2022年度高等学校『歴史総合』教科書の採択数・占有率

2022年度高校1年生から歴史総合・地理総合が実施される(※高校は学習指導要領が段階導入なので高2・高3は現行のままA・B体制が続く)。「総合・探究」体制は「A・B」体制とは全く異なる内容であり、それがどのように教科書に反映されるのか注目が集まっている。2022年度に発行された『歴史総合』の教科書は全12種類であり、採択数と占有率は以下の通りである。

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2022年度高等学校『歴史総合』教科書の採択数・占有率

(出典:「新課程スタートで総数が4・3%増 ●22年度高校教科書採択状況─文科省まとめ(上)」『内外教育』、2022年02月15日、第6975号)

山川・帝国・東書の3強は『世界史B』の情勢と同様。ただ山川の『歴史総合』が「詳説」系統(採択数1位『歴史総合 近代から現代へ』)と「歴史的思考力」系統(採択数3位『現代の歴史総合 みる・読みとく・考える』)に分岐したところが面白い現象。これまで通り知識重視の詳述系教科書を取るか、主題学習によるグループワークで思考力を鍛えるかで明確に分かれたところが今回の採択の注目ポイントと言える。ただ共通テストに見られるように、入試形態の変化により歴史用語を覚えるだけでは太刀打ちできないことは明らかである。詳述をウリとする『歴史総合 近代から現代へ』は採択数第1位であるものの占有率が2割に過ぎないことが、それを物語っている(まだ2割も詳述を求めているとも言える)。

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『歴史総合』教科書一覧と採択数・占有率

ここでは「総合・探究」体制初年度である歴史総合の「採択数・占有率」順に各教科書の趣旨説明をまとめておくこととする。

1.山川『歴史総合 近代から現代へ』(採択数16万7257冊、占有率21.2%)

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https://new-textbook.yamakawa.co.jp/history/

1-1.キャッチコピー「探究につながる詳しい記述」

  • 探求を前提とした学習に最適
  • 図録や用語集、準拠ノートとの併用でさらに効果的

1-2.著者メッセージ

  • 岸本美緒(きしもとみお) お茶の水女子大学名誉教授
    • 「高校の必修科目として新しく設けられた「歴史総合」とは、近現代を中心に日本史と世界史とを結びつけて学ぶ科目ですが、その具体的な内容はどのようなものになるのか、先生方や高校生の皆さんには、期待とともに一抹の不安もあるかもしれません。本書は、従来の日本史・世界史教科書のスタンダードな記述の安定性や正確性といった長所をできるだけ保持しながら、世界史の大きな脈絡の中で日本 史の展開を理解できるよう、両者を有機的に結びつけることを目指して編集されました。「歴史総合」の新たな特色として「思考力」を重視することが挙げられますが、本書の各部・各節の冒頭や本文の随所に提示された問いは、歴史の流れを把握する助けとなるよう、それぞれ工夫したものです。これらの問いは、性急な解答を求めるものでは必ずしもなく、授業の焦点を明らかにしてメリハリをつけるという意味も持っています。」
    • 「歴史総合の学習は、本書の中だけで完結するものではありません。日ごろ新聞やテレビ、インターネットなど様々なメディアを通じて入ってくる情報を、自分の頭で考えながら生き生きした知識として身につけ、現代の問題を世界史的な視野のもとで深く理解できるようになる――そのような信頼できる大人になることを目指す若い方々にとって、本書がその入口の1つとなることを念願しています。」
  • 鈴木淳(すずきじゅん) 東京大学教授
    • 「歴史総合は、現代的な諸課題につながる近現代の日本と世界の歴史を学びながら、歴史的なものの見方、考え方を身につける科目です。新型コロナウイルスの流行でも改めて確認させられたように、日本と世界はつながって、同じ歴史をつくっています。近現代は世界大戦をはじめ、政治や経済、そして伝染病をも伝えてしまう人々の動きまで、世界が一体化を深めて来た時代です。日本の歴史も世界との関係の中でとらえ、また他の国や地域と対比することで意味がはっきり見えてきます。そのような歴史のとらえ方は、自分たちが何者であるかを理解するとともに、国外の様々な背景を持った人たちを理解する上で重要です。」
    • 「日本史に関して、この教科書では近現代史のあらましを学びますが、世界との関係を重視し、また他の国や地域と対比しやすいかたちでの叙述を試みています。そして、知識を得るだけではなく、なぜそうなったのだろうと問いを立て、自分で歴史的事実の確かさや順序、相互の関連を見きわめ、それに基づいて説明を考える機会を得られるよう工夫しています。そのような学習を通じて、現代的な諸課題の解決の手段として歴史的背景の理解や過去の経験を生かす力をつけ、また見方が違う人とも事実に基づいて話し合うことで、なぜ違うか理解を深めて共存への道を探れることを学んでもらいたいと思います。そして、歴史への関心がより古い時代を含めた探究の学習につながることも期待しています。」

