ヨーロッパ文化史 前近代 

とりあえず前近代まで。この後、近現代も足します。

1.ギリシア文化

(1)ギリシア人の世界観

  • ギリシア神話(オリュンポス12神)
    • ギリシア神話は神々が人間的性格を持っていることが特徴。人間としての生き方、世界の形成は当初、神話によって説明される。
  • ②神話によって世界を解釈した者たち
    • a.ホメロス
      • イリアス』…トロイア戦争の英雄の活躍を描いた叙事詩。ギリシアの英雄アキレウスやトロイア王子ヘクトールの活躍。
      • オデュッセイア』…トロイア戦争を勝利に導いた智将オデュッセウスの戦争後の冒険と帰国後の妻との再会を描く。
    • b.ヘシオドス
      • 『神統記』…ギリシアの神々の系譜を語った叙事詩。天地創生からゼウスが勝利者となるまでを描く。
      • 『労働と日々』…実際の農作業の様子を描き、勤労の大切さを描いた教訓詩。
  • ③民会の発展と知的探究心の養成☆
    • 神話による世界解釈を脱却、人間の理性(ロゴス)により真理を見出そうとする。
  • ④自然哲学の成立
    • a.紀元前6世紀、ギリシア植民地イオニアのミレトスで最初の哲学である自然哲学が誕生。
    • b.自然哲学の研究対象は、万物の根源(アルケー)は何か、ということ。→宇宙(神々、人間)の生成や自然現象を、神話ではなく合理的・学問的に考察しようとした。
    • c.代表的哲学者
      • タレス…最初の哲学者。「万物の根源は水」とし、神話的世界観を脱却。
      • ヘラクレイトス…「火」。「万物は火の交換物」であるとし、「  万物は流転する  」と説く。
      • ピタゴラス…「数」。厳格な規律により音楽・数学・体操により魂のカタルシス(浄化)。
      • デモクリトス…「原子」(アトム)。原子が運動し、分離結合することで自然を説明する原子論

(2)その他の文芸

  • サッフォー…レスボス島出身の女流詩人。恋愛詩。学園を造り若い女性を教育。
  • アイスキュロス三大悲劇詩人。『アガメムノン』…トロイア戦争の英雄アガメムノンが帰国後妻に殺される話。
  • ソフォクレス三大悲劇詩人。『オイディプス』…父を殺して母を妻としたため目を潰して放浪。
  • エウリピデス三大悲劇詩人。ソフィストの影響を受け、新形式の詩を創作。代表作『メデイア』など。
  • アリストファネス…喜劇作家。ペロポネソス戦争期に活躍。風刺や批判で有名。『女の平和』
  • ヘロドトス…歴史の父。ペルシア戦争を主題とし物語的な歴史記述で『歴史』を記す。
  • トゥキュディデス…ペロポネソス戦争を厳密な史料批判に基づき記述。科学的な歴史記述の典型となる。
  • フェイディアス…ペリクレスからデロス同盟の資金を流用してもらってパルテノン神殿を建築。「アテナ女神像」など。
  • ヒッポクラテス…「西洋医学の祖」。呪術的ではない科学的な治療を行う。

(3)ソフィストアテネ哲学

  • ①真理の探究<弁論術での勝利
    • ペルシャ戦争→無産市民の活躍→民主政治の成立→政治的知識・弁論術の重要視
    • 紀元前5世紀頃、学問や思想の対象が自然(ピュシス)から人為(ノモス)への転換。真理を追究するよりも弁論に勝つことに専念する風潮が高まる。
  • ソフィスト(知者)と称される職業教師の登場
    • a.プロタゴラス
      • 人間は万物の尺度である…諸国を旅したので、それぞれの国にはそれぞれの法があり、それぞれの正しさがあることを知っていた。真理の基準は個々の人間による(主観主義)。絶対的、客観的な真実は存在しない(相対主義)。
    • b.ゴルギアス
      • 非存在について…絶対的な真理の否定。真理は人により異なる相対的なものであり、絶対的な真理は存在しない。
      • 知識否定論…「人間の知るものは一切の偽りである」
  • アリストテレス
    • 人間社会から自然現象まであらゆる事物に関心を抱き、諸学問を秩序付け集大成した。
    • プラトンの立場では事物の本質(イデア)は個物を超越しているが、アリストレスの立場では事物の本質は個物に内在している。
    • アリストテレスイデア論を批判し形相(エイドス)と質料(ヒュレー)で、真の実在を証明しようとする。
      • 形相…事物に内在し、それが「何であるか」を規定する本質。
      • 質料…素材という意味。個物が何であるかを規定するエイドスと結合して個物を作る。

