アインシュタインより愛を込めて サブヒロインズシナリオの感想・レビュー

サブヒロインの個別シナリオは、全体における章立ての一部という構造。
PROLOGUEが終了するとMAINが出現するが、そこで個別√に入ることになる。
サブヒロインの個別シナリオはどれを選んでも「CHAPTER2」という扱いである。
佳純√はヒロインに生存を望まれた主人公が手術を受けるも幼児退行エンド。
唯々菜√はヒロインを救うために自己を犠牲にした主人公と逃避行エンド。
忍√は妊娠直後に何も言わず分かれバルドスカイした後に再会できたよエンド。
サブヒロイン3人攻略すると「OPEN THE DOOR」でロミ√に入ることが出来る。

【目次】

西野佳純ルート

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  • ボクサー系ヒロインだがボクシングを描く事が主題ではない
    • 西野佳純はボクサーヒロイン。実力者でありながら地区予選止まりの佳純を勝利に導くことが前半の課題となります。発売日前から新島夕先生にボクシングなんて描けるの?ヒロインに属性を付与するための単なる素材じゃないの?とファンの間では不安視されていましたが、やはりボクシングは主題とはなりませんでした。結論をあらかじめ述べれば、西野佳純のメントレ劇場でした。佳純は純粋なるボクシングの力ではライバルを圧倒していたものの、盤外戦術に嵌められ敗北を重ねていたのです。その原因は西野佳純の単純なる性格。相手に色々と吹き込まれて脳みそパンクし判定負けという結果に陥っていました。だったら主人公がすることは一つ。西野佳純に下手な小細工無しで実力だけで勝負させること。そのためには主人公の言うことなら絶対的に信じるように信頼を勝ち取らなければならない・・・と、いうことで主人公は片桐を特訓メンバーに加え、佳純の特訓に励んでいきます。佳純に援交疑惑がかけられたり、佳純のメンタルの弱さは父子家庭における父親への依存に起因していたり、主人公と佳純が仲違いをしてそれを乗り越えたりとイベントが進んでいきます。最終的にはライバルを倒して地区予選優勝。
    • 良かった探しをすると、主人公の自嘲シーンは新島夕節が発揮されていて味わいがありました。以下、引用しておきます。「俺、本当は知っていたんだ。俺が語るものほとんどは、経験にもとづかない、空虚な妄想みたいなものだと。いくら理屈でそれっぽいことを言い募ったところで、誰にも……自分自身にさえ嘘くさいのがばれているって。心のどこかで自覚していた〔……〕現実は空想と違って、イレギュラーの連続で成り立っているんだ。そんなもの、いくら計算したって想定することなんてできない。そのくせ、全部自分の空想通り事が運ぶに違いないっていう妄想から抜け出せないんだ、俺は。滑稽なんだよ」

 

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  • 主人公記憶障害幼児退行エンド
    • 佳純√はビターエンドに終わります。主人公は不治の病におかされていましたが、その手術は人格を喪失するという反動を伴うものでした。躊躇していた主人公でしたが、西野佳純はそれでも生きていて欲しい、死んだら元もこもない、生きてりゃ何とかなると、主人公の生存を望みます。主人公は西野佳純の言葉を信じ、自らの意志で手術を受けいれます。主人公には人類が次のステージにのぼるための力が備わっていたのですが、有識者たちはそれを危惧していました。それ故、病気を治すのは二の次に過ぎず、主人公から特殊能力を除去することが目的だったのです(作中では「クジラの鍵」)。人格リセットがかけられた主人公は記憶障害・幼児退行し、精神年齢7歳になってしまうのでした。1年後、西野佳純と再会した主人公でしたが、佳純のことなどすっかり忘れており、感激の再会を求めていた佳純にお姉ちゃん誰?を炸裂させてしまうのです。西野佳純は自分が背中を押したせいで主人公が人格障害に陥ってしまったことを自己嫌悪。そんな状況に救いの手を差し伸べるのが有村ロミであり、振り返るんだ!と助言します。ワケも分らないまま、情動に突き動かされた主人公は西野佳純に追いつくと、佳純のことは忘れてしまったけれど、必ず思い出すから、好きなままで待っててくださいと述べて終局となります。

 

坂下唯々菜(界狩蛍)ルート

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  • 存在忘却×生霊(思念体/テレパシー体)
    • ノベルゲーで語り尽くされた存在忘却と生霊を2020年にもなって新島夕先生が題材になされたシナリオ。坂下唯々菜は吹奏楽部のフツーの学生。この「フツーの学生」というキャラクター表現は坂下唯々菜の本体である界狩蛍の願望具現化というのが味噌。当初主人公は因果交流のために唯々菜に接触し、吹奏楽部の活動を見たりラーメンの食べ歩きにつきあったりします。そうこうするうちに唯々菜は自身の存在が周囲に忘れ去られつつあることを主人公に相談してきます。この時点で多くのプレイヤーが、「逆ONE」展開ねーと思ったことでしょう。「逆ONE」展開には、存在が消滅するからこそ、死を意識することで実存を回復できるという効果があります。唯々菜が存在消滅しないように二人で手を繋いでキャッキャしながら生活する様子をしばしご覧ください。そしてこのままではジリ貧なので何かしようということになり、唯々菜が行きたがっていた場所である小笠原へGO!そこで主人公と結ばれた唯々菜は自己が思念体であることを思い出し、別離を迎えます。