1-3.この教科書の魅力

  • 1.歴史の流れを詳述、信頼できる内容
    • 全体を時系列的に取り扱い、歴史的なできごとの背景や因果関係が理解しやすくなるように論理的な記述を心掛けました。
    • 本文を充実させ、思考・判断・表現のベースとなる知識が得られるようにしています。
  • 2.日本史探究・世界史探究とのつながりを意識
    • 日本史探究・世界史探究の学習へのつながりを意識し、日本史分野・世界史分野の記述量が偏らないよう、バランスに配慮しました。また、日本と世界のつながりを重視した記述としました。
    • 冒頭に「参考資料」として「諸地域世界の形成」を設けています。東アジア、南アジア・東南アジア・西アジア、ヨーロッパの各地域世界ごとの風土や歴史について、見開きで簡潔に解説しています。
  • 3.歴史の着眼点となる問いかけを設定
    • 生徒が着眼点をもって本文を読めるように、節の冒頭や本文の途中に考察をうながす問いを設けました。

1-4.編集ポイント

  • 1.高校での本格的な歴史学習のスタートの前に地域世界ごとの概観がつかめます。
  • 2.身近なところに歴史があることや、史資料にもとづいて歴史が叙述されていることを学びます。
  • 3.「近代化」「国際秩序の変化や大衆化」「グローバル化」という現象を端的に概観しています。
  • 4.問いのきっかけとなる図版・資料とリード文を掲載しています。
  • 5.現代的な諸課題にとりくむきっかけとなる、わかりやすく具体的な資料を選んでいます。

2.帝国『明解 歴史総合』(採択数11万6481冊、占有率14.8%)

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https://www.teikokushoin.co.jp/hs2021/rekishisougou.html

2-1.教科書の特色 「おもしろい! わかりやすい! ためになる!「世界史×日本史」新しい歴史に出会える教科書」

  • 01.世界とその中の日本が捉えられる!
    • 世界史と日本史が融合し,歴史への理解が深まる教科書です。
      • 世界と日本を結び付ける本文記述
      • 世界と日本の動きを一体として理解できる単元構成
      • 前近代史がコンパクトにまとまった巻頭の資料「地域の歩み1~5」
  • 02.生徒が歴史に興味・関心を持てる!
    • 歴史に興味・関心を持てる工夫が満載の教科書です。
    • ビジュアルに捉えられる「生活・文化から見る日本と世界」
    • 身近な視点が生徒の関心を高める「ものから見る歴史」・「人物コラム」
  • 03.アクティブラーニングで学びが深められる!
    • 主体的・対話的で深い学びを実践できる教科書です。
      • 「見通し」と「振り返り」で確かな学力が身に付く部構成・見開き構成
      • 思考力・判断力・表現力を育成する「歴史に迫る!」・「歴史の選択肢」
      • 資料の収集・整理・分析の技能が習得できる「技能を磨く」

2-2.編修の趣旨及び留意点

  • グローバル化や情報化,少子高齢化など急激に変化する現代社会に至る歴史的過程を理解し,平和で民主的な国家及び社会を形成するために必要な資質・能力を育成できる教科書を目指して編修した。特に,現代世界の諸課題が形成された歴史的背景について理解を深め,歴史的な見方・考え方を働かせて多面的・多角的に考察する力を習得することをねらいとした。また,主体的に社会の形成に参画する態度が身に付くよう留意した。

