金利はおかしい 1619年のイタリアのジェノヴァ並み。
      • 金利を下げるのは通貨供給を増やしたいから。通貨供給量を増やせばインフレになるはずなのに、効果が現れない。資本主義のルールが通用しなくなっている。
  • 結局、この問題をどう見るかはわからない。かつてないことが起きているが、どうすればいいかわからない。対策は色々と出ているけれども。
  • かつての状況とは違う。資本主義が変わっている。
  • 水野さんは今の安倍政権にはすごく批判的。
    • 金利を下げ続けているだけじゃんと。インフレになっていないことを見て分析する必要がある。
    • 製造業の衰退の根本的な問題を無視している。日本でモノ作りをやめてしまっていることに対して何ら対策がない
  • 考慮点
    • ※最終組み立ては中国だけれども部品供給は日本という事例や、日本の技術者が中国で働くというケースは考慮する必要があり)。
    • 世界のGDP上がっているけども日本は下がっている問題も統計上の数値に過ぎない説。実際の生活はどうなのかを考慮する必要があり。

【まとめ】

  • 高度成長から低成長(バブル含む)と推移した昭和・戦後の経済に対して、平成の経済史は「失われた20年」に象徴される。
  • 成長著しい札幌においても、高度成長→低成長→「失われた20年」へと主要指標は停滞または減少を示した。
  • 札幌の建設業優位、サービス産業優位の産業構造は、おそらく北海道総合開発の影響が大きいものと思われる。
  • 昭和から平成にかけて「日本のモノづくり」は曲がり角を迎え、一部の産業は衰退を遂げ、輸入依存が深まった。
  • 「失われた20年」後の経済の姿は、これまでの資本主義発展の理論では説明できない。