【下馬評】2021年4月発売新作ノベルゲーは何を買ったら良いですか?

4月発売の主要な新作は5本。1週先んじて4/23に発売されるのは、悪名高き「ぱれっと商法」で世間を騒がせた和泉つばす先生原画がウリの『9-nine-』シリーズ完全版。その後月末の4/30に社会人が「モテ」の努力をする『ゆびコネ』、推薦合格した高3男子が卒アル委員をする『海と雪のシアンブルー』、好感度マックス系まったり幼馴染のキャラゲー『幼馴染のいる暮らし』、コワモテだけれど内面が乙女な主人公の心情描写を掘り下げた『コイ×ミツ』が発売されます。

以下、体験版をプレイした上での作品別の雑感。

『9-nine-』(ぱれっと) (2021-04-23)

全章プレイ済み。学園異能バトル×フローチャートで並行世界ループモノ。和泉つばす先生の原画がウリ。作品の内容としては、小綺麗にまとまっており面白くはあるものの既存の作品の面白い所を寄せ集めて昇華させたものであるため新規性は皆無(※世間からの評判は高い)。フローチャートでループしハッピーエンドをつかみ取るのは『古色迷宮輪舞』や『シュタゲ』を思わせるし、並行世界で攻略したヒロインたちがラスボスバトルで一つの時間軸に集まり大団円を迎えるのは『スマガ』。その他、個別ルートのテーマも見たことあるわという感じ。1章の都ルートはシナリオそのものが完成されておらず投げっぱなしになっていたので、新章ではそれを回収して欲しいと思っている。あとメインになるであろうと思われるソフィーの話をやらなかったら多分炎上するのでその心構えも必要かな。分割商法を展開し最後に追加エピソードを入れて完全版出すのは良くある姑息な手口だけど、信者以外の信頼度を下げるだけだと思う。『9-nine-』は新章だけDL販売するみたいだから一応読むつもりではあるけど、わざわざクリア後コンテンツを除去した劣化版を出すとか。ぱれっとは『9-nine-』だけで5年も持たせたのでそろそろ新作を出して欲しい。




『ゆびさきコネクション』 (HOOKSOFT) (2021-04-30)

もはや姉妹ブランドSMEEとテキストが同じノリとなってしまったHOOKSOFTの新作。今回は社会人モノであり主人公が「モテ」のために努力をするという話。社会人モノは合う合わないがプレイヤーにとって激しいので、ウケル人にはウケルのでしょうが、個人的には説教されるのが耐えられなかった。物語の冒頭で、上司とギャルとバーテンダーから説教される。女にモテるためには、美容院行ってファッションに気を使ってなんたらかんたらとか。価値観が昭和であり、昭和的価値観を大正義として押し付けてくるのでとても辛い。多様なライフスタイルに分化し様々な価値観が提示されるなかで、いまだに固有の価値観を説教垂れてくるのは、ちょっとご遠慮したい感じ。ファッションなどでも社会人になると自分が所属する身分や社会階層に適した服装をしなければならないので、それを踏まえて御洒落をしたらシナリオに深みがでるのに、ギャルの価値観でオシャレするので社会人モノの良さを投げ捨てている。作品の内容の話に戻るとライターのすり合わせができておらずテキストが破綻してしまっている。缶コーヒーしか飲まないから種類が分からないとか言ってる主人公が、毎朝コーヒーを飲んでいるし、ヒロインへのメッセージアプリで朝はコーヒー派とか言う。

『海と雪のシアンブルー』 (CUBE) (2021-04-30)

今まで自分の受験を優先し学校行事に深く関わろうとしてこなかった主人公が推薦合格したことを契機に卒アル委員となる話。今までクラスでの活動を蔑ろにしてきた分、秋から卒業までの時間を大切にするという雰囲気が良い。体験版は母親の再婚後にやってきた連れ子の少女と兄妹関係を構築することが主眼となる。主人公は来年度には上京するからということを言い訳にして面倒なしがらみを遠巻きにしてきた。その腹の底を義妹に見透かされ、親に言われたからといって自分に気を使わなくて良いと返されるところが一番の見どころである。おススメ。そんな状況を反省した主人公が、イモウトと丁寧に関係を築いていくところがグッとくる。体験版では見事に仲良し兄妹になるのだが、製品版で一度築いてしまった兄妹関係をどうやって崩して恋人関係になるのかが見ものである。そのほか、不登校ヒロイン、元気系文学少女後輩、堅物クソ真面目教員とそれぞれ魅力的なキャラが揃っています。特に文学作品モノがエアプに終わらないで、ちゃんと内容を踏まえてシナリオを描いている所がポイント高いぞ!真/裏ヒロインとして主人公が想いを拗らせる姉系キャラが用意されているが、このキャラを攻略できるか否かが勝敗の分かれ目となるであろう。

『幼馴染のいる暮らし』 (あざらしそふと) (2021-04-30)

ネクストン系列のピンヒロインシリーズ。今回は幼馴染モノ。家庭科スキル特化型のほんわか幼馴染。主人公は進級時に幼馴染と別クラスになったことで、喪失の危機を実感し告白しようと決心する。だがしかし幼馴染は幼少期からずっと現在進行形で付き合っているものだとばかり思っていたという展開。プレイ動画で告白前のシーンを見ることができますが、これで付き合ってないとか主人公は思っているんだぜ!?毎日一緒に手作り弁当を食べて一緒度が足りないのでハグするとかフツー付き合ってない人にやらんやろということで幼馴染は主人公と付き合ってると思ってたから、こんなにも尽くしてくれていたんだねということが明らかになるギミック。ほんわか幼馴染がとても可愛いが、既に好感度マックス状態であるしフラグ構築は主眼としないのでどのように物語を転がすかが問われる。

『コイ×ミツ』 (とるてそふと) (2021-04-30)

とらドラ!の竜二を思わせる主人公が光る話。コワモテで誤解されがちだけれども家事スキルが高いという設定。本作はさらにそこから踏み込んで製菓研究を目指し少女漫画趣味というプラス要素が付け加えられている。外見が白ギャルのハーフ、不思議系ネトゲヲタ従妹、主人公だけには素の表情を見せてくれるお嬢様と攻略ヒロインが用意されている。中でも一番焦点が当てられているのが白ギャル。主人公がギャルが苦手なので偏見を持っていましたが、それが超巨大ブーメランとなって襲い掛かってくるところが見どころです。主人公は自分が見た目で誤解されることから自分だけは他者に対して偏見を持たないと思っていたのだが、白ギャルに対して先入観と偏見を持っていたと悔恨するのです。白ギャルはハーフだったのでたまたまギャルっぽい服とかが似合っていただけなのさと。あと、主人公が心の支えにしている、お菓子で他者を幸せにするという信条を持たせてくれたジョゼフこそが白ギャルっぽい伏線が張られているので、幼馴染要素もある。共通√では主人公を貶めようとする教員と男子生徒がウザいが、そいつらに立ち向かうことで主人公とヒロインズが絆度を深める機会となっている。