2-3.編修の基本方針

「●教育基本法第2条に示される教育の目標を達成するために,下記のような基本方針に基づいて編修した。」

  • (1)現代の諸課題の歴史的経緯について理解を深め,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う教科書
    • 国際協力の重要性を理解できるよう,2部ではアジアの中の日本の動きや世界の歴史との関わりを,3部では新たな国際秩序の形成や変化の中での日本の動きを,4部では冷戦構造下と冷戦終結後の日本の国際的な立場と役割について丁寧に取り上げた。
    • 現在に至るまでに形成された様々な諸課題について,歴史的経緯を理解できるよう 2 部~4部でコラム「未来へ活かす歴史」を設置した。
    • 当時の人々が直面した課題について,当時の状況を踏まえながらどのような判断をしたのか主体的に考えることができるよう,2~4部でコラム「歴史の選択肢」を設けた。
  • (2)思考力・判断力・表現力を養う教科書
    • 思考力・判断力・表現力を養うことができるよう,学習を見通す「章の学習課題」やページごとの「学習課題」,学習内容を振り返る「確認」「説明」「章のまとめ」などを随所に設けた。
    • 資料から歴史的事象の特徴を考察する力を養うことができるよう,写真や図表,史料の読み解きを促す「読み解き」を随所に設けた。
    • 複数の資料を読み解き,当時の社会が抱えた課題や人々の判断を考察することで,思考・判断を行える特設「歴史に迫る!」を設置した。

2-4.編修上特に意を用いた点や特色

「●グローバル化する国際社会に主体的に参画し,平和で民主的な国家及び社会を形成するために必要な資質・能力を育成できる地理歴史科の教科書となるよう以下の点に配慮した。」

  • 1.現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察することができる教科書
    • 本文の記述は,各部の主題(「近代化」「国際秩序の変化や大衆化」「グローバル化」)の形成や変化が常に意識できるように努めるとともに,そこに起因する現代的な諸課題を意識的に紹介するようにした。
    • コラム「未来へ活かす歴史」を随所に設け,5 つの視点(自由と制限,平等と格差,開発と保全,統合と分化,対立と協調)を中心に,現代的な諸課題を考えるうえで参考にして欲しい事項について紹介した。
    • 各部末の部のまとめに「より深く調べてみよう!」を設け,5 つの視点を活用して,現代的な諸課題の形成について考察することができるようにした。
  • 2.世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉えられる教科書
    • 日本と世界の結び付きを常に意識できるよう,配列や本文の記述を工夫し,日本と世界に関わらず,ヨーロッパとアジアの双方がどのようにお互いに影響を与えたのか,同時代的な動きを意識的に紹介するようにした。
    • コラム「世界の中の日本」を随所に設け,当時の日本が世界とどのように結び付き,相互に影響を与えていたかを理解できるようにした。
    • 日本と世界の文化的なつながりが見える特設「生活・文化から見る日本と世界」を時代ごとに設け,当時の日本の人々の暮らしや社会の様子を通して,日本と世界が相互に影響を与えていたことを理解できるようにした。
    • 本文ページの右端には,巻頭と巻末に設けた日本の年表と対応する印を示し,現在学習しているページが日本のどの時代かわかるようにした。
    • 世界を同時代的に概観する地図を多数掲載し,日本と世界の相互のつながりが理解しやすいようにした。
