地誌【3】東南アジア地誌

1.多様な民族と文化

1-1.東南アジア自然地理

1-2.地形

1-3.気候

2.海と陸の交流

2-1.交通

  • インド洋と太平洋をつなぐ海上交通の要衝 ⇒ 海のシルクロード、陶磁の道、香辛料の道

2-2.宗教

3.複雑な民族構成

3-1.東南アジアは複数の民族が混在する多民族国家

3-2.マレーシアの事例

  • 民族系統
    • マレー系…人口の約6割。マレー語を話し、イスラーム教を信じる。
    • 中国系…人口の約3割。華僑・華人。スズ鉱山の労働者として、福建省広東省から移住。商業・貿易・金融など高い経済力を有する。中国語を話し、仏教徒が多い。
    • インド系…人口の約1割。英領植民地時代に天然ゴムプランテーションの労働力としてインド南部から移住(英領インド)。タミル語を話し、ヒンドゥー教を信仰する。
  • 民族問題
    • 中国系住民が経済的優位に立ち、農村人口の多いマレー系は貧しく民族間で経済格差。不満が高まる!
    • ブミプトラ政策の展開…マレー語を公用語イスラーム教を国教とし、教育や雇用などでマレー系を優遇することで、多民族との経済格差の是正を目指す。

3-3.シンガポールの事例

  • シンガポール公用語
    • マレー語…設定上の国語はマレー語。
    • 英語…学校教育、ビジネスでは英語中心。
    • 中国語…シンガポールは中国系住民が分離独立したので、大半の日常会話は中国語。
    • タミル語…インド系住民が日常語で使用

4.東南アジアの農業地域)

4-1.モンスーン気候と人々の生活

  • モンスーンの影響…雨季と乾季に分かれる
    • 焼畑耕作…喚起に火入れをし、雨季に種子を播く。
    • 水田地帯…雨季が始まる4月下旬に稲の栽培をはじめ、乾季の到来とともに収穫する。⇒稲の生育期に十分な気温と降水のある東南アジアは、世界でも有数の稲作地域。

4-2.東南アジアの稲作

  • ②タイの農業と緑の革命
    • a.従来の農業形式
      • 世界有数のコメの生産国であったが・・・単位面積当たり収量は主要生産国の中でも低い
        • ※国土の大半がサバナ気候であったため、灌漑をしなければ乾季の作付ができない
        • ※収量の低い浮稲などを栽培していた
    • b.緑の革命…1960年代から始められた、新しい品種を開発して収量を増やす努力
      • 内容:生育日数が短い高収量品種の導入と普及、灌漑・排水設備の整備、トラクターなどの農業機械の導入、無肥料・無農薬から化学肥料や農薬の投入、近隣農家との共同作業にかわり雇用労働力の利用
      • 変化:資本集約・労働力集約農業へ
      • 効果:乾季稲作が急速に普及、二期作も可能。収量は約2倍に増加。
      • 影響:格差の拡大…「緑の革命」はインドやフィリピン、メキシコなどでも稲、小麦、トウモロコシなどの作物で実施された。しかし、肥料や農薬などへの支出が増え、農民の間に経済的な格差が広がった。

4-3.プランテーションの発達

  • ①植民地支配と農業
    • プランテーション…欧米諸国による植民地支配により始まる大規模な企業的農業。先進国の企業などが本や技術を提供し、現地の人や移民を低賃金で雇って輸出向けの商品作物を大規模に栽培する。

5.ASEANの結成と工業化の地域差

5-1.ASEANの結成

(1)第二世界大戦後の地域秩序

・近代東南アジア 欧米列強の植民地 (※タイは英仏の緩衝国となったので唯一独立を保つ)
 ↓
・WWⅡ後、東南アジア諸国独立 ⇒ 冷戦構造に巻き込まれ、資本主義国と社会主義国の対立
 ↓
インドシナ半島の共産化 ⇒ 社会主義勢力に対抗するためにASEAN結成
 →語呂;タマシイのフぃ(タイ・マレーシア・シンガポールインドネシア・フィリピン)

(2)ASEANの質の転換

ベトナム戦争カンボジア内戦終結により、秩序が安定
 ↓
・反共組織から経済・社会・文化の面での協力をする組織へ転換、1999年までにブルネイベトナムラオスカンボジアミャンマーも加盟

5-2.外資の導入と急速な工業化

  • 輸入代替工業から輸出指向型工業へ
    • 輸入代替型工業
      • →これまで輸入に依存していた繊維や日用品などの軽工業製品を国内で生産できるようにすることを目指して工業化すること。国内市場が小さく、技術力に乏しいと工業発展には結びつかない。
    • 輸出指向型工業
      • →外国資本(外国企業)の誘致を進めて、自国の安価な労働力を利用して工業製品の生産及び輸出を行うことで、工業化を進めること。輸出加工区をつくり、外国企業の法人税や輸入関税の優遇・安価な労働力と工業用地の提供により工業化に成功。途上国が工業化を進める際の有効な手段となるが、外国資本により経済を握られ不安定になることもある(アジア経済危機・アジア通貨危機)。

5-3.工業化の進んだ国々

  • 1番手:シンガポール…アジアNIEsのひとつ。輸出指向型工業によりGNIは先進国並み。
  • 2番手:マレーシアとタイ…輸出指向型工業政策の外国企業誘致に80年代以降低賃金労働力を求める日本が応じ、急速に工業化が進む。
  • 3番手:インドネシアとフィリピン…輸入代替工業化にある程度成功し外国企業を排斥したインドネシアとクーデターによる政情不安定だったフィリピンでは輸出指向型工業化が進まなかった。アジアNIEsや日本の資本により工業化が進む。

