近現代東アジア史【2】近現代朝鮮半島

1.李氏朝鮮の植民地化

(1)大院君時代(1863~73)

  • 大院君は当時の保守派の首領。第25代皇帝哲宗の死後、第二子の高宗を王位に就け、みずから摂政となり果断な政治改革と対外政策を強行した。

(2)閔氏時代(1873~95)

  • ①閔氏のクーデタ(1873)
    • 閔氏が高宗の親政を名目に大院君を退位させ政権を握る。
  • ②朝鮮の開国
  • ③壬午軍乱(1882)
    • 大院君(親清・鎖国)が閔氏一族(親日・開国)の一掃を企てクーデタを起こすが清に捕縛される。これにより閔氏が親日派から親清派に転換したため開国派は事大党(親清)と独立党(親日)に分裂。
  • ④甲申政変(1884)
    • 独立党の金玉均が事大党の閔氏政権を打倒しようとクーデタ。清国の進撃で鎮圧され、派遣された袁世凱が権限を振るう
  • 甲午改革(1894~95)
    • 甲午農民戦争に乗じ日本軍が出兵し閔氏政権を打倒。大院君を擁立して政権樹立。身分制や科挙制度の廃止、税制の近代化などの政治改革を進める。清朝の年号を使うのやめ、独自の暦を採用するなど清朝からの自立を目指す。
  • ⑥親露派閔氏政権(1895年7月)
    • 三国干渉により日本の威信が低下し甲午改革は挫折する。閔氏はロシアを頼って日本を追い出そうとする。
  • 閔妃殺害事件(1895年10月)
    • 三浦梧楼駐朝日本公使が三国干渉以後に親露政権をとる閔妃殺害し、大院君の親日内閣を結成。

(3)高宗時代(1895~1907)

  • ①露館播遷
    • 高宗がロシア公使館に避難して政務を行うようになり、ロシアの影響力が強まる。
  • ②独立協会(1896~98)
    • ロシアの影響力増大に反対。「独立新聞」や啓蒙活動集会を通じて議会開設運動を展開。中枢院官制などの国政改革を要求したが、1898年に高宗が勅令を出して弾圧し強制解散させられた(一橋大学2013大問Ⅲ)。
  • ③高宗の改革(1897)
    • 高宗、国号を大韓帝国と改称。「光武改革」着手
      • 中国の冊封体制から脱却し、自主独立国であることを示すために改称。高宗は自ら皇帝に即位した。
  • 日露戦争
    • 日韓議定書(1904)…日露戦争勃発直後、日本軍が韓国全土を保護占領。
    • 第一次日韓協約(1904) …韓国の外交と財政に、日本政府派遣の顧問を置く
    • 第二次日韓協約(1905) …ポーツマス条約で日本の韓国に対する指導監督権が国際的に認められたので、ソウルに韓国統監府設置(初代統監:伊藤博文)。
  • ⑤ハーグ密使事件…高宗皇帝がオランダのハーグの第二回万国平和会議に密使を派遣!高宗は日本に退位させられる。

(4)純宗時代(1907~1910)

  • ①高宗を退位させ第三次日韓協約(1907)…韓国内政をも統監府の監督に置き、韓国軍を解散させる。
  • ②義兵闘争激化!…日本の干渉と圧迫に対抗して闘争。
  • ③愛国啓蒙運動…教育と実業の振興、言論・出版などを通じて韓国の富強と国権の回復を目指す。義兵闘争には批判的。
  • 伊藤博文暗殺事件(1909)…義兵の安重根満州ハルビン駅で初代韓国統監:伊藤博文を暗殺。
  • 韓国併合(1910)…ソウルに朝鮮総督府を置き、武断政治を展開(初代総督:寺内正毅)
    • a.憲兵・警察制度を整備し、韓国民衆の抵抗を抑圧。
    • b.土地調査事業を実施して、所有権の明確でない土地を没収し、日本人に安く払い下げる。
      • 【経済史的意義】土地を喪失した多くの朝鮮人農民が日本に流入して、日本資本主義を支える低賃金労働者となる。

2.植民地朝鮮

  • ①三・一独立運動(1919年3月)
  • ②日本の植民地政策の転換
  • 武断政治憲兵や軍隊による韓国支配。言論、出版、集会などの自由を奪い、さらには日本語の強制、土地調査を通じての土地の接収を行った。
  • 文化政治…三・一運動後の日本の朝鮮統治。懐柔策をとって同化政策に転換。結果として日本語や日本の慣習を強制する結果となり、朝鮮文化の抹殺が行われた。
  • ③1919年4月 大韓民国臨時政府結成(in 上海)
    • 三・一運動を継承する為、上海で樹立宣言された政府。列強への依存度が高く、まもなく有名無実となった。初代大統領は李承晩。

3.戦後の朝鮮半島

3-1.朝鮮半島南北分立

  • 1943年
    • カイロ会談 → 戦後の朝鮮の独立が承認される。
  • 1945年 
    • 8月…米ソによる南北分割占領(北緯38度線)
    • 9月…建国準備委員会が李承晩を主席とし朝鮮人民共和国成立→米国占領軍に圧迫され解散