  • 3.歴史的な見方・考え方を働かせながら考察できる教科書
    • 2~4 部の冒頭の導入ページに「歴史ウォーミングアップ➋」を設け,これから学習する内容に対して,資料を活用して自分の問いを表現することができるようにした。
    • 章の始めには「章扉」を設け,「章の学習課題」を設定するとともに,それに関連する図像資料や文章資料,統計資料などを配置した。現在とのつながりを意識しながら考察することを通して,より具体的な見通しをもって学習に臨めるようにした。
    • 各本文ページに「学習課題」を設け,どのような点に着目して学習を進めていけばよいのかを示すようにした。
    • 各本文ページ末には「確認」と「説明」を設け,各学習課題に対応した知識を習得したり,歴史的な見方・考え方を働かせながら学習内容を説明したりする活動を充実させた。
    • 各章末には,「章のまとめ」を設け,歴史的な見方・考え方を働かせながら,現代的な諸課題の形成につながる視点を持って,学習内容をまとめる活動を充実させた。
    • 各部末の「部のまとめ」には「部を振り返ってみよう」を設け,各部の主題について,自分の考えを歴史的な見方・考え方を働かせながら説明する活動を充実させた。
  • 4.資料の活用や歴史的技能の習得を通して思考力・判断力が育成できる教科書
    • 特設「歴史に迫る!」を設け,学習した内容を踏まえて,複数の資料やさまざまな人の意見を読み解くことで,当時の状況への理解を深めながら,思考力・判断力を育成できる活動を充実させた。
    • コラム「歴史の選択肢」を随所に設け,国内外で議論となった歴史的な出来事を考察することで,当時の人々の考えに立って歴史事象を考察する力を育成できるようにした。
    • 図表や絵画資料,史料を充実させるとともに,読み解きを促す「読み解き」を随所に設け,資料の比較や関連付けなど,資料の活用を通して思考力・判断力が身に付くよう配慮した。
    • 歴史的技能を習得できる特設「技能を磨く」を随所に設けた。1 部 2 章には資料を取り扱う際の着目点・注意点を示す「歴史の特質と資料」を設けるなど,資料活用と読み解く技能を育成するコーナーを充実させた。習得した技能については各ページの「読み解き」や特設「歴史に迫る!」など,随所で活用できるようにした。また,情報をまとめたり表現したりする技能を重視し,「情報の集め方」「情報のまとめ方 意見交換の方法」「レポートや小論文の書き方」などの技能を習得できるようにした。
  • 5.世界史初学者に向けた配慮や中学校との学習の接続を意識した教科書
    • 本文は平易に記述するとともに,巻末には「頻出用語解説」を配し,歴史的概念や経緯の理解が深まるようにした。
    • また,QR コンテンツとして,「一問一答」や「用語解説」などを用意し,基礎基本の定着が図れるようにした。
    • 本書の冒頭には資料ページとして「地域の歩み」を設け,世界各地域の近代までの歴史を学習していない生徒でも,各地域の歴史的な背景が端的に理解できるようにした。
    • 人々の生き様から当時の社会を理解するコラム「人物」や身近なものが日本や世界の歴史に影響を与えたこと紹介するコラム「FILE」を設け,世界史を初めて学ぶ生徒の興味・関心がわくようにした。
    • 2~4 部の導入には,中学校での学習内容を文章と図版で振り返る「歴史ウォーミングアップ➊」を設け,中学校で学習した内容を踏まえて,これから学習する時代の考察ができるようにした。
    • 本文の左ページ下には「中学校との関連」を配し,中学校の歴史的分野で既に学習した項目について一目で確認できるようにした。