5-4.工業化を目指す後発国

6.変化するASEAN諸国

6-1.生活の変化と人口移動

・東南アジアの都市化・工業化の進展 → タイのバンコク、 マレーシアのクアラルンプールなどで都市化。
  ↓
・農村では所得、就業機会が乏しい → 現金収入を求めて都市へ出稼ぎ労働
  ↓
・農業崩壊。都市ではインフラ未整備、スラムの拡大

6-2.これからのASEAN諸国

  • ①機能的役割
    • 消費市場…工業化 → 生活水準の向上 → 消費市場 → 先進国の商品を売りつける対象!
    • 国際ビジネスの展開…インド、中国の結節点になるので、位置的に最良。
  • ASEAN諸国の対外関係
    • FTA(自由貿易協定)…特定の国・地域との間で関税や非関税障壁の撤廃を目的とした協定
    • EPA(経済連携協定)…FTAの内容に人材養成、情報通信技術、労働力移動などを含めた広範な経済協力。
    • APEC(アジア太平洋経済協力会議)…オーストラリアが提唱した環太平洋圏の経済協力を推進する閣僚会議
    • ASEM(アジア欧州会議)…かつて植民地と宗主国との関係にあったアジアとヨーロッパの国々が、対等な立場で経済や政治文化交流に至るまで幅広く対話し、協力を行う会議。
    • AFTA(ASEAN自由貿易地域)…関税を引き下げ、ASEAN域内の貿易の拡大と投資を促進するために、合意された貿易地域。

7.東南アジア各国情勢まとめ

7-1.タイ(首都バンコク) ~上座部仏教を信仰する王制国家~

  • 英領マラヤと仏領インドシナの緩衝国となったため、唯一の独立国。
  • チャオプラヤ川は生活の中心!! → デルタ地帯の稲作(世界一のコメの輸出国・2009年)。他にも天然ゴムやサトウキビのプランテーション、「緑の革命」で品種改良
  • バンコクに輸出加工区 → 自動車部品・電気機械・食品加工(鶏肉・魚介類)。バンコクは一極集中型のプライメートシティ(首位都市)。
  • 1997年にはタイの通貨下落が原因となり、輸出指向型工業に大打撃を与えるアジア通貨危機に!
  • 観光業の発達…アユタヤ・スコータイは世界遺産に!

7-2.マレーシア(首都:クアラルンプール) ~マレー半島南部と島嶼カリマンタン島からなる多民族国家!~

  • ブミプトラ政策…マレー系、中国系、インド系の民族で構成されるが少数派の中国系が経済的実験を握るため、政府はマレー系優遇政策を展開。マレー語を公用語イスラームを国教とし、教育や雇用などでマレー系を優遇。
  • プランテーション…天然ゴムから油ヤシへ→かつては天然ゴムの世界最大の生産国であったが合成ゴムが普及すると油ヤシへ転換。油ヤシから精製されるパーム油の世界有数の生産国となる。
  • 鉱工業…カリマンタン島から原油天然ガスが産出。
  • ルックイースト政策…クアラルンプールやペナン島を輸出加工区として外国企業を誘致。

7-3.シンガポール(首都:シンガポール) ~華人・華僑のアジアNIEs

  • 1965年 マレーシアから中国系住民が分離独立
  • ジュロン工業地域で工業製品の輸出を中心に加工貿易。韓国・台湾・香港とともにアジアNIEs

7-4.ベトナム (首都:ハノイ) ~停滞の中からドイモイ政策で社会主義市場経済を目指す~

  • 1945年にフランスから独立するが冷静体制に巻き込まれ分裂。米に軍事介入されベトナム戦争(南&米軍VS共産勢力の北)→アメリカが敗退し、共産化して統一 (※当初ASEANは反共組織)。
  • 1000年に及ぶ中国支配により大乗仏教を信仰 (※他の東南アジアの仏教国は上座部)。
  • メコン川では商業的稲作 (コメの輸出国世界5位、2005年)
  • ドイモイ政策で社会主義市場経済⇒コーヒーの生産と輸出加工区

7-5.ラオス(都:ビエンチャン)

7-7.ミャンマー(都:ネーピードー)

  • 1948年独立(英領)、軍事政権
  • エーヤワディー川の稲作中心

7-8.フィリピン(首都:マニラ) ~北部のルソン島と南部のミンダナオ島が中心の島嶼国家~

  • スペイン領(16世紀~) ⇒アメリカ領(1898~) ⇒日本軍政(1942~)⇒ 独立(1946)
  • 旧教のスペイン支配が約300年続いたのでカトリックが圧倒的に多い。
  • 環太平洋造山帯に属し、火山が多く地震も多発。
  • 輸出加工区マニラではエレクトロニクス工業が盛ん。その一方で、スラム化。
  • ミンダナオ島でバナナ栽培が盛ん(輸出量第2位、2005年)。

7-9.ブルネイ(都:バンダルスリブガワン)

  • 1984年、英から独立
  • 石油15%、液化天然ガス85%は日本へ輸出
  • 生活は豊かで教育・医療は無料

7-10.インドネシア(都:ジャカルタ)

7-11.東ティモール (都:ディリ)