3-2.朝鮮戦争

  • ②国連軍の派遣
    • 国連安保理北朝鮮の行動を侵略行為と認め、米軍主体の国連軍を派遣。
      • ソ連は中国代表権問題で理事会をボイコットしており拒否権を行使できなかった。
    • 1950年9月仁川に国連軍上陸。中国国境の鴨緑江まで進出し武力による朝鮮半島統一を目論む。
  • ③中国人民義勇軍の派兵
    • 1950年10月、中国は自国の安全保障の危機とし「抗米援朝」の人民義勇軍を派兵。国連軍を押し返す。
  • ④休戦協定までのみちのり
    • a)マッカーサーの解任…1951年4月。戦局打開のため、核兵器の使用と中国本土攻撃にこだわったため、トルーマン大統領により国連軍最高司令官を解任された。
    • b)米ソ指導者の交代…1952年11月朝鮮戦争の早期解決を公約にアイゼンハウアーがアメリカ大統領に当選し、1953年3月にはスターリンが死去しフルシチョフが跡を継いだ。米ソ指導者の交代により戦争に転機がもたらされる。
    • c)朝鮮休戦協定…1953年7月成立。北緯38度線上にある板門店で会談が行われた。南北朝鮮の分断は北緯38度線で固定化。南北朝鮮は東西対立の最前線として常に臨戦態勢を強いられ、双方で独裁的な体制が作られる原因となる。

3-3.北朝鮮情勢

  • 金日成政権(1948~1994)
    • 主体(チュチェ)思想によって、政治における自立、経済における自主、国防における自衛を唱え、党と人民が一体化する体制を強化。
    • 経済困難に直面し、韓ソ国境樹立、ソ連崩壊、中韓国交樹立という国際状況の中で孤立化。
      • →日本との国交交渉の開始(1990年9月)、北東部に自由経済貿易地帯を設置して対外経済開放(91年)、韓国と南北朝鮮国連同時加盟(91年)
  • 金正日政権(1997~2011)
    • 南北朝鮮首脳会談(2000)…韓国の金大中が朝鮮に対する「太陽政策」を展開し、南北首脳会談が平壌で実現した。南北共同宣言が出され、南北統一・人道問題・経済協力などの前進がうたわれた。
    • 日朝首脳会談(2002・2004)…小泉-金正日首脳会談。北朝鮮は日本人拉致を公式に認め、一部の被害者の帰国が実現した。

3-4.韓国情勢

(1)開発独裁
  • ①李承晩政権(1948~60)
    • 反共イデオロギーと国民の反日意識を利用して独裁体制を築く。
    • アメリカの経済、軍事援助により成り立っていたが、農業と零細企業を圧迫し政府と結びついた財閥系企業だけが優遇される。50年代末にアメリカの援助が削減されて不況となる。
    • 60年 四月革命勃発。 民主化・統一・経済的自由が求められ李承晩は失脚。
  • 大韓民国軍部クーデタ(1961)
    • 朴正煕を中心とする軍部若手将校がクーデタを起こし政権掌握。63年に民政に移行。
  • ③朴正煕政権(1963~79)
    • 国内…強権体制を維持。
    • 対外
      • 対米依存関係;ヴェトナム戦争に派兵
      • 対日関係改善;日韓基本条約(1965)…日本と韓国の国交正常化のための条約。1910年の韓国併合に関する条約を無効とし、韓国政府を朝鮮半島唯一の政権と認定。日本から無償3億ドル、有償2億ドルの経済援助を行うことも決められた。
    • 政権末期…大量に流入する日本資本で経済発展を図るが、政権の腐敗、貧富の差の拡大が進行し、79年に暗殺された。
(2)民主化への道
  • ①朴正煕暗殺(1979)
    • 韓国で反政府デモが朴正煕独裁を揺るがす中、中央情報部長が朴正煕を射殺、政権奪取を企てたが逮捕された。
  • 全斗煥政権(1980~88)
    • 光州事件…朴正煕暗殺後、全斗煥が実権を掌握し80年5月に非常戒厳令を出すと、民主化運動を起こされたが武力でねじ伏せた。
    • 84年に訪日して日韓関係の強化を図り、86年には国際経済環境が好転して韓国経済は順調に発展した。だが、同時に不正蓄財を暴露され88年に政権を追われた。
  • 盧泰愚政権(1988~93)
    • 1987年6月29日:民主化宣言→12月の選挙で大統領当選。88年に就任。韓国初の平和的政権交代
    • 1988 ソウルオリンピック
    • 1990 韓ソ国交樹立…ソウルオリンピックを契機に北方外交を展開しゴルバチョフと会談。国交を樹立。
    • 1991 南北朝鮮国連同時加盟…朝鮮は単位議席での加盟を主張していたが、金日成が国際的孤立の中で政策を転換し実現した。
    • 1992 中韓国交樹立…北京で共同声明に調印し国交を樹立した。この結果、韓国は台湾と断交。
  • ④金泳三政権(1993~98)
    • 32年ぶりの文民政権。
    • 権力者の不正腐敗を摘発して国民の高い支持を獲得し、経済の活性化に取り組む。
    • 光州事件に絡んで、全斗煥盧泰愚の前大統領を処罰した。
  • 金大中政権(1998~2003)
    • 太陽政策…対北朝鮮友好政策。経済援助を中心とする柔軟な対応を行い、朝鮮問題の平和的な解決を図ろうとするもの。この政策の結果、2000年6月に南北両朝鮮首脳会談が実現した。