3.山川『現代の歴史総合 みる・読みとく・考える』(採択数10万9338冊、占有率13.9%)

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https://new-textbook.yamakawa.co.jp/history/

3-1.キャッチコピー「深める歴史 テーマ・資料・問いで考える」

  • 主体的で深い学びの実現に最適
  • 教科書の豊富な図版とデータ教材との連携が効果的

3-2.著者からのメッセージ

  • 久保文明(くぼふみあき)東京大学教授
    • 「「歴史総合」は、近代・現代を中心に、日本と世界の歴史両方を関連づけて学ぶ新しい科目です。」
    • 「日本に住む若者として日本の最近の歩みを正確に知っておくことの重要性は、改めて指摘するまでもありません。なぜ明治維新や真 珠湾攻撃は起きたのか。どのようにして民主主義が定着し、また繁栄を得たのかなど、知っておくべきことは数多く存在します。」
    • 「同時に日本の歩みは世界の動きと深く結びついています。ペリー来航、日清戦争日露戦争第一次世界大戦第二次世界大戦など、 昭和(世界大)恐慌など、例を挙げればきりがありません。第二次世界大戦終戦後も、占領、冷戦とその終結、2008年の金融危機、最近 の新型肺炎問題など、海外とのつながりをもった事例はほとんど無数に存在します。日本が影響を受けた場合もあれば、日本が影響を 与えた場合もあります。」
    • 「日本人が感じている以上に、日本が海外に様々な形で影響を及ぼしていることがあります。第二次世界大戦終了前までは軍事的な影 響力もありましたが、その後は経済、文化、政治などさまざまな側面で、海外に影響を及ぼしてきました。」
    • 「現代史は、現段階での人間の歴史の到達点です。同時に、歴史は今この瞬間にも作られています。人間は、そして日本は、これまでに何を達成したのか、これからさらに何を実現すべきなのか、 そしてどの方向に歩んでいくべきなのか。本教科書が、皆さんにとって、少しでもこのようなことを考える手がかりになれば幸いです。」
  • 中村尚文(なかむらなおふみ)東京大学教授
    • 「『現代の歴史総合』は、高校生の皆さんに、歴史的思考を身につけていただくための教科書です。」
    • 「歴史的思考とは、歴史的な事象を総合的・俯瞰的にとらえ、ある時代の歴史像を構築することを目指す思考方法です。この目的に接近するためには、一つ一つの史実の歴史的な背景や意義を、時代の全体状況をふまえて把握することが必要となります。歴史的思考は、過去だけでなく、現在の時代状況を的確に把握するためにも有用です。それは、不確実性が増しつつある今を生き抜くために必要なスキルと言い換えることもできます。そして、このスキルを身につけることは、私たちが歴史を学ぶ最大の目的でもあります。」
    • 「歴史総合では、近代・現代に焦点をあて、世界と日本の歴史を密接に関連付けながら学んでいきます。この教科書では個々の歴史的出来事の理解を前提として、その背景や意義を立体的にとらえるための多くの問いをちりばめました。各単元では、世界史と日本史の融合をはかり、世界とその中の日本という視点で、それぞれの時代の全体像をとらえられるようになっています。時代の流れを縦軸、同時代的な国際関係を横軸とする主題学習によって、年表や用語の暗記ではなく、能動的に歴史像を構築する力を身につけていただきたいと考えています。」
    • 「能動的な学びによって獲得した歴史的思考は、私たちに正確な現状認識と、次の一歩を踏み出す勇気をもたらすに違いありません。」

3-3.この教科書の魅力

  • 1.社会の特質や構造を捉える44のテーマ学習
    • 各テーマは4ページまたは6ページからなり、本文は適切な文章量で簡潔にまとめられているため、資料の読みときに多くの授業時間を割り当てられます。
    • 本文は、日本と世界が相互に関連していることを意識できるような記述を心がけました。
    • 導入からまとめまでの流れが分かりやすくレイアウトされ、スムーズに授業を展開できます。
  • 2.深い学び、考える授業の実現
    • 写真・絵画・ポスター・風刺画など直感的に読みとけるバリエーション豊かな資料で授業準備を全面サポートします。
    • さらに内容理解を促す資料として、文字資料・グラフ・新聞記事などを多数揃えました。
    • 充実した地図や、日本と世界を比較できる年表もテーマごとに多数掲載しています。
  • 3.グループワークに最適! 様々な問いを設定
    • テーマの目標となる大きな問いから各資料に付した小さな問いまで、様々な学習活動に沿った問いを設定しています。順番に取り組むことによって、テーマが深く理解できる仕組みになっています。
    • 問いは、適宜選択しグループで取り組んだり、生徒同士で意見交換することを想定しています。主体的・対話的で深い学びを実現します。

3-4.編集ポイント

  • 1.簡潔な本文と、構造的でわかりやすいレイアウトに留意しました。
  • 2.ビジュアルであること、本文はテーマに沿って簡潔であること、日本史と世界史を融合して考えられることを目指しました。
  • 3.「地理総合」や「公共」、「政治・経済」との連携を意識した資料を取り上げました。

4.東書『新選歴史総合』(採択数9万3532冊、占有率11.9%)

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https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/hs/shakai/16593/

4-1.3つの特徴

  • 特長1.基礎・基本からサポート ~これまでの学習を大切に
    • 豊富な写真で,中学校の学びを整理しながら振り返る。
    • 段階的な問いかけで,ひとりひとりが「考える歴史学習」へ。
    • 1時限1見開き。つまずきを防ぎ,自分で理解を深められる。
  • 特徴2.歴史の面白さを,存分に 〜好奇心が学びの原動力
    • 歴史上の人物や歴史・地理・公民につながる知識を,読みやすく。
    • 身近なものや生活・文化を切り口に,興味を誘う特設ページも。
    • それぞれのデバイスから,学習を広げるコンテンツにアクセス。
  • 特徴3.多角的な〈見方・考え方〉を ~新科目を支え,深める
    • 歴史の厚みに触れる重要トピックを,充実の読み物ページで。
    • 近代以前の流れをしっかり押さえ,近現代史の学びを支える。
    • 複数の時代や地域をつなげて,さらに有機的な理解へ。

