雑録

アインシュタインより愛を込めて APOLLOCRISIS (GLOVETY)の感想・レビュー

滅亡した惑星から放たれた文明継承の為の情報思念体が地球に接続しようとするのを防ぐ話。
かつて宇宙には地球よりも高度な文明を持つ惑星があったが発展しすぎて滅んでしまった。
その文明を継承させるべく宇宙に情報思念体が放たれ適応可能な星を探す旅に出る。
その旅路の果てに情報思念体は地球に辿り着くが人類はその文明を継承することを拒否する。
思念体は無理やり地球に接続しようとしたため激しい戦いが起こり主人公たちは防衛に成功。
だがしかし、この戦いでメインヒロインである機械仕掛けの少女の魂魄は消滅してしまう。
エピローグでは主人公がシャーマニズムに目覚め魂魄を連れ戻し機械仕掛けの少女が復活する。

滅亡した地球外生命体からの高度文明継承

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  • 地球に高度文明を接続させようとする情報思念体との戦い
    • かつて宇宙には高度な文明を誇った地球外生命体がいましたが。その生命体は滅びてしまいました。しかし自分たちの文明は継承させたいと願い情報思念体を宇宙に放ちます。この思念体は宇宙を放浪しながら適応可能な惑星を探し求めていたのです。イメージ的には同日に発売したふゆくるの逆です。何というタイムリーさ。この思念体は旅路の果てに地球に目をつけ、人類たちが自分の文明の継承者足り得るかを推し量ることになります。主人公はこの思念体が保有する高度文明にアクセスできる鍵を与えられるのですが、前作『アイ込め無印』においてそれを拒否するのです。しかしこの主人公の選択が、逆に人類の尊厳を示すことになり、文明を継承する資格があると認定されてしまうのでした。こうして情報思念体は地球に無理やり高度文明を接続しようと襲い掛かってくることになります。主人公たちは精神と肉体を切り離し、その精神をロボットに憑依させることができます。地球外生命体の高度文明が誇る情報思念体と人類の最終バトルの始まりです。ここで鍵となるのは人類が持つ不条理の肯定。カミュならシーシュポスの神話、ジョン・キーツならネガティブケイパビリティ。高度文明は精神的苦悩を解きほぐし安寧をもたらして融合しようとするのですが、野上や主人公は自分が保有する苦悩の複雑さを受け入れることで自我を深め、それを打ち破るのです。「いくら考えても解けない問題にしがみつきつづけて それでも進むことを諦めない君のありかたが、私は好きです」の場面はまさに名シーンと言えるでしょう。そして最後はメインヒロイン有村ロミが赤い槍となり高度文明の象徴である宇宙鯨を突き破るのでした。外敵の侵略を阻止した有村ロミは主人公を日常に回帰させるため、自らは散って逝きます。有村ロミは魂魄を機械に憑依させた存在であり、ラストシーンで主人公が歯車を抱き締めるシーンは一種のカタルシスと感動を呼びます。

 

有村ロミとは一体何だったのか?

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  • 比村茜の魂魄から形成された機械仕掛けの少女が有村ロミ
    • 本作の重要人物が、主人公の叔父とされる郷田慎二。しかしこの叔父さんは実は主人公とは血縁にありませんでした。慎二は毒親の家庭で育ちましたが、その才能を見込まれ愛内家の養子となったのです。これにより主人公の父親である愛内浩太の義弟となり主人公の叔父という関係が発生しました。慎二はメキメキと能力を開花させていったのですが、見初めた女性である比村里央との交際を愛内家から反対されてしまいます。それでも強引に里央と結婚した慎二は愛内の苗字を捨て比村姓となるのですが、愛内家の力は強大であり悉く碌な就職先にありつけなかったのです。貧困の中でも愛する里央と一緒なら耐えられる。しかしそのような蜜月は長くは続かず、娘である茜が生まれると状況は一変します。子育てが上手くいかずノイローゼ&ヒステリーになる里央。自己の境遇に納得いかない慎二。こうして慎二は生活費の為に里央と茜を捨てて愛内家に下り、その末席である郷田姓を与えられたというわけです(もともとの姓→愛内→比村→郷田)。
    • 幼い比村茜は父親が家を出ていく際に引き留めに来ます。折しも雪が降りしきる冬の出来事。そしてこの時に雪の中に倒れてその後は意識不明となります。しかしこの意識不明となった比村茜から二つの魂魄体が発生します。それが父親の理想を叶える神としての存在である「ミコ」と母親の気狂いを癒すための存在である「ロミ」でした。ミコもロミも人工知能と機械のボディを与えられ、それに魂魄体を憑依させることで、あたかも人間であるかのように顕現できたのでした。当初ロミは母親を慰める為、理想の比村茜として振る舞っていました。しかし幼少期の主人公との交流により自我を芽生えさせ、以降「有村ロミ」としての個体を形成するに至ります。上述した最終決戦では情報思念体の侵略を阻止するためミコもロミも散って逝きます。魂魄体から魂そのものが消滅したら最後に残るのは機械だけ。ロミは自分が存在していたら主人公が日常に戻れないだろうと思って、自らその魂を手放したのです。歯車だけが残った。
    • エピローグでは主人公が有村ロミを取り戻すために奮闘していったことが語られます。情報思念体との戦いの中で、主人公は所謂シャーマン能力、死の世界と交信を行う力を手にします。作中では死後の世界について「死後、肉体を失い滅びた魂はある次元にとどめおかれ、そこで別のエネルギーへと変換される。その次元では死者の魂が集まりエネルギーを放出している」と解説されています。主人公はその次元にアクセスし、ミコとロミの霊魂を見つけ出し、魂魄体を形而下へと降ろすのでした。ミコは物理的な肉体を望まず、電子状の生命体となりますが、ロミは主人公により機械仕掛けの身体を媒介にして目覚めることなります。最初は記憶が安定せず、自分は比村茜であると思ったりもするのですが、徐々に主人公との交流を思い出し、有村ロミとしての復活を遂げるのです。こうして長い時を経て主人公と有村ロミは邂逅を果たし、ハッピーエンドとなるのでした。

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アイこめシリーズ感想