2.ヘレニズム文化

  • ②コスモポリタニズムと個人主義の二面性
    • ポリスの生活では公的生活と私的生活が一致していたが、ポリスの崩壊により広大な世界国家の一員として生きるようになる。そのため、人間はすべて世界市民として同胞であり平等であるというコスモポリタニズムと、ポリスという拠り所を失ったことにより幸福を個人的・内面的な自由と平安に求める個人主義の二面性が生まれた。
  • ③哲学
    • a.ゼノンのストア学派
    • 禁欲主義…欲望、恐怖、怒りなどの情念(パトス)に動かされることのない自由な境地(アパテイア)を追求。⇒「自然に従って生きよ」
    • b.エピクロスエピクロス学派
      • 快楽主義…肉体的な快楽ではなく、魂の平安(アタラクシア)を追求⇒政治・社会から距離を置く「隠れて生きよ」
  • ④ムセイオンの学者たち
    • アルキメデス…浮力の原理、てこの原理、揚水ねじ、円周率の計算など数学・物理の発展に貢献。ポエニ戦争では大型投石機で軍船を轟沈させ、大反射鏡でローマ兵を焼殺した。
    • エウクレイデス…平面幾何学を大成。『幾何学原本』は20世紀まで初等幾何学の標準的教本となる。
    • アリスタルコス…地動説を唱える。地球の公転と自転を主張。
    • エラトステネス…地球の周の長さを正確に計測。
  • ⑤芸術
    • 「ミロのヴィーナス」…美と愛の女神アフロディテの大理石像。人体の理想のプロポーションを表現。
    • 「ラオコーン」…アポロンに仕える神官ラオコーンが女神アテナの怒りをかってヘビに殺される断末魔を表現。

3.古代ローマ文化

(1)土木・建築  ☆ローマの文化といえば何と言っても実用的な文化!!

  • アッピア街道
    • ローマ最古の軍道。ローマ・カプア間に建設され、後に南イタリアまで延長され全長540㎞。石で美しく舗装されていた。
  • 凱旋門
  • ③コロッセウム
  • ④水道橋
    • ローマは都市に供給する水の管理を重要視した。南仏のガール水道橋が有名。
  • ⑤浴場
    • 冷温の浴室を中心とし、図書館・運動場を備える娯楽施設。カラカラ帝の浴場が有名。
  • ⑥神殿

(2)法律

(3) 弁論 →元老院・民会・法廷での弁論の必要性により発達

  • キケロ…ローマ最大の雄弁家。共和派の立場からカエサルを批判。文章でも有名でラテン散文の範。

(4) ストア派哲学者

(5) 三大ラテン詩人

(6) 歴史

(7) 自然科学

  • ①ストラボン…ギリシア人。各地を旅行し、『地理誌』をまとめた。イベリア半島からインドまでの地理・歴史をギリシア語で書いた。
  • プリニウス…『博物誌』で天文・地理・動植物などの莫大な項目を記す。プリニウスはウェスウィウス(ヴェスヴィオス)火山の噴火の際、救助活動中に殉職したことでも有名。
    • ポンペイ…ウェスウィウス火山の噴火で埋没した町。火山灰により良好な保存状態で発掘されたことで有名
  • プトレマイオス…『アルマゲスト』(天文学大全)で天動説を唱える。宇宙の中心に地球があり、太陽や惑星はその周りを回っているという考え方はカトリック教会の公式の宇宙観となった。

(8)暦法

4. キリスト教の成立

(1)イエスの登場

  • ③イエスによるユダヤ教の律法批判
    • 具体例…「姦淫するな」という律法をただ形式的に守るだけではダメで、イエスは「みだらな思いで他人の妻を見る者は誰でも、既に心の中でその女を犯したのである」と説く。
    • エスの思想(ユダヤ教選民思想批判)
      • アガペー…神が与える無差別・無条件の愛。
      • 隣人愛…自分を愛するように全ての人を愛しなさいという教え。
  • ④イエスの処刑
    • 民衆の支持を集めるイエスに危機感を抱いたユダヤ人支配層がイエスをローマの反逆者として告発!
    • 30年頃、総督ピラトゥスにより十字架刑に処せられる。