4-2.編修の基本方針

  • (1)近現代の歴史の大きな変化を捉えさせ,主体的な歴史学習がゆとりをもって展開できる教科書
    • 本文記述では,用語の羅列とならないよう事象の背景や歴史的な位置付けを丁寧にし,世界とその中における日本の近現代の歴史の変化を,大きな枠組みで捉えられるように心がけた。また,内容の精選や平易な表現での叙述に努め,ゆとりを持って歴史の流れを学ぶことができるように心がけた。
    • 各節や各項の冒頭に学習課題の事例を提示することで,問題意識をもって学習に取り組めるようにした。項末には,当該部分の学習内容のポイントとなる事項を押さえるための「チェック」や,既習事項を活用してさらに深い考察へと導く「トライ」を設け,学習者が自主的に学習を広げられるようにした。
    • 近現代史を捉えるために基盤となる内容を概説した「前近代の世界」や,複数の時代や地域にまたがる大きなテーマを扱った「歴史のまなざし」といった特設ページを設け,歴史学習をいっそう広げたり深めたりできるようにした。
  • (2)歴史的な見方や考え方を働かせ,資料を活用して考察する力を培う教科書
    • 各項の冒頭では中心的な資料とともに,当該資料を読み取る際に重要となる内容を記載し,学習者が資料をもとにして近現代史への考察を深められるような構成にした。
    • 本文を補足する注記や用語解説を適切な位置に配置しており,学習者の理解へとつなげている。また,図版や年表は,ポイントを押さえる形で効果的に使用しており,端的でわかりやすい説明や読み取りのために重要となる視点を付した。
    • 「資料からよみとる」では,実践的な形で資料の読み取り方が身に付けられるようにしており,「歴史探究の方法」では主題設定,資料・情報の収集,考察と表現の方法をまとめ,さまざまな場面で活用できるようにした。
  • (3)歴史的事象に関する興味・関心を喚起し,現代社会に主体的に生きる自覚と資質を養う教科書
    • 各章の4節では,現代的な諸課題の形成にかかわる歴史事象を豊富な資料をもとに考察を深めていく構成をとっており,学習者が歴史の当事者としての認識を持ち,よりよい社会の実現に向けた課題の克服に向き合う意欲をはぐくめるようにした。
    • 各時代の人々の生活や文化を扱ったページを設け,それらが現在の生活や文化につながっていることに気付くとともに,各時代を人々が支えてきたことを理解し,学習者も社会の一員として現代および将来の社会形成に主体的に関与する姿勢を養えるようにした。
    • 人物コラムやコラムを適宜設けており,学習者の歴史に対する興味・関心の喚起を促すようにした。また,現代的な諸課題につながるテーマなどを取り上げている「歴史のまなざし」や,身の回りのものの歴史的変遷について記した「暮らしのなかの歴史」といった特設ページを設置し,グローバル化する国際社会を生きていくために求められる,多面的・多角的に歴史を考察する力を身に付けられるようにした。

