雑録

冥契のルペルカリア 第八幕「紅蓮の涙痕」の感想・レビュー

主人公と折原氷狐の過去の伏線回収篇。インセスト・タブーの話。
主人公と妹は自称有名女優の母から厳しい演劇指導を強制されてきた。
しかし母親は有名女優でも何でもなくただの売れない端役だったのだ。
そのうえ夫は浮気し本当の有名女優の下へ走ってしまう。
それ故、母親は子どもたちを復讐の道具にし世間を見返そうとしたのである。
主人公と妹は虐待を乗り越えるために心を重ねるがいつしか恋情となっていく。
妹は演劇の為に兄への想いを諦めるべく最後に抱かれることを望んだ。

主人公と折原氷狐の兄妹は何故憎しみ合うようになってしまったのか

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  • 母親の虐待・主人公のエゴ・妹の禁忌
    • 【1】主人公一家はもともとが悲劇を孕んでいました。主人公の母親は地方からやってきた夢見る凡人に過ぎず有名女優とは自称であり単なる場末の劇場の端役だったのです。結局男に抱かれて身籠るも、夫は浮気して他の女になびいてしまいます。しかもその相手が有名女優だったため余計にタチが悪く、復讐のため、見返すために子どもたちを一流の役者に育てようと決意したのでした。最初からもう既に歪んでいたのです。母親は碌な指導方法を知らなかったため、主人公と妹を比較する事しか出来ませんでした。そのため自分が良くないと思った方に厳罰を科し虐待の限りを尽くしたのです。それでも主人公と妹にとっては母親が絶対であり耐え忍ぶことしかできませんでした。二人は虐待に耐え抜く為、心を通わせることになり、次第に想いを育んでいきます。
    • 【2】役者として先に成功したのは主人公であり、天才子役として持て囃されるようになります。しかしそれがまぐれ当たりだったことは、これまでの章で既に語られてきたことでありました。一方、妹は演劇なんぞに興味が無かったので、その才能を片鱗を見せることをしないだけでした。たまたま詩の朗読を聞いた主人公はその天賦の才に愕然とし、妹に奮起するよう促すのが転落の始まりでした。これもまたもう既に述べられたことですが、妹が成功を収めると虐待の矛先は主人公に向くようになります。
    • 【3】こうして主人公が妹に対してコンプレックスを持つようになったことは分かりました。では何故お兄ちゃん大好きっ子であった妹が兄を嫌うようになったのでしょうか。これもまた主人公が仕向けたことでした。主人公は妹に対して憎しみや羨望を抱きながらも、その演劇の才能を素晴らしいものだと思っていました。しかし妹はお兄ちゃんのために簡単に演劇の道を捨てようとしたのです。それを聞いた主人公は激怒し、妹に対して自分への愛情など切り捨てて役者として生きる様に願います。妹はお兄ちゃんのためなら何でもしたいのです。兄を嫌いになり芝居のためだけに生きる、そいつは結構!だがしかしその代わりに自分を抱いてほしい、純潔を奪って欲しいという破瓜の欲求を突きつけます。こうして主人公は妹とインセスト・タブーすることになったのでした。
    • 【4】兄と決別し役者街道を驀進する妹でしたが、精神的にはまだまな未熟な少女でもありました。個体性能に依存した演劇は一人芝居となりそれを納得させるためにさらに凄みを増していく。最終的に妹が辿り着いたのは役の死にあわせて自分も死ぬことであり、こうして最高の演劇を作り上げて幕引きとなったのです。死亡した妹が虚構世界に望んだのは兄への愛情と演劇の才能を捨てることでした。この二つがあるから自分は幸せに生きられなかったと思ったからです。こうして虚構世界の謎と共に折原氷狐の存在の謎が回収されたのでした。

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冥契のルペルカリア感想まとめ