体験学習とエンタテイメントと直接手で触れる展示

かつて博物館でやった直接手で触れることのできる展示の体験学習をまとめておく。(所謂ハンズオン展示:実際に手に取ることでできるようにした展示や体験のこと)。五感を使って体験を楽しむことができるようにした工夫した展示である。

一つ目の博物館は考古系(主には旧石器時代)の博物館だった。
黒曜石のカタマリを砕いてある程度成形しておき、それを児童・生徒に配布してナイフ型石器や尖頭器を作るのである。歴史教育を暗記学習としている学校では教科書の用語を追うことが全てであり現実と乖離しがちであるが、実際に自分で作ったナイフ型石器で生肉を切ると何で教科書で色々な石器の名前を覚えさせられるのかを実感できる。他にも尖頭器を竹に取り付けて槍を作り藁に突き刺すとか、土を採取して粘土にしそこから土器を作って焼いて使うところまでやっていた。

二つ目の博物館は歴史民俗系の博物館だった。
地方における歴史民俗博物館の役割はその地方がどのような歴史を経て形成されたのかを体系的に示すことである。学習指導要領の位置づけでは民具体験を主としており、近世農村の民具を扱った。教科書だと江戸時代の社会経済史で農具の発展とかで触れられるところであり、これまた何で農具の名前なんて覚えなきゃなんないんだぜ?となるところだが、実際に千歯こきで脱穀すると後家殺しが実感できるし、コンバインの素晴らしさがよく分かる。子どもたちに田植えと稲刈りを体験させるのだが(水田管理は学芸員と近隣農家がする)、唐棹→千歯こき→コンバインをやると農業の発展を実感できたりする。

三つ目の博物館は、きちんとした登録博物館ではなく博物館類似施設であった。
登録博物館にすると様々な制限を受けるからしないケースも多い。ここには巨大な模型があり、それが象徴として集客の役割を担っていた。この巨大模型を実際に触らせる事で、当時の造船技術技術の一端を知ってもらおうとするものであった。巨大模型であるが故に、艦底の部分しか触ることはできない。これを触りながら1周し、バルバスバウ、ビルジキール、スクリュープロペラ、舵などを体感してもらう。バルバスバウでは船にかかる力などを学習する。船が前に進むとき波が出来て抵抗を受ける(造波抵抗)。これを減らすために艦首を球状にすることで波を打ち消して小さくする。模型とはいえ、この丸身の球状は印象深いものがある。続いて艦首から艦尾へと側面を触っていく。26.3m。アイオワの方が長い。ここで側面のでっぱりを意識させておくことでビルジキールの説明へと移り、船の揺れを防ぐ工夫を紹介する。最後は艦尾のスクリュープロペラ。揚力と推進力を扱う。プロペラが回転すると生じる揚力は羽根の断面を触ってもらうとよく理解できると思う。この揚力が船の進む力として推進力になる。ここまでで半周。あとはもう一度側面を触りつつ26.3m歩き艦首まで戻ってくる。

ただ単に触ってもらい体験するだけでも違うのかも知れないが、それだけではただ体験しただけになりがち。単なるエンタテイメント。学校の教員側が、体験を生かせるよう体系的なカリキュラムを組む必要がある。旧石器時代縄文時代の学習するから石器や土器の体験を行う、近世の社会経済史で農具の発展が均一な自作農を解体していく過程を体感させるために農村民具を扱う等、目的に応じた体験学習にする必要がある。体験するだけの体験だと生徒児童は体験したなぁと思って終わる気がする。体験させるだけで良いという人たちもいる。