Monkeys!!「マイナス一の鳥」(月島カラス シナリオ)の感想・レビュー

「猿と鳥。一見、交わらないふたつの生き物が、隔てられていた壁を壊そうとした」話。
「猿は、鳥に、生きる希望を与えた」(主人公が孤独に苛まれるヒロインを救済する)
「鳥は、猿がうなされる、過去の悪夢を晴らした」(ヒロインが主人公の母親トラウマを払拭)
「しかし鳥は希望を失う」(フラグ構築も束の間、主人公は意識不明の重体となってしまう)
主人公を亡くしたヒロインは男子校の舎弟たちを統率し、復讐しようとのめり込んでいく
主人公の魂魄体は一時リアル猿に憑依するが、メバチの活躍で元の身体に戻る。
重傷の体に女装をまといし主人公は硝子・ユキに支えられカラスの復讐を止めハッピーエンド。

月島カラスのキャラクター表現とフラグ生成過程

f:id:r20115:20211102161653j:plain

  • 「猿は、鳥に、生きる希望を与えた」
    • 本作はメインヒロイン月島カラスが死亡する所から始まります。その理由は孤独死であり、世の中に理解者のいないカラスは外界を否定し目を閉じたのでした。カラスが孤独死をする契機となったのは、大切なトモダチを取り上げられ捨てられたから。元々発達が遅かったカラスは人形が与えられたその日から、人形遊びに楽しみを見出し、言葉を話し始めたのです。親はこれを喜びドールハウスや様々な人形を与え、カラスは更なる成長を遂げるのですが・・・。一向に人間の友達を作らない様子を見て親は危機感を抱き始めます。こうして突如人形たちを捨て去ったのでした。人形をホントウのトモダチとしていたカラスにとってこれは絶望に等しいものでした。外の世界でリアル友人を作ろうとするもなかなか上手くいかず、さらに実家はカネで「友人代」を支払ったためタチが悪く、カラスが孤独を深めるのは時間の問題でした。こうしてカラスは人生に飽いて、目を背けるようになったため、目は霞み耳は聞こえなくなり肉体は生きるのを辞めようとしたのです。そんなカラスに新たな生きる希望を与えたのが主人公。カラスが主人公に「ジュリア」という初めてトモダチとなった人形の名を与え、女装させていったのは、カラスにとって生きるヨスガであった人形遊びそのものだったのです。カラスにとっては人形遊びは遊びではなく生きる為の本質とも言えました。これまでの攻略ヒロインの各ルートは月島カラスのお人形遊びだったのです。自分のお人形が大活躍する、これはカラスにとって生きる理由でした。ジュリアはカラスの成りたかった自分だったというワケ。

 
f:id:r20115:20211102161702j:plain

  • 「鳥は、猿がうなされる、過去の悪夢を晴らした」
    • 一方、主人公は母親に対してトラウマを抱えていました。しかしこれは主人公の誤解から生じたものであり、この複雑な家族問題を解きほぐすのがカラスの役割となります。幼少期の主人公は母子家庭で育ち、母親は酒と料理を出す小さなスナックで生計を立てていました。この時の母親が男を誘う仕草が、主人公の脳裡にこびりつくことになるのです。しかし主人公の母親は身体を売るために誘っていたのではなく、野球のキャッチボールをシマショウと誘っていただけだったのです!しかもそのキャッチボールも、主人公の相手がきちんとできるようになるための練習だったことが判明します。主人公はずっと自分のした勘違いが呪縛となっていただけだったのです。忙しい中でも母親は主人公のことを愛しており、何とか金を工面してグローブを買い与えました。しかし母親はまともにキャッチボールが出来ず、主人公の相手が務まりませんでした。それ故、主人公と一緒にキャッチボールが出来るようになるために、寡黙で善良な冴えない男にキャッチボールを習っていただけだったのです。それが現在の主人公の義父だったというワケ。義父は誤解を解こうとしても主人公は聞く耳を持たず…。このような家庭環境のすれちがいが、カラスの活躍によりほぐされていき、主人公は長きトラウマから解放されます。

 
f:id:r20115:20211102161707j:plain

  • 主人公が植物人間状態となりメインヒロインは復讐を誓う
    • 主人公とカラスは番長対決編や遊園地デート編を経てフラグ構築します。番長対決での硝子ノ宮ウォーキングによる勝利や、遊園地デートでの逆さまジェットコースターは割とグッとくる展開なので見る価値アリ(ホントウ)。そして共学化も波に乗りハッピーエンドかと思われました。
    • しかし主人公が死ぬ。いや、意識不明の重体。植物人間状態となります。で、月島カラスは復讐のための修羅の鬼と化し、不良連中をまとめ上げ、報復をすることに。内容は割とシリアスなのですが、魂魄体となった主人公視点で進むというギャグ的展開。仮死状態となった主人公の魂は肉体に戻れなくなり宙を漂う存在となります。そして主人公の肉体は御神体的聖遺物となり、病室が女子と男子の交流の場となっていきます。もどかしく思う主人公の魂は、ある時逃げ出したリアルモンキーの身体に憑依してしまうのです。そして猿のまま硝子ノ宮勢力の信頼を勝ち取り、皆でカラスの復讐を止めに行きます。男子校VS女子校のガチバトルの火ぶたが切って降ろされようとしていました。
    • 一触即発の雰囲気が漂う中、主人公は女装形態ジュリアとして颯爽と登場。メバチによる頭ごっちんこ療法が炸裂。猿の頭と人間の頭をごっつんこし、元に戻ったのでした。ジュリアの説得は男たちを次々と翻意させていきます。最後まで意固地になるカラスを、ユキ・硝子に支えられながら説得しに行くシーンが最大の見せ場となっています。こうして男子校を率いた女子のカラスと、女子校を率いた男子の主人公の活躍により生徒たちは更に絆を深めたのでした。
    • ラストのシーンでは体験版終局部での問いがもう一度繰り返され幕を閉じます。礼節とマナーを学ぶのは仲良くなりたいから(価値観を共有するべく努力をする)。仲良くなったら楽しい。では楽しいのその先にあるものは?ということでハッピーエンドを迎えます。

f:id:r20115:20211102161712j:plain

f:id:r20115:20211102161716j:plain

Monkeys!¡感想まとめ