ラブライブ!スーパースター!! 第1話「まだ名もないキモチ」の感想・レビュー

天賦の才を持ち歌が大好きなのに人前では緊張して歌えなくなってしまう少女の話。
音楽科の高校受験に失敗し、学歴コンプを抱えトラウマ・イップスPTSDに苛まれる。
そんな少女を救うことになるのが「スクールアイドル」として歌うこと。
「虹ヶ咲」では自己同一の確立の際に生じる少女たちの葛藤を描いたが本作は「少女救済」。
クラスメイトの熱意に絆された主人公は自己の内面と向き合い再び歌うことを決意する。
アイドルとしてなら人前でも歌うことができることを実証し、少女は何度でも立ち上がる!

学歴コンプも過去のトラウマも今から始めるスクールアイドルで薙ぎ払え!

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学科間格差と学歴コンプの象徴としての制服
  • 高校受験の失敗・学科間格差・学歴コンプ
    • 冒頭から学歴コンプ。主人公の少女が、第一志望であった高校の音楽科の受験に失敗する所から物語は始まります。演出方法としては歌に対して天賦の才を持っているけれども、緊張してしまって実技試験の時に歌えなくなり、高校に落ちたという見せ方です。中学の時の合唱部の仲間が、音楽科に進むなかで、自分だけ普通科の制服を着ているという現実が入学時から重く少女にのしかかってきます。いっそ別の高校なら良かったのにね!ヘッドホンで耳をふさいで目を背け、かつての仲間に見つからないようにコソコソと登校。それでもエンカウントは避けられず、改めて自分が行きたかった音楽科の制服を見せつけられると、現実に打ちひしがれます。なまじ主人公の社交性が高いため、相手に対して気を遣うことになり、それが明るいながらも悲劇的な効果をもたらしています。初登校の日に、母に制服を褒められても、似合っていないと反抗期してしまう所には泣いた。女子の場合、制服が一種のステイタスシンボルになっており、それを学科間格差のある高校で3年間強いられるのは非情なものがあるでしょう。

 

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澁谷かのんのトラウマ告白
  • 過去のトラウマとの対峙
    • 高校生活に夢も目標も希望も見いだせない主人公。そんな主人公を変えるきっかけになるのが「スクールアイドル」でした。主人公に「スクールアイドル」をもたらすことになるのが、高校進学を契機に日本の学校にやってきた上海人の存在。偶然、主人公の歌を耳にして惚れこむという流れです。この上海人はスクールアイドルに強い執着があり、自分の高校生活をこれに賭けようとしていました。主人公は最初はスクールアイドルを倦厭していたのですが、次第に上海人の情熱に絆されていきます。そして音楽科のカーストを嵩にかけ、一方的になじってくる黒髪ロングポニ子に遭遇すると、主人公は思わず上海人を庇ってしまうのでした。見た感じ、このポニ子も相当拗らせており、彼女もトラウマ解放の対象となりそうですね!
    • 度重なる勧誘を受け、主人公は過去のトラウマを吐露していくことになります。他者に話をすることで自分の気持ちが整理されていくという手法。前半では主人公の学歴コンプが強調されていましたが、その実態は高校受験の時だけではなく、もっと遡るものだったのです。小学校の合唱大会でセンターでソロだったのに緊張してステージの上でぶっ倒れたことから始まり、中学の合唱部でも非日常の場面で歌う時には散々であったことが語られていきます。学歴コンプ以前の根深い問題であったことが明らかになります。

 

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自問自答ぽえむシーン
  • スクールアイドルによる少女救済
    • 主人公は自分の過去を語った後、歌が歌えなくとも歌が好きなので、上海人がスクールアイドルを作る手助けはしたいと勧誘を一緒に行いますしかし結果は芳しくありませんでした。その結果を踏まえ、上海人はやはり主人公に歌って欲しいとその情熱をぶつけることになります。この上海人の他者の境遇を考えず自分の為に相手を巻き込んでいくという強引とも言える熱さは、日本には無いものですし、日本社会では忌避されるべきものと言えるでしょう。しかしこの強引さが今回のケースでは主人公を救うことになるのです(だからこそ上海人をメインヒロインに据えたのかもしれない)。上海人の強引な論法により自己の内面を剥き出しにされ自問自答するよう強いられた主人公は、悩み抜いた末、やっぱり自分は歌が好きだという結論に達するのです。振り払ってしまった上海人の手を、今度は自ら掴みに行き、熱唱する様はまさに圧巻。
    • 「いいの?私の歌を大好きって言ってくれる人がいて。一緒に歌いたいって言ってくれる人がいて。なのに本当にいいの?本当にこのままでいいの?小さな頃からずっと思っていた。私は歌が好き。ずっと歌っていたい。歌っていれば遠い空をどこまでも飛んでいける。暗い悩みも、荒んだ気持ちも、全部力に変えて前向きになれる。いつだって歌っていたい。やっぱり、私、歌が好きだ!」
    • 歌い終えた後にはギャラリーから拍手を貰い、これは今までステージで失敗し続けてきた主人公には味わえなかったものであり、感動を与えるのです。「もしかして私、歌えた!?」のシーンは涙無しには見られません。
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スクールアイドルとしての覚醒

【感想まとめ】ラブライブ!スーパースター!!


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