(2)原始キリスト教成立

  • ①イエスの復活?…イエスは死の3日後、復活し救世主となり、十字架の死によって人類の罪をつぐなったという信仰が生まれる。
  • 使徒による伝道
    • 使徒とは? → イエスが福音を伝えるために選んだ直弟子。ペテロを筆頭に12人いる。その中のユダがイエスを裏切り祭司長側に引き渡した。のちパウロ使徒に加えられる。
    • ペテロ…十二使徒筆頭。イエス処刑の際には弟子であることを否定して逃げた。しかしイエスがメシアであることを最初に告白して教会の基をすえ、イエス復活の最初の証人となった。ネロの迫害により殉教。カトリック教会はペテロを第1代の司教とし、恐慌はペテロの後継者としている。
    • パウロ…地中海沿岸を大旅行して、古代ギリシア・ローマ世界にキリスト教を伝道し、キリスト教世界宗教へと発展した礎を築いた。もともとはパリサイ派であり、キリスト教徒を弾圧しに行く途中不思議な光に打たれて回心したという。
  • 新約聖書
    • 新約とは!?
      • エスによってもたらされた神と人との新しい契約。キリストの十字架による贖罪により、神の愛を信じる者は全て罪から救われるという約束。
    • 構成
      • 福音書(マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネ)、使徒行伝、使徒の書簡、黙示録の27書からなる。当時の共通語コイネーで書かれる。

(3)ユダヤ人のディアスポラ

(4)迫害と普及

  • ローマ帝国の宗教政策…多神教をとり宗教には寛容! → ではなぜキリスト教は迫害されたの?
  • ②迫害された理由 反社会的集団!
    • 独自の生活態度から奇異な集団とみなされる。
    • 一神教の立場から国家祭祀や皇帝礼拝を拒む。
  • ③普及していった理由
    • 帝政中期以降は社会不安が高まる! 政治的混乱や貧富の差の拡大など → 弱者救済:老人・未亡人・孤児などを助け、貧者に食事を与えて相互扶助を行う。

(5)帝国統治とキリスト教

  • ③テオドシウス帝

(6)キリスト教諸派

(7)教父哲学

  • ①教父…キリスト教を異端や異教から守るために論争や弁明をし、正統な教義の確立に努めた指導者。キリスト教の真理を弁護するために、教父哲学を生み出した。
  • アウグスティヌス…若い頃は女性に熱中し欲望のまま生活を送る。マニ教に夢中になるが32歳の時に聖書を読んで回心。異端との論争の中で多くの著作を著し、キリスト教の教義の確立に努めた。

5.中世ヨーロッパの文化

(1)キリスト教文化

  • 絶対的な教会の権威は、学問・芸術から日常生活のすべてにわたり影響を及ぼす。
  • 神学・哲学・法学・医学などの学問は聖書や古典の注釈が中心

(2)12世紀ルネサンス

イスラーム勢力の文化の影響を受けてヨーロッパでも多方面において文化が復興!イベリア半島のトレドやシチリア島パレルモではアラビア語に翻訳されていたギリシア語文献のラテン語訳が盛んになる。各地に大学が出現。

  • ①スコラ哲学
  • ②普遍論争
    • 概要:「普遍」は現実に実態として存在するのか、それとも思考のなかにしか存在しえないのかをめぐって対立した論争。論争のなかで学問と信仰の分離が進んだ。
    • 実在論:普遍的なものを実在と見なす。神は事物に先立って存在するとして、信仰の優越を主張した。アンセルムスが代表的論者。
    • 唯名論:普遍的なものは実在せず、個物につけられた名前に過ぎないとする。無批判な信仰を退け理性を重んじる。アベラールが代表的。
    • ウィリアム=オブ=オッカム(英)…反教皇派の立場から唯名論を唱えて理性と信仰を明確に分離。近代合理論への道を開いた。
    • ロジャー=ベーコン(英)…イスラーム科学への影響から実権と観察を重視する経験論への思潮を築いた。「実験科学」を初めて使用。
    • トマス=アクィナス…パリ大学教授。信仰と理性を調和させてスコラ学を大成した(『神学大全』)

(3)中世ヨーロッパ文学→騎士道文学:各地を遍歴する吟遊詩人による俗語の物語。

(4)教会建築

  • ビザンツ様式<4世紀以降> 円蓋とモザイク装飾
    • 聖ソフィア聖堂(コンスタンティノープル)、聖ヴィターレ聖堂(ラヴェンナ)
  • ②ロマネスク様式<11~12世紀> 半円アーチと厚い壁・小さな窓
    • ピサ大聖堂、ヴォルムス大聖堂
  • ゴシック様式<12世紀以降> 尖塔アーチ・広い窓・ステンドグラス