ケモノ娘の育て方(製品版)の感想・レビュー

育児放棄・家庭崩壊・百合友情を題材にし、感情の機微を描くのが上手い・・・が、短すぎる。
第1話が育児放棄され親に捨てられた主人公くんのトラウマを幼馴染が無償の愛で癒す話。
第2話が百合友情を描く内容で、失踪事件の原因が自分にあると自責の念に駆られる少女の話。
共通√はイイハナシダナーと思い、ここから個別√が始まるんだろうと思っていたら突如エンディング。
久しぶりにNYAONさんがDMFもしらば桜ッセ系統のシナリオを書いてくれたのに、そりゃないぜ。
もとみやみつき先生のキャラデザも原画も好きだっただけに、こんなに短いなんて・・・

概要


  • 村から排斥されるケモノ娘を護ろうとするのは自分を捨てた母のようになりたくないという単なるエゴだろうか?
    • 主人公くんと幼馴染ヒロイン:加賀谷佳菜はある時山中でケモ耳もふもふ尻尾少女を保護します。ケモノ娘の名は桜庭いろは。いろはかつて神隠しに遭い、神域に閉じ込められてしまいました。その際、生きていくために、山神の眷族となったのでした。故に、ケモノ娘化したとのこと。主人公くんは佳菜とともにいろはが人間世界に馴染めるよう頑張るのですが、閉鎖的な村においては、異端は忌避されるものです。いろはが過去に神隠しにあったことは村人全員が知っており、当時の山狩りの苦労も覚えていたのです。そのためいろはがケモノ娘化して戻ってきたことは、祟りか妖怪だと思われたのです。さらにいろはが畑を荒らして野菜を食い散らかしたことからも排除の対象となります。
    • このことに対して主人公くんは憤りに駆られるのですが、他方で自分のエゴではないかと思い悩むのです。かつて主人公くんは両親と妹と4人家族で幸せに暮らしていたのですが、父の死から家庭崩壊が始まります。主人公くんはまだ幼い妹の小鳥の面倒を見ながら家事を支えるのですが、母親は労働と育児に耐え切れなくなり、育児放棄して家を出て行ってしまったのです。幸いにして1週間後に異変を感じた教員の助けが入り、祖父の家に引き取られ死は免れました。以上のような過去を持っていた主人公くんは、ケモノ娘のいろはを見捨てることはできなかったのです。なんかここまで書いてて『かにしの』かよとツッコミたくなりますね。
    • で、NYAONさんに真骨頂である煩悶する主人公くんは味わい深いぜと思いながらと読み進めていきますと、ここで主人公くんを救済するのは幼馴染の佳菜なのですね。主人公くんを無償の愛で包み込み、どんな時でも肯定する、傍にいる、愛してあげると主人公くんを支えるのです。アガペー。個人的には、こんなにも幼馴染パワーを発揮させるのなら、祖父に引き取られて村にやってきた時の主人公くんと佳菜の出会いとか、二人の絆がどのように育まれていったのかを描いてほしかったです。もう少しシナリオの分量が割ければなぁと思ったのでした。



  • 自分のせいで友達が失踪してしまったことをトラウマとして抱く少女の目の前に、数年越しで失踪した友達がケモノ娘として現れ、過去の罪を突きつけられているようで辛い。
    • いろはを見捨てることなく、受け入れる覚悟をした主人公くんと佳菜。そんな二人は続いていろはを学校に通わせることになります。戸籍とか編入試験とかそんなものは誰も気にしない。ひとまず保健室登校という形をとり、徐々に人間の生活習慣を取り戻していきます。第二話のテーマとなるのがいろはとその友人千尋の友情の話です。なんといろはと千尋は竹馬の友であり、いろは失踪事件には千尋が関係していたのです。幼少時のいろはは面倒見が良く、困ったちゃんであった千尋とも友人関係が続いていました。しかし、千尋のワガママから一方的に千尋がいろはと喧嘩をしてしまいます。次の日は山に遊びに行く約束もしていましたが、千尋はキャンセル。困ったいろはは綺麗なお花を摘んでくると言うのですが、これが原因でいろはは神隠しにあってしまうのでした。いろはの家庭はそのあと崩壊し離婚。家も更地になり、いろはの母は精神病院に入ってしまいました。それを目の当たりにしていた千尋は自分のせいでいろはの人生と家族を壊したのだとショックを受けるのです。
    • そんな千尋の前に、いろはが突如現れたのでさぁ大変。これをなんとかしようと主人公くんは奮闘します。ここでご都合主義が発生し、いろはを拾った山神さまが妹の小鳥を依り代に顕現したではありませんか。千尋に対して、いろはの生活は悪いものではなかったことを見せることで、自責の念を晴らそうとしたのです。神域でのいろはの生活の実態を見た千尋に対して、罪を許す主人公くん。ここでこれまでの数年間の過去の束縛をバッサリと切って捨てる主人公くんちょっとえげつないかもね。こうして千尋は贖罪を果たし、ケモノ娘となったいろはを受け容れ、百合友情エンドとなるのでした。個別√はほぼない!!