雑録

『Monkeys!! 体験版』(HARUKAZE)の感想・レビュー

礼節とマナーを学ぶのは価値観の異なる社会集団と友好を築くためであるという話。
本作は設定だけ見ると「女装主人公がお嬢様学校へ潜入」という手垢塗れの粗製乱造品。
しかしそれは見せかけでギャグゲーの皮を被った哲学ゲー。「社会集団における人間関係」を掘り下げる。
お嬢様の歩行技術トレーニングだけでドラマを作れるのは素晴らしい手腕。
複雑な家庭環境を大切にする主人公と彼に生きる意義を見出した月島カラスの交流にはホッコリ。
そして女装主人公ゲーで一番かわいいのは主人公の法則が発動しジュリアが一番かわいいのである。

異なる社会集団が持つ価値観を尊重するということ

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  • 価値観の異なる者同士の交流のためには
    • 本作は設定だけ見ると手垢塗れの粗製乱造品のように見えるかもしれません。公式webとかわざとそういう風に作られているフシがあります。「廃校寸前の男子校を救う為に女装してお嬢様学校に潜入」とか。『おとボク』をきっかけに雨後の筍のように生み出された「ensemble」の作品群じゃないんだから。しかしライターは十鳩先生だ!恋愛皇帝や野良猫ハートのライターさんだ!バカゲーギャグゲーと見せかけた哲学ゲーを得意とするはずなんだ!と、いうわけで本作も期待通りにバカギャグゲーのフリをした哲学ゲーでございましたよ。
    • 本作のプロローグでテーマとなるのは、社会集団がそれぞれ醸成する価値観について。主人公が所属する底辺ヤンキー男子校とメインヒロイン月島カラスが所属するお嬢様学校では社会集団が尊ぶ価値観が違います。主人公は何故礼節とマナーを学ぶのかというテーゼに真っ向から取り組んでいきます。その第一歩となるのが歩行訓練であり、お嬢様らしい歩き方の所作を身につける為、特訓を受けることになります。本作で面白いのは、主人公が女装してお嬢様学校へ行くだけではなく、月島カラスが男装して底辺高校に潜り込むことです。お嬢様学校の価値観だけでなく、月島カラスの視点を通して男子校を叙述することも本作の魅力の一つとなっています。
    • 月島カラスは冒頭では死ぬところから始まります。完璧超人お嬢様であった月島カラスは厭世的になりこの世に飽いて今まさに死ぬところだったのです(ホントウにホスピスの可能性もあるかもしれない)。そこへ主人公がやってきて気持ちを注入することで月島カラスのHPは回復し、見事死の淵から蘇るのでした(ギャグゲー)。ここで伏線として張られているのが、月島カラスが危篤状態なのに両親は来ず叔母1人だけだということ。主人公も月島カラスの家庭状況を知っているかのようであり、この月島家の家庭事情が物語の原動力となっています。また家族が描かれるのは月島カラスだけでなく主人公のお家も複雑です。男関係にだらしなかった主人公の実母。何人もの男を渡り歩いて、最後は冴えない青果店のオジサンと結ばれます。しかし実母は主人公と旦那を捨て蒸発。旦那は新しい奥さんと子どもを作り、主人公もまた新たな家庭に適応して馴染むが、今度はその家庭が離婚するという怒涛の展開。主人公は継母や義妹とも仲が良く一緒に夕飯を食べる間柄。主人公と関係性を深める月島カラスはこの家庭事情を知ることになり、次第に家庭の一員になっていきます。義父が養育費を納めると娘が青果店にやってくるシステムっぽい。養育費が払えず主人公が本来なら夕飯を一人で食べる時、月島カラスがいたことにより救われるシーンは涙無しには見られない。感動。
    • で、主人公は男子校のメンバーと猛特訓に励み、時にはお嬢様学校の生徒会長(硝子ノ宮硝子)に作法を叩き込まれていきます。礼節とマナーを習得するため懸命になる主人公とそれに関わることが出来ず心が揺れ動く月島カラスの関係性がグッときます。勉強は同じレベルの集団で教え合うと知識が明確になり高まり合うというテキストが挿入された後、それになれなかった月島カラスの寂しさは一読の価値アリ。最終的に万全を尽くすも歩行所作の試験でトチってしまい、己の無力を痛感する主人公。その主人公が姿見の自分を見て、無力感の余りクソガキと言ってしまうところはグッときます。そしてすぐさま月島カラスがインターセプトし主人公に合格したことを告げるのです。何のためにマナーと礼節を学ぶのかと問う月島カラスに主人公が自分なりの言葉で仲良くなりてーからだろと返す所はエモすぎ。こうして晴れてお嬢様学校への第一歩を踏み出した主人公でしたが、さっそく硝子ノ宮硝子に男子トイレから出て来たところを目撃されてしまいます。どうなる主人公!?といったところで体験版はお開き。主人公が一番かわいいと感じられる体験版でした。

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参考