倫理 西洋思想【14】人生における芸術

  • 人生における芸術
    • 芸術的な活動や鑑賞によって、人間はさまざまな困難を克服し、生の喜びや充実感を得る。芸術も人生を価値づけ方向づける指針となる。そのため今回は芸術家の人生について学ぶ。

【目次】

1.芸術と美

①芸術作品の誕生…感動や想いが世界に向けて何らかのかたちにあらわされるときに生じる

②時代を超えて多くの人々に感動を与える

③美的コミュニケーション…芸術はテーマが結晶した作品を介して、受け手である他者とのコミュニケーションをめざす活動。作品のあらわす価値が「美」であるため、美的コミュニケーションと言われる。

④芸術作品の鑑賞…作品のテーマなどを理解し、解釈する。芸術作品に美を認めると様々な感情が湧く。

2.苦しみを突きぬけて歓喜へ【ベートーヴェン】「運命」、「第九」、「悲愴」

  • 音楽のなかに自己の人格の完成をめざし、自由と人類の幸福を表現
    • 耳を悪くして絶望し自殺しかける→遺書における苦悩の告白により絶望から立ち上がる
      • ✝「お前を苦しめている不幸を頭のなかから追い払うためには、仕事に没頭するよりよい手段は見つからない」(『手帖』)

  • 自己の苦悩や運命と闘う強靭な意志
    • ✝「真に人間の名に値する人間を他から区別する本質的な特徴は、困難な逆境に耐え抜くことである。」

3.不屈の人生【ロダン】…近代彫刻の完成者

  • ロダンの功績
    • 古典芸術にもとづく写実的手法をおさめたうえで、喜怒哀楽など人間のさまざまな感情や内面にこもる生命の躍動を表現した。

  • ロダンの多難な人生~みずからの理想を追究することのなかに、生きることの喜びを見出す~
    • ①国立の美術学校の受験に三度失敗+コンクールにだした作品がさんざんな非難
    • ②しかし彫刻へのひたむきな熱情を忘れず、孤独であることを恐れず、世間に媚びることなく、自分の信念を貫く
    • ✝「真実であれ、若き人よ。…深く、恐ろしく、真実を語るものであれ。自分の感じることを表現することに決してためらうな。…おそらく最初君たちは了解されまい。けれどもひとりぼっちであることを恐れるな。友はやがて君たちのところに来る。」(『続ロダンの言葉』)→自分の目指すものが真実であるならば、いつか必ずだれかが自分のもとを訪れるという思い

4.社会への問いかけ【ピカソキュビズムやシュール-レアリスムで新境地を開く。

  • ピカソの基本的な立場「芸術家は政治的存在である」
    • →芸術家の真価は、作品を通して自分や自分の生きる社会・時代の真実を表現すること。芸術作品が国境を越え、時代を超えて多くの人々に影響をおよぼすのはこのため。

  • スペイン内戦とピカソ
    • ゲルニカ空爆…1937年4月、スペイン内戦に介入したナチス=ドイツが戦略とは関わりのないバスク地方の小さな村ゲルニカを無差別爆撃。街の大半が焦土と化し、1500人をこえる死者がでた。
    • 壁画「ゲルニカ」…独特の手法により戦争の悲惨さ、暴力の不当性、不条理な仕打ちに対する民衆の苦悩と苦しみを描くことで、スペイン内戦における自国の反政府反乱軍とナチス‐ドイツの暴挙を告発。