『美少女花札紀行 みちのく秘湯恋物語』(F・O・G,1997)の感想・レビュー

旅ゲー。花札師の跡取り息子の大学生が写真家になるため東北を撮影旅行する話。
主人公は旧家の長男で両親から家督継承を望まれていたが写真家になる夢があった。
父親から条件として出されたのが大学在学中に賞を取り将来の可能性を示すこと。
結果が出せずに焦る主人公は東北地方へ赴くがそこで物憂げなJKと邂逅する。
写真の被写体としてJKに惚れ込んだ主人公は平泉から青森へと少女を連れて撮影する。
JKは父の事故死の真相を知るため、父の旧友を訪ね歩くために主人公と同行する。

東北地方の名所旧跡を廻る撮影旅行と物憂げなJKの謎解明

f:id:r20115:20210915073400j:plainf:id:r20115:20210915073405j:plain

  • 行きずりJKを連れて平泉・遠野・角館・田沢湖十和田湖・恐山・青森を廻る
    • 主人公は東北地方で有名な旧家の花札師の跡取り息子。その才能も溢れるものがあり家督の継承を望まれていましたが、本人にその気は無く、写真家になるという夢がありました。父親から出された条件が大学在学中に何かコンテストで賞を取り、将来写真家としてやっていけのか、その可能性を示すことでした。主人公は学業の傍ら写真家の下でアルバイトに励んでいましたが、一向に結果を出せません。焦燥に駆られた主人公は撮影旅行を決意し、平泉へと赴くのですが、そこでボーイミーツガール。なんと黒い喪服を着て物憂げな顔で佇みJKに惚れ込んでしまうのです。少女には父の友人たちに会うため東北地方をめぐるという目的があり、そのついでとして主人公に同行することになります。で、突如出てくるのが花札ゲーム。設定としては花札勝負をして少女に勝つと写真を撮る残余枚数が増えるというもの。ひたすらマップを歩いて写真を撮るだけではゲームとして成り立たないため花札がいれられたのであろうか。
    • それはそれとして少女を被写体として各地を巡りながら、その関係性を深めていきます。各地の名所旧跡の伝承や民話が、フラグ構築のキーポイントになっており、主人公に絆されつつも将来を悲嘆するJKの様子が丁寧に描かれておりノスタルジックラブを感じさせます。特に印象に残っているのはやはり遠野におけるオシラサマの民話でしょうか。馬と養蚕という産業を土台にした話。民俗学をモチーフとしたラノベやノベルゲームによく出て来るよねオシラサマ。本作の場合は切り絵形式での表現が味わい深いもおとなっています。オシラサマを概略しておくと次の通り。①馬を購入したもののその気性の荒さに困った父親が娘に馬の世話をさせる→②娘が馬と恋仲になり獣姦している所を目撃してしまったので馬を殺す→③それでも娘は死んだ馬に縋るので父親が馬の首を跳ねると娘は馬の首に乗って飛び去ってしまう→④後年両親の夢枕に娘が立ち親孝行できなかった代わりとして蚕とその飼育方法の技術をもたらし繁栄する→⑤以来娘と馬を象った桑の木に白い布を被せ願い事を祈願するという風習が生まれこれをオシラサマという→⑥どんとはれ(物語が終わったら、こう言うそうな)
    • さて、そんなこんなで旅は進み、少女の謎が明らかにされていきます。JKは青森にある旅館の娘だったのですが、旅館は地上げ屋に目をつけられて経営妨害を受け、多大な借金を負わされます。父親は見せかけの交通事故で死亡し、JKは借金のカタとしてヤクザの後妻に入ることを強要されていたのです。このままではお先真っ暗な少女は自分の悲劇的な運命に思いを馳せていたというワケ。主人公は少女を救おうとするも、自分はまだ親の脛をかじっているだけの無力な大学生であることに打ちひしがれます。そして少女は撮影旅行を通して主人公の人となりやカメラへの情熱を知ったため、自分の悲劇に巻き込むことを是としなかったのです。青森に辿り着くと主人公の事を思い、姿をくらませるのでした。最後はちょっとご都合主義。ヒューマンドラマというよりも各地の風景を写真に撮る方がゲームのメインだしね。少女が撮影旅行について行った理由が父の友人を訪ね歩くことだったのは先述しましたが、そこで真相を明かしたシステム手帳をゲットするのです。これが地上げ屋の動かぬ証拠となります。主人公は結婚式に殴り込み、実家の財力を使って借金を帳消しにすると、花札勝負を挑みます。で、花札やってるうちに警察が来て、強引な地上げとか交通事故を装った殺人とかヤクザ一味は一網打尽となりハッピーエンドとなります。
    • 本作の魅力としては東北地方の名所旧跡の実写を味わう旅ゲーなのですが、メインヒロインのJK朱鷺子さんが旅情に彩を加えてくれます。物憂げな様子からとても大人びた雰囲気を醸し出す少女が、仲良くなるごとに年相応の表情を見せてくれるところはそのギャップさがあり、グッとくる展開となっています。JKというとキャンキャン喚くガキという印象が強く、本作でもそのようなヒロインがサブキャラとして出てくるため、より一層朱鷺子さんの魅力が光るというモノ。落ち着いた感じが良い。

f:id:r20115:20210915073409j:plainf:id:r20115:20210915073413j:plain

f:id:r20115:20210915073417j:plainf:id:r20115:20210915073421j:plain