4-3.編修上特に意を用いた点や特色

  • 1.主体的・対話的で深い学びの実現に向けた内容の充実
    • 科目の導入「歴史と私たち」や各章の1節や4節等,教科書の事例をもとに主題を設定し,その追究や解決のために資料・情報を収集し,自分の考えを文章でまとめて表現したり,意見を交換したりする活動を随所に盛り込み,学習者が主体的・対話的で深い学びに取り組めるように配慮した。
    • 各節や各項の冒頭に学習課題の事例を提示し,当該部分の学習内容でポイントとなる部分を明確にして学習を進められるようにした。項末には,ポイントとなる内容を振り返ったり,さらに深い考察へと展開したりするための問いかけを設け,学習者が自主的に学習を広げられるようにした。
    • 各時代の歴史事象を,豊富な資料で取り上げるとともに,資料を読み取る際の視点も提示しており,資料を活用しながら主体的な探究学習が展開できるようにした。
  • 2.特別支援教育に関わる適切な配慮
    • 教科書全体を通してユニバーサルデザインフォント(UDフォント)を使用し,文字の視認性を高め,読み取りやすさを向上させた。
    • 色覚特性がある生徒にも見分けやすい色を使用するとともに,グラフや地図などでは,凡例をできるだけ使用せずに図中に直接示すようにしたり,読み取りづらい線種を減らしたりした。
  • 3.地理的条件などにも関連付け,現代の諸課題に着目した総合的な考察
    • 各章の内容は,世界とその中の日本を相互的に捉えられるように構成している。
    • 前見返し「世界の自然」や後見返し「現在の世界」では,世界の地形や気候,また各国を示す世界地図を掲載し,地理的条件と関連付けながら近現代史の学習が展開できるようにした。
    • 巻頭口絵等に設けた「歴史の舞台」で世界各地の歴史や生活を豊富な資料で解説するとともに,「前近代の世界」では近代世界の成立へとつながっていく重要なテーマについて概説しており,近現代の歴史を理解するために基盤となる知識を身に付けたうえで学習を進められるようにした。
  • 4.中学校までの学習との連続性にも留意した形での歴史的思考力の育成
    • さまざまな視点のコラムや特設ページを設け,歴史を多面的・多角的に思考・判断・表現する力を養成し,国際社会を主体的に生き抜くための歴史認識の育成を図った。
    • 中学校で学習した前近代の学習内容を年表形式で概観する特設ページを設けたり,各章の扉ページでは年表と写真資料を用いて中学校の学習内容を振り返らせたりするなど,各所で中学校までの学習との連続性を想起させる工夫を施している。
    • 各時代の生活や文化を取り上げたページを中心に,それぞれの時代を生きた人々の取り組みについて取り上げ,こうした動きが現在の生活につながっていることを学習者に実感させるとともに,伝統や文化を次代に保存・継承していく意識を涵養できるようにした。

5.実教『詳述歴史総合』(採択数9万2199冊、占有率11.7%)

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https://www.jikkyo.co.jp/book/detail/22010122

5-1.執筆者より

  • 木畑洋一 東京大学成城大学名誉教授
    • 「本書は18世紀以降の近現代史を、世界の変化と日本の変化の関連に留意しつつ65の単元でわかりやすく論じています。史料を読み解き歴史を考察する力、自分の考えを表現し深めていく力などを育むために、多様な史料や問いの提示、友人との討論のすすめなどを重視しました。各単元を、主として世界史を中心とするもの、主として日本史を中心とするもので構成したことによって、世界史探究や日本史探究をスムーズに接続することができます。」

5-2.コンセプト「探究科目につながる詳細な通史型の学習と「新しい学び」を両立させた教科書」

  • 1.探究科目につながる、詳細な内容と通史型の構成
    • 近現代の通史を学ぶことができる詳細型の教科書です。先生方の専門性を考え、教えやすさを重視した構成になっています。
  • 2.入試で問われる「歴史的思考力」を育成
    • 資料読解特集「ACTIVE」をはじめ、新しい入試で求められる資料読解の基礎的な技能や思考力が身に付くテーマを豊富に用意しました。
  • 3.「新しい学び」をサポート
    • 知識の習得と思考力・判断力・表現力の育成を図り、生徒が主体的に学べるよう、さまざまな問いかけを段階的に設定しています。