 

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  • 主人公アカシックレコードへの接続で自己犠牲エンド
    • この作品の設定として彗星病というものがあり、これを発病させると異能に目覚めることがあります。唯々菜の本体は界狩蛍といい、自己の思考を相手に強制的に伝えてしまうというサトラレ能力に覚醒しました。しかしその異能が故に畏怖された蛍は心を摩滅させていき、最終的には自己を猫だと思い込むことで対処しようとした結果、精神崩壊したのでした。以後、蛍は機関に拾われ、そこでテレパシー能力を利用されて「世界の救世者」として祀り上げられます。異能を酷使しては疲弊して眠り続けるという毎日。そのような中でフツーの生活を望んだ蛍は、自己の無意識をテレパシーで飛ばし坂下唯々菜という生霊的な思念体を生み出したのでした。唯々菜が「フツーの女の子」としてキャラ造形されていたのはそうした意図があったのです。
    • 主人公はこのメシア扱いされる界狩蛍を救うことを決意します。彗星病に犯された主人公が獲得した異能が「鯨の鍵」、いわゆるアカシックレコード的なものへの接続です。蛍の異能を解析した主人公は、自らを犠牲にして、その制御能力を付与したのでした。眠りから目を覚ました蛍には主人公死亡のお知らせ。主人公が蛍の為に残したフツーの人生を送ることになります。しかし蛍は主人公が生きていると心で感じていたのです。ここで有村ロミが登場し、主人公がかつての蛍のような状態になっているとお知らせ。主人公が残した幸せを投げ捨てでも主人公を救いたいのだと蛍は立ち上がり、主人公を奪還して逃避行オチとなるのでした。

 

新田忍ルート

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  • お店経営モノ
    • 新田忍は小さなカフェ的飲食店を経営する大学生。しかしお店に固執し大学も休学していました。料理は得意なものの経営能力は低く、赤字を抱えて先行きは明るい物ではありませんでした。シナリオの前半はお店経営モノとなり主人公はその手助けをして立て直しを図ることになります。コストカットのため縁故取引を改め、単価を上げて利益を追及します。こうして経営は改善され、主人公もその喜びを分かつのでした。しかしながらそうは問屋が卸さず、仕入先が食中毒を起こし、店も大打撃を受けてしまいます。短絡的に利潤に走ったためしっぺ返しを受けたのです。新田忍もショックを隠し切れず、店をたたむ決意をしたのでした。
    • そもそもなぜ新田忍は店に拘っていたのでしょうか。それは両親が経営していた店への思い入れでもあり地元への愛でもありましたが、父親に対する意地でもありました。忍の父は封建的な人間で自分の考えが絶対的に正しく娘は黙ってそれを聞いていれば良いという考えの人間でした。そのため新田忍は反発し、意地になっていた側面もあったのです。しかし店舗経営の現実を目の当たりにし、さらには店の信頼も失墜させたことで心が折れてしまったのです。実家に帰ろうとする新田忍を見ても何もできない主人公でしたが、ここでもまたロミの助言が発動します。発破をかけられた主人公は奮起し、新田忍を強引に引き留めるのでした。また、新田忍は常連さんたちとの交流から自分の店が求められていることを実感し、再び店を開く意志を持ちます。ダメ押しになるのが子ども食堂のボランティアをやった時に来てくれたメスガキの再訪であり、ナイス伏線回収という感じ。

 

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  • 孕ませ妊娠からのバルドスカイ
    • 主人公は新田忍の父との面接を経て、認められることになります。しかし新田忍との肉体的交渉において膣出し必中大ヒット。このゲームは閨房描写が数クリックしかなくて唖然としてしまうレベルなのですが、見事妊娠させてしまいます。新田忍の妊娠を知り、動揺する主人公でしたが熟考した末に父子家庭における父親との生活を思い出し自分が父になる覚悟を決めます。苦労はかけるけど子どもを産んで欲しいというシーンがクライマックス。
    • こうして幸せな生活が始まるかと思いきやここから思い出したかのように彗星病展開が始まります。有無を言わせず主人公は拉致されることとなり、新田忍に何も告げられないまま機関への協力を強制されます。その協力とはざっくばらんに言うとバルドスカイ的展開。意識体をロボットにシンクロさせてアクションバトルするというもの。4年間もの時を戦いに費やすことになり、主人公は心が磨滅していきます。ファイナルバトルの時にはもう投げやりの捨て鉢となっていました。そんな主人公を救ったのが有村ロミであり、「機関」と並び立つ勢力を打ち立て主人公が解放されるよう働きかけてくれていたのでした。
    • 最後の戦いから帰還し主人公は解放されますが、一体今更どの面下げて新田忍と会えて言うのでしょうか?ここで主人公に踏ん切りをつけさせるのが、やはり父親との絆であり、父と子が触れ合うシーンを見て感化されたのでした。他の√が皆、ビターエンドっぽいのに対して、新田忍はきちんと再会できてハッピーエンドになります。

 

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