『終のステラ Stella of The End』の感想・レビュー

ポストアポカリプス的セカイ系。文明崩壊後の世界で人類救済よりもAIロボ少女の実存を選ぶ話。
繁栄を誇った文明は今や見る影も無く、人類はその残渣に依存して僅かな集落に点在していた。
主人公は集落間を移動しながら技術や物資を提供する運び屋という職業の中年男性であった。
ある時、人間の心を有するAIロボを老公爵の下まで連れて来るよう依頼を受けそれに乗る。
主人公との旅路の中で少女は心を成長させ、人類と遜色のない精神性を持つようにまでなる。
人類文明が崩壊した理由は人類の遺伝子が変化したためAIから支援を受けられなくなったこと。
そのため新たに人類を継ぐ存在としてヒロインらAIロボが作られたのであった。
依頼を出した公爵の意図はAIロボ少女を媒介にAIの支援を引き出して人類を救済すること。
だが主人公は公爵を殺して人類救済を放棄し、AIロボ少女の人生を優先するセカイ系オチとなる。

AIロボ少女の実存>人類の救済という典型的セカイ系作品

AIロボ少女の中に娘を見出してしまう主人公
  • リアリストな中年男性が少女と接するうちに情が移ってしまいセカイ系する
    • 【1】主人公は仕事を生き甲斐とする中年男性。かつて被差別身分の奴隷のような生活から己の才覚により成りあがったという自負があった。だがそれにより共同体からやっかまれることになり、仕事を取るか妻子を取るかで選択を迫られ、妻子を捨ててしまうのであった。それ以来主人公にとって仕事が全てとなり生きる理由となったのである。その仕事とは「運び屋」。物語の舞台設定はポストアポカリプス的世界観であり、文明崩壊後の世界で人類は過去の遺産に縋りつきながら僅かな居住地に点在していた。これらの居住中を渡り歩きながら物資や技術を供給するのが運び屋のお仕事である。
    • 【2】ある時主人公は謎の公爵から莫大な報酬と引き換えに依頼を受ける。それはAIロボ少女を公爵の下まで連れてきて欲しいというものであった。少女はAIロボながらに人間の心を宿しており、主人公は道すがら彼女を教育していくことになる。主人公は情が湧かないようにクールに接していたが、AIロボ少女は主人公の頑なな子心を溶かしていく。作中の中盤はロードムービー路線となり目的地までひたすら旅をするのだが、その旅の過程の中でAIロボ少女は様々な経験をして自我を成長させ高度な精神性を宿していく。
    • 【3】最終的に主人公はAIロボ少女を自分の娘としてまで見るようになり、二人は父娘の愛で結ばれる。公爵がAIロボ少女を求めていたのは、人類の救済の鍵を彼女に見出したから。高度に発達したかつての文明社会ではAIに人間の遺伝子を登録し、その生活を支援するよう命令していた。だが人類の遺伝子は変容してしまい、AIが人類を人類として認識できなくなってしまったのだ。それ故、AIは人類を支援しなくなったため、前近代のような生活を余儀なくされているというワケ。この問題を解決するために生み出されたのが、AIロボ少女。彼女たちがAIから人類としてみなされるようになっていたのだ。それ故、このAIロボ少女を媒介にしてAIからの支援を引き出し人類救済をしようとしたのが公爵の目的。
    • 【4】だが主人公は最終的にAIロボ少女の実存を選んで公爵を殺す。その代償として余命2ヶ月余りとなったが最後の時まで少女を娘として教育していく。死の有限性がヒロインでなはなく主人公の適用されるパターン。最終的に主人公は死にAI1ロボ少女はそれを看取る。主人公は死んでしまったけれど、父親の意志を継いで娘は生きて行くというお涙頂戴的なセカイ系泣きゲーエンドとなる。
妻子を見捨て仕事を選んだ主人公の実存
遺伝子の変容によりAIから人類として認識されなくなった現人類
AIロボ少女はAI群から人類として認識され現人類を救済する存在
死という有限性に際して自分の技能を伝授し娘として認定する主人公
主人公は死ぬが娘となったAIロボ少女は黄昏の世界を強く行く抜く
立派に成長したAIロボ少女エンド