【下馬評】2021年6月発売新作ノベルゲーは何を買ったら良いですか?

【フルプラ作品】
6月のフルプラの新作はハジラブと粘膜ポトレ。うち後者は抜きゲーなので、読み物として消費できるのはハジラブ一択となります。ハジラブはフラグ構築そのものでは無く、フラグ構築後の関係性に焦点を当てたことがウリなのですが……。最初から好感度マックス系幼馴染がいるので、彼女のフラグを圧し折らなければならず、それをどう表現するかが最初の難関かもしれません。リメイク作品としては星織ユメミライと祝福のカンパネラが出ます。リアルタイムで攻略してますが両方ともリメイク買って再プレイする程の作品じゃなかったかな。

【続編】
低価格シリーズについて。まずは続編作品。流星ワールドアクターや竜姫ぐーたらいふが短編で続編を出しています。そのうち人気が高いのは前者なのですが……。流星ワールドアクターは、瞬間的には良いテキストを書くけれどもシナリオの構成が出来ず風呂敷畳めないことで有名な衣笠彰梧先生が、結局風呂敷畳めず「繋ぎ」として続編出している感があります。完成させる気あるんかな?衣笠彰梧先生には良いディレクターと良いプロデューサーと良いシナリオ構成担当と良いサブシナリオがつけば、かなり売れると思います。衣笠彰梧先生がまともに作品を完成できたのはあかべぇ時代の『こんぼく』だけという事実からも風呂敷畳めないイズム(構成力の無さ)が如実に表れています。

【ピンヒロイン】
低価格シリーズのピンヒロインものについて。これは夜のひつじ先生が執筆する『年下彼女』とせせなやう先生の原画が光る『リリウム・ウェディングプラン』があります。せせなやう先生の原画のかわいさを活かしたキャラ表現がステキです。しかしながらやはり注目すべきは夜のひつじ先生ではないでしょうか。あざらしソフトに利用されて単なるイチャラブゲーに堕する可能性もありますが、鬱ゲーで有名な夜のひつじ先生の作品をプレイしてみたくはあります。

以下個別評

ハジラブ -Making*Lovers- (SMEE) (2021-06-25)

SMEEと言えばブットンだバカギャグゲーで有名なメーカーでした。しかしながら姉妹ブランドであるフックソフトが段々とSMEE化してきてしまい、SMEEが押し出される形で新機軸に挑むような感じになっています。そのため1キャラを除いてSMEEっぽさはナリをひそめており、王道幼馴染・大家族長女バブミ炉利・ウザギャルといった面々が攻略ヒロインとして用意されています。それゆえ、これまでのSMEEの作風を一人で担うことになったヒロインの熱量がまさに異質といっても過言ではなく、異彩を放っています。王道幼馴染とバブミ炉利はとてもかわいい。個人的には家族ゲーとか好きなので、大家族に受け入れられてすったもんだして欲しいのでバブミ炉利√に注目しています。攻略ヒロインだけでなく、その背景となる家族がいるのは強いよね。弟妹2人にしか立ち絵がついていませんが、大家族全員がキャラ立ってるので楽しみにしています。一方で王道正統派幼馴染との関係性も結構グッとくる展開。長年連れ添った雰囲気がとてもよく描けており、それでいてなお主人公が依存しきっているわけではないことにも好感が持てます。しかし惜しむらくは好感度マックス過ぎるということ。他のルート入るには、幼馴染とのフラグを圧し折らなければならないじゃん。それをどう表現するのか、それを読むのはとても辛い。だけど書かないと薄っぺらくなっちゃう。と、いうことでフラグ圧し折りをどのように書いてくるのかが気になります。


Role player:小粥姉妹の粘膜ポトレ ぐりぐちゃLIVE! (あかべぇそふとつぅ) (2021-06-25)

攻略ヒロイン2人の抜きゲーでフルプライスというのもなかなかのチャレンジャー。コスプレによる救済をテーマとしており、ジャンプラでやってる『2.5次元の誘惑』のノリ。漫画家の主人公が本当は成人向け漫画を描きたいのに、厳格な劇画漫画の父親により束縛を受けているという設定。自分の方が社会的に異質であると理解しているため、父親の漫画のスピンオフとしてデヴューしたという背景を持っていました。自分の好きなものが好きといえないのは辛いよね。けど、社会でオタク文化好きとか言ったら抹殺されるに決まってんじゃん。誰が自分から言えようか。と、いうか社会的承認を受ける必要ってある?理解者がいればいいじゃん。そんなわけで主人公の下に理解者(姉妹)が都合よく表れるという展開。この理解者の姉妹も社会的に異質な自分たちが主人公が描いた成人漫画に救われたと思っており、主人公の助けになりたいとコスプレをしてくれることになります。基本的には抜きゲーなのですが、主人公が父親の束縛からどのように解放されるのかが見どころとなっています。しかしタイトルにLIVEと入っていて、動画をウリにしているのに、全シーン動画というわけではないというのが痛いところ。

年下彼女 (あざらしそふと) (2021-06-25)

