倫理 応用倫理【3】現代家族論

家族形態は、社会に対応して変化する。少子高齢化現代社会を反映した現象であり、小手先の対策で婚姻や多産を奨励しても改善することは難しい。従来の家族観ではとらえられない家族を、特異なものとして受け止めることは、閉鎖的で現実に即していないと言える。ここでは現代における家族について学習する。

【目次】

1.家族の形態と役割の変化

(1)近代以前の日本の家族

  • 先祖から未来の子孫までをふくめた、ひと続きの「家」(イエ)の成員
  • イエ制度…伝統的な日本社会にみられる、家の存在を重要な単位とする制度。イエは家長の統率のもとに家産や家業を守り、個人をこえて存続する。WWⅡ後の民法改正により、家督相続など家長の権限に基づくイエ制度は廃止された。
  • 柳田国男は先祖への感謝と子孫への配慮を「縦の共同体」とよぶ。

(2)近代社会における家族

  • 直系家族が減少し、核家族化が進展する。
    • 直系家族…祖父母・両親・子で構成。拡大家族のうち、核となる親子の結合が一組に限られる家族。『ちびまるこ』のさくら家。
    • 拡大家族…直系家族におじ・おばを含む家族のこと。『サザエさん』の磯野家。
    • 核家族…一組の夫婦と未婚の子、または一組の夫婦からなる家族。『クレヨンしんちゃん』の野原家。

(3)現代における家族

  • 様々な家族形態
    • 生涯独身、離婚による母子家庭・父子家庭、未婚の母(婚姻せずに孕ませられて捨てられた女性)、子どもを産まない夫婦、別居など。
  • パーソンズ
    • 社会学者(米)。家族の機能の中心的なものとして、おとなの精神的安定と子どもの教育・社会化をあげる。
  • 家族機能の外部化
    • 家族の持つ本来の機能が、外部の社会集団に依存している状況のこと。
    • 現在では教育は学校、仕事は会社、生老病死は病院と全てが家庭から乖離している。

2.女性の社会進出

(1)女性の社会進出

  • 女性の社会進出とは…職業を持つ女性が増加すること。女性の就業者数は、1960年代の行動経済成長期から増加。女性の社会進出の要因は以下の通り。
    • a.少子化にともなう若年労働力の不足を補うための女子労働の需要増大
    • b.平均寿命の伸びと出生率の低下による女性のライフサイクルの変化
    • c.女性の高学歴化による就労意欲の増大
    • d.教育費や住宅にかかわる支出の増大
    • e.家電製品の普及による家事負担の軽減

(2)性的役割分担の見直し

  • 「男は仕事、女は家庭」のように、社会や文化によってつくられ、社会的に割り当てられた、性別概念や性別役割分業観にとらわれず、それぞれ自立した人間としての男女の役割分担を考え直す。
    • ※文化的・社会的に作られる性・性別・性差をジェンダー(gender)といい、生物学的な性差と区別する。

(3)女性の社会進出を支えるための法整備

  • 改正男女雇用機会均等法
    • 1986年の法律を改正。募集・採用・配置・昇進に関する男女差別の禁止などが事業主の努力規定から禁止規定へと内容が強化された。
  • 男女共同参画社会基本法
    • 男女が互いに人権を尊重しつつ、責任も分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮できる社会を社会の実現を基本理念とし、その政策の方向を定めた法律。性別に中立的であるような配慮、男女間の格差を改善するためのアファーマティブ=アクションなどが掲げられている。
  • 育児・介護休業法
    • 1歳未満の子を養育するための育児休業と、2週間以上の常時介護を必要とする家族(配偶者、父母及び子、配偶者の父母)を介護するための休業。事業主は労働者からの申し出を拒否することはできない。女性だけでなく、男性にも認めたことによりが画期的。(セ試2013-[4]にも出題。)

3.高齢社会を迎えて

(1)高齢社会

  • 高齢化社会(総人口のうち65歳以上が7%)⇒高齢社会(総人口のうち65歳以上が14%)
    • ※先進国のなかでもっとも急速に高齢化が進んだため、社会の仕組みや人々の意識が追い付かない!
  • 高齢者の介護は誰が支えるの!? 
    • 介護保険制度…保険料を徴収して、高齢者に介護サービスを提供する社会保険制度。被保険者が痴呆や寝たきりになった場合、本人や家族の肉体的・経済的負担を補う目的で、2000年4月から実施された。※デイケア、ショート=ステイ、ヘルパーの派遣などのサービスの提供 

(2)高齢者にかかるお金はどのように負担されているの? ⇒年金

  • 日本の年金制度の仕組み…国民年金は20歳以上の国民が全て加入する賦課方式
  • 被保険者の種類
    • 第1号被保険者…自営業、学生、フリーター。保険料は各自で払う。貰えるのは国民年金のみ(任意で国民年金基金確定拠出年金に加入可能)
    • 第2号被保険者…会社員、公務員。保険料は勤務先と折半し給与天引きで勤務先が納付。貰えるのは国民年金+厚生年金(会社員)or共済年金(公務員・私学教員)。
    • 第3号被保険者…扶養されている年収130万円未満の配偶者。保険料の自己負担なし。貰えるのは国民年金のみ。

(3)安心して暮らすためには

  • アメニティ
    • 心地よさ、快適さ、さらに心地よく快適な生活を営むために必要な設備や環境をさす。転じて、ホテルなどのシャンプーや髭剃りをさしてアメニティともいう。
  • ノーマライゼーション
    • 障害のある人もない人も、高齢者も児童も、男性も女性も、全ての人が同じ市民として地域社会で生きていけるように環境を整備し、全ての人が共生すること。