雑録

ヘンタイ・プリズン体験版SPLIT 1の感想・レビュー

価値観の多様性。包摂と排除の原理。共同体で異端視されるものが自己の存在証明だとしたら?
主人公が大切にしてきた事は一般社会においては隠すべき部位であり周囲に理解者を得ることは難しかった。
それ故、他者から理解を得ることが主人公にとって生きる全てであり、その結果投獄されてしまう。
厳しい刑務所内の生活の中で、自己の存在理由、人生の実存について省察を深めていく。
ブットンだ刑務所の描写が克明に描かれていてとても面白いのだが……ラストは変な方向へ捻じ曲がる。
更生プロジェクトの一環としてグループ制作をする事になるのだが何故かノベルゲー制作とか言い出す。
これ延期せずに発売されてたら11月はノベルゲー開発するノベルゲーが3本も出ていたってことよね。

社会集団における慣習と規範意識

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  • 唯一無二の普遍性のある価値観など存在しないということ
    • 主人公は現代の日本社会では排斥される価値観を自己の存在理由としていました。しかしそれは他者に理解されるものではありません。その信念を曲げるということは、自分の存在証明に関わること。それ故、どうしても過ちとは認めることが出来ず、その結果10年の懲役に処せられます。送られた刑務所は日本随一の厳しさを誇る所であり、囚人を矯正するために徹底した管理が行われていました。体験版SPILIT1ではこのムショ暮らしが描写されることになり、ラーゲリでの様子はソルジェニーツィンの『収容所群島』や『イワンデニーソヴィチの1日』に通じるものがあり、極限状況の中での人間性の発露がありありと描き出されています。この場面のシナリオ的位置づけは、仲間集めの機能を有しており、様々な理不尽や不条理を解決していくことによって、シャバではぼっちだった少年が様々な囚人と交流を深めていきます。古参囚人からのイジメを盗撮犯の女性と乗り切ることで、反社のボスの知己を得たり仕入れ屋とのコネを手に入れたりします。またイジメグループの一員だった小沢が初めてのリアルでの男友達になったりもします。この小沢は次のイベントである看守との戦いで連れ添うことになり炭鉱任務に配属され石炭発掘の業務に当ります。炭坑イベントでは看守にターゲットにされパワハラに苦しむも、鉱山まで監視として着いて来た看守の危機を救うことで、優良囚人に昇格し困難を乗り切ります。こうした刑務所内での描写だけでも結構面白く読み応えがあります。社会集団における慣習や規範意識は、先天的なものであったり、普遍的であったりすることは無いのです。社会の秩序を維持するために後天的に作られたものに過ぎないのです。
    • こうして刑務所内での生活の様子と仲間集めが終わると、いよいよシナリオは次の展開へと移り変わります。主人公は更生プログラムの一環としてグループ制作をすることになったのでした。一体どんなイベントが待っているのかと楽しみに読み進めていくと、話は思わぬ方向へ転がっていきます。なんとグループ制作ではノベルゲーを作ることになったのです。オイオイ、なぜ刑務所に来てまでノベルゲー作るん?と、いうか2021年11月の新作って『創作彼女』も『延期できない』もノベルゲー開発ものやんけ!とツッコミを入れずにはいられません。もし本作が延期していなかったら、ノベルゲー制作ノベルゲーが3本も出ていたのか……本作の場合、社会から排除される象徴としての創作物という位置づけのメタファーとなるため、一体どのようなノベルゲーが誕生するのかちょっと楽しみでもある。

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