今回の長期巡検ではヘリテージツーリズムの研究の一環として、地方博物館による観光振興及び地域史の啓発と普及を視察してきた。具体的には地域の博物館がどのように訪問客を誘致しているか、自らの地域の歴史をどのように語り継ごうとしているかについて等である。ここでは、各地の博物館を振り返り、総括的な雑感をいくつか記していきたい。
雑感
- 展示のパターンについて 通史かトピックかコアか
- 地方の歴史系博物館の展示パターンとしては、主に通史、トピック、コアの三種類に分けられる。
- 通史は旧石器から時系列順に現代まで展示していくオーソドックスなパターン。淡々としていてつまらないものになってしまう場合もあるが、その地域がどういった経緯で現代の姿になったのかについて、県や市がどのように正当化しているかが分かり、結構面白い。見せたい歴史と捨象した歴史の間を考えることができれば勉強になるかもしれない。
- トピックは、その地域や博物館がウリにしている展示をまず最初にもってきてインパクトを与えるパターン。その博物館が一番何を見せたいのかがよく分かり、キャッチーな方式となっている。しかしながらトピック的な展示の後に、全く関係の無い展示が始まるので、展示のストーリー的に脈絡のないものになってしまいがちである。
- コアは一つのテーマを核として、それに関する内容の展示を見せるパターン。例えば製糸業をコアとするならば、養蚕の歴史や過程、製糸業の工業技術、製糸業で生産された絹織物、製糸業の発展により形成された交通インフラなどなど。ただ情報が散漫になり、見たい展示に辿り着く前に力尽きてしまうというケースもある。
- 地域の歴史と全体的な日本史の間
- 地方博物館の周遊振興とポイントラリー
- 今回の視察では各県1~2か所しか見学できなかったが、群馬県には数日滞在したので、かなりの数の博物館を回ることが出来た。群馬県の場合では、小中校生が夏休み中ということもあってか、ポイントラリーが実施されており、博物館を中心にして周遊を生み出そうとする取り組みを見ることが出来た。このポイントラリーが実際にどのような人の流れを生み出すのかを体験するべく、以下の3つのスタンプラリーに参加した。
- 「群馬の博物館・美術館」マップのポイントラリー
- 群馬県博物館連絡協議会に加盟している75施設が実施しているスタンプラリー。6つの施設でスタンプを押してもらうと記念品がもらえるとのこと。以前は冊子形態だったが、現在のものが全体マップ形式となっている。地図を見てどこに博物館があるのかを眺めるだけでも楽しい。
- 「東国文化ゆかりの地巡り 古代の群馬を探検せよ」
- 群馬県及び群馬歴史文化遺産発掘・活用・発信実行委員会が主催・運営。博物館や遺跡を廻り、設置されている宝箱を探してスタンプを押すという方式。スマフォでも参加でき、その場合はアプリをDLしてクイズに答える形式。私は博物館に置かれているチラシをもらいフツーにスタンプを押して行った。最近はスマホオンリーというものも多いので、紙で参加できるのは正直ありがたい。将来、みんなスマホになっていくんだろーなぁと時代の変遷を感じることこの上ない。また集めるスタンプのキャラクターもばらつきがある。ぐんまちゃんの服装変化ver.など一般的受けしそうなものや、良くわからない動物や埴輪をモチーフとしたキャラ、コンテンツ産業に影響されたアニメ調の漫画的キャラクターなどがあるが、訪問する遺跡や博物館とイマイチ関係がなく、なぜそのキャラを配置しているのかは法則性はないと思われる。もっとその場所ならではのキャラ配置にすれば訪問者も喜ぶと思うのにね。あと、キャラ押しする場合は、それぞれのキャラ特性の掘り下げを行わないと、何のためにそのキャラをデザインしたのかと・・・。
- 「ぐんま古墳カード」
- 令和元年度文化庁文化芸術振興費補助金(地域文化財総合活用推進事業)による実施事業。東は太田、西は安中、南は藤岡、北は北橘までの12箇所を回りフルコンすると「かみつけの里」でカードホルダーをもらえる。カードの種類は2種類のため全24枚あるが、各地域1人1種なので両方の種類を集めるには家族パワーや友人知人に頼るしかない。おそらく最初は「ぐんま古墳カード」で企画していたのであろうが、世界遺産効果で作られた「もず・ふるカード」をパクったデザインを急遽用意したのではないだろうか?私はぐんま古墳カードの方を集めました。カードホルダーに入れて眺めるだけでも楽しいし、「特徴」や「注目ポイント!」の解説文を読むだけでも勉強になる。
ポイントラリー関連