倫理 日本思想【6】幕末維新期の思想

1.西洋文明との接触

(1)西洋文明との接触

  • 19世紀~:西洋との本格的な交流の開始  →明治以降

(2)蘭学の摂取とその影響

  • 背景:幕府の対外政策→西洋との接触の制限→オランダ商館の影響                
  • 蘭学…江戸時代、長崎のオランダ商館を窓口として伝えられる西洋の学問
  • 渡辺崋山田原藩(愛知)の家老で産業教育を育成。人々の困窮を救おうと努力し、高野長英と尚歯会を結成。外国船打ち払いの無謀さを説く『慎機論』を著したため、蛮社の獄で弾圧され自殺。

(3)洋学者の思想

  • 洋学…蘭学をふくめた西洋の文化・科学技術全般にかんする知識
  • 日本の近代化の原動力
    • 横井小楠…ペリー来航(1853)頃、攘夷論から開国論へ転向。西洋文明の明暗両面を洞察し、新しい日本を模索した。
    • 佐久間象山…東洋の道徳(和魂)+西洋の科学技術(洋才) 「東洋の道徳・西洋の芸術、精粗もらさず、表裏兼該し」
  • アヘン戦争による中国敗北の衝撃→西洋の科学技術の積極的な取り入れ。
    • 吉田松陰松下村塾
      • → 一君万民論…藩ごとに分裂した幕藩体制の枠をこえて、天下万民の君主である天皇にすべての民衆が結集し、「誠」をもって「忠」を尽くすという主張

2.啓蒙思想と民権論

(1)西洋文明の衝撃と日本

  • 明治維新→近代国家体制整備による日本の独立→富国強兵・文明開化

(2)学問のすゝめ【福沢諭吉

  • ①封建的身分秩序に対する批判…下級武士のみじめさ 封建的特権に対する怨恨→「門閥制度は親の敵でござる」
  • ②天賦人権論…人間は生まれながらに平等の権利を持つという思想。
    • →「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」
    • →では何故身分差が生じるの?→学問! しなければ低賃金肉体労働者
  • 独立自尊の精神…人間の尊厳の自覚。他人や政府に依存せず、みずから判断し行動する、自主独立の生活を営もうとすること。実学の学問に励むと身につく。
    • 西洋から学ぶのは「有形において数理学、無形において独立心」
    • 「一身独立して一国独立す」
  • ④晩年の思想
    • 官民調和・富国強兵論…国家・政府の権力と民衆の権利の調和を図ろうとする考え。日本の独立を第一とした福沢は自由民権運動を「駄民権」と呼んで、政府の富国強兵策を支持した。
    • 脱亜論…近代的な改革の進まないアジア諸国との連帯から抜け出し、西欧諸国の仲間入りをする脱亜入欧を唱えた。

(3)東洋のルソー【中江兆民

  • ②民主国家の成立は「進化の理」
    • 民権:恩賜的民権を恢復的民権に育てろ!
      • 恩賜的民権…為政者が上から人民に恵む民権                        
      • 恢復的民権…人民自らの手で獲得した民権
  • ③日本に哲学なし
    • わが日本、古より今に至るまで哲学なし。そもそも国に哲学がないのは、あたかも床の間に掛物がないようなものであり、その国の品位が劣ることは免れない……哲学無き国民は何事をしても深い意味はなく、浅薄さを免れない。自分自身で造った哲学がなく、政治には主義がなく、政党の争いもその場だけで継続性がない、その原因は実にここにあるのだ。

Cf.民権思想におけるフランス系・イギリス系

  • フランス系…急進的。中江兆民植木枝盛など
    • 植木枝盛主権在民・天賦人権・抵抗権を主張。「そもそも国とは人民の集まるところのものにして、決して政府によってできたものでもなく、君によって立ったものでもない、国はまったく人民によってできたものじゃ」
  • イギリス系…穏健的。明六社など。
    • 国家の独立・繁栄が重視。官民調和。