何といってもウリは夜のひつじ先生。それ以上でもそれ以下でもない気がします。問題となるのはあざらしそふとが夜のひつじ先生をきちんと使いこなせるのかどうか。夜のひつじ先生と言えば、鬱ゲーで有名であり、社会的に人生をうまくいきられない主人公がそれでも自殺せずにいきなければならないという人生の苦しみに立ち向かっていきます。生きていることを赦して欲しい。そんな感じ。そして年下彼女は主人公が教員。夜のひつじ先生の教員モノといったら迷子教室でしょう。理想を掲げて先生となり、懸命に努力した結果ボロボロになり、それでも生きようとしてあがき、最終的に自分は世界から必要とされていないという境地に至り許されるシーンは圧巻です。ですので、夜のひつじ先生で教員モノであるとすると、そういった鬱ゲー方面を期待してしまうのです。しかしながら公式サイト見た感じでは明るい抜きゲーのような感じになっており、夜のひつじ先生っぽさが微塵も感じられません。単なるイチャラブキャラゲーを作るだけなら夜のひつじ先生をなぜ起用したんだあざらしそふと。となってしまうでしょう。プレイ動画を見た感じでは休日も仕事に追われてるのでまだ可能性はあるかな。夜のひつじ先生へのお布施で買うかもしれない。

リリウム・ウェディングプラン (Barista Lab) (2021-06-25)

かわいい。キャラゲー。せせなやう先生の原画を主体としたピンヒロインものの第二弾。前作はメイドのアナベル、今作は女神のリリウム。体験版では、主人公に対して最初から好感度マックスでひたすらヨイショしてくる様子が描かれるのですが、その理由をきちんと回収できるかでシナリオの面白さが変ってきそう。チラホラ過去編の匂いが漂っていましたし。せせなやう先生のキャラがとても愛らしく描かれているので、キャラゲーとしてはグッときます。個人的に気になっているのは主人公の和菓子職人(見習い)設定。家が代々和菓子屋を営んでおり、主人公も望んで継承するべく和菓子スキルの向上を目指しているのですが、この和菓子スキルがどこまでシナリオに絡んで来るか。体験版の時点ではリリウムとのフラグ構築に和菓子スキルが存分に活かされていたので、注目ポイントといっても過言ではないでしょう。原画ゲーピンヒロイン廉価版シリーズとして確立できるかも業界を占う試金石となるでしょう。

流星ワールドアクター Badge&Dagger (Heliodor) (2021-06-25)

衣笠彰梧先生は作品を完成させる気があるのでしょうか。衣笠彰梧先のシナリオパターンとしては、主人公が社会から正当な評価を受けられない(あえてうけようとしない)という設定になっていることが多いです。そして、そのアウトサイダー的立ち位置を活かして活躍することで社会を見返すというカタルシスを生んでいます。ゼロ年代後期から十年代にかけて流行ったさすおに・俺がいる系の作風といってよいでしょう。その社会の裏面からの復讐を描くテキストについてはピカイチであり、圧倒的な支持を受けています。私も、面白いと思います。しかしながら、世界観の設定を広げ過ぎて尻きれトンボで終わるという風呂敷畳めないムーブを発動することでも良く知られています。こんぼく暁の護衛・レミニセンスなどを手がけましたが、きちんと完成できたのは、舞台設定が学園モノであるこんぼくのみ。流星ワールドアクターも結局、場面場面で優れているところはありましたが、全体で見ると何もかもが放り投げられていました。そのためファンたちからは流石いつもの衣笠彰梧先生だぜと言われ、続編が期待されていたのですが……。続編も短編となり何もかも解決しなさそう。暁の護衛は三部作で、その間の中間作は繋ぎとして作られた作品だったので、本作もそんな感じになりそう。

リメイク

祝福のカンパネラ Plus Stories (ういんどみるOasis) (2021-06-25)

当時『はぴねす』という作品の原画が大層すばらしいように感じられてたいへん流行っていたのです。その原画師が新作を出すというので購入した思い出があります。しかしキャラゲーの『はぴねす』が学園を舞台にイチャラブ出来ていたのとは対照的で、『祝福のカンパネラ』は剣と魔法のファンタジーを舞台にしてしまったので設定を活かしきれずポシャった印象が強いです。あと主人公が善人すぎて草食ならぬ草、光合成してろとかいうような風潮があったことも思い起こされます。この原画師はやはり『はぴねす』時代が一番かわいくキャラを描けていたような感じがします。私が懐古厨なだけかもしれません。

星織ユメミライ Perfect Edition (tone work's) (2021-06-25)

「成長段階」を取り入れたことで後にtone work'sのパターンを形作った作品です。学園編と社会人編があるパターン。「成長段階」という手法だけ見ると、当時としても新しいものではなく、ときめも2やねこねこソフト諸作品、夜のひつじ先生の名作オサジュー(幼馴染と十年、夏)等、既存の作品がありました。しかしこのメーカーは「成長段階」を丁寧に描き、単なる学園モノに終わっていたキャラゲー群を昇華させたことで歴史的意義のあるメーカーと言えるでしょう。内容的としてはキャラ属性として専門性を付与することの難しさが浮き彫りになったと言えるでしょう。ヒロインのキャラ付けのためにそれぞれ独自の専門分野が付与されているのですが、それらを深めることが出来ず単なる飾りで終わってしまったことに限界がありました。天文・海洋・ピアノ・インテリアコーディネーター・カメラ・病弱と色々と取り入れていますが表面的に終わった感じです。あと√によっては主人公がかなりアッサリ一級建築士になるのですが、建築士イベントもさほどないのが残念でした。専門分野って深く掘り下げれば一分野だけでフルプラ1本分にもなりそうなので、キャラ属性をちりばめれば薄っぺらくなりがち。