5-3.検討の観点と内容の特色

  • (1)内容
    • 近現代の世界史・日本史の基礎・基本的な事項が網羅されている。また,各種の「問い」を活用することで,世界史と日本史を比較・関連づけて考察するなど,「歴史総合」の主旨をふまえた学習への十分な配慮がなされている。また,資料読解特集「Active」では,入試に必要な歴史的思考力を育成でき,特集「STEP UP」では探究科目の内容を見据えた学習も可能になっている。コラムは,本文理解を深めるClose Upのほか,世界と日本の結びつきに注目する「Link 世界と日本」,現代的な問題を考える「Link 歴史と現在」のように「歴史総合」の科目の主旨をふまえたものが充実している。
  • (2)構成・分量   
    • 従来の世界史A・日本史Aの構成を踏襲したオーソドックスな構成になっており,授業を効率よく展開しやすく,探究科目の内容を意識した授業もしやすい。各章扉は,その章で扱う時代・地域を概観できるようになっており,これから何を学んでいくのかイメージをもってから本節に入っていける構成になっている。また,章末や区切りのよいところに資料読解特集「Active」が入っているため,通常授業→習得した知識を活用したアクティブラーニング型授業をリズムよく展開することができる。
  • (3)表記・表現
    • 生徒が一人で読んでも理解できるような,平易で読みやすい文章で記述されている。写真や地図,表など,内容理解を助け,かつ「読み解き」に適した視覚的資料が豊富・適切に配置されている。文字資料も豊富に掲載されており,問い(Check)を活用することで,資料読解の技能や思考力を育成することができる。また,地域別のインデックスは,地域別のタテ学習をする際に便利なツールとなっている。
  • (4)その他
    • 巻頭の「世界史のなかの宗教」ページやINTRODUCTIONページを活用することで,近現代史を理解するうえで不可欠な前近代の知識を無理なくおさえることができる。また,第Ⅰ編と第Ⅱ編のまとめページは,編で学んだことの復習に適した内容になっている。

6.山川『わたしたちの歴史 日本から世界へ』(5万2364冊、占有率6.6%)

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https://new-textbook.yamakawa.co.jp/history/

6-1.キャッチコピー「見開き47テーマ ビジュアルで楽しく学ぶ」

  • 実社会に即した教養として実のある学習に最適
  • 身近なテーマと、巻末の用語解説でわかりやすい

6-2.著者からのメッセージ

  • 長井 伸仁(ながいのぶひと)東京大学准教授
    • 「かつて、「世界史は必ずしも幸福の地盤ではない。幸福な時期とは世界史における空白なページである」と述べた思想家がいました。たしかに、歴史の教科書には「空白なページ」などありませんし、書かれているできごとには戦争、経済危機、さらには疫病など、不幸というほかないことがめだちます。」
    • 「とはいえ、そうした苦難を人類がなんとか乗り越えてきたのも事実であり、歴史の教科書はそのような視点からも読むことができます。危機のときに人々がどのように対応したのか、そこからどのような教訓を得たのか、そして、つぎに同じようなことがおこったときにその教訓を生かせたのかどうか、などが浮かび上がってくるはずです。現実には、解決されないまま課題として残っている問題は数多くあり、誰もが今後、そうした課題になんらかのかたちで向きあう必要があります。この教科書は、そのようなときに過去のできごとを思い出してもらえればと願いながら、執筆しました。事項はしぼりつつも重要なことは網羅し、また思い出しやすい記述になっているはずです。」
    • 「教科書のどのページを開いても様々な人物が登場します。生没年や業績とともに詳しく説明される人から、写真の片隅に写る名もなき人まで、だれもが「歴史上の人物」です。不幸や苦難をもたらした人もいれば、そこに巻き込まれ流されつつも懸命に生きようとした人もいます。歴史の教科書は、そのような有名無名の人々の記録でもあります。」
    • 「今を生きる私たちも、もしかしたらはるか未来の教科書の片隅に写って、思いを馳せられているのかもしれません。そのときでも、教科書に「空白なページ」はないでしょうが、「幸福な時期」がこれから増えていくことを願っています。」
  • 澤野 理(さわのおさむ)神奈川県立逗子高等学校教諭
    • 「私たちの生きている現代の世界は、ある日突然にあらわれたのではありません。過去におきた様々なできごと―それは人によるできごとだけでなく自然の力によるできごともあります―のうえに現代の世界があるのです。歴史を学ぶということは、過去のできごとについて学ぶことを通じて、現代の世界の成り立ちや諸問題をみつめ、未来をよりよい世界とするための道筋を考えることといえるでしょう。歴史総合は、現代の世界とのつながりや影響の強い近代・現代の歴史について、日本の歴史と世界の歴史を同じ科目で学びながら、それぞれのできごとを比べたり、おたがいのつながりや影響を考えたりすることをめざしています。そのためには、単純に歴史用語を暗記するだけではなく、それぞれのできごとについて、「いつ」「どこで」「どのようにして」、そして「なぜ」というような「問い」を自分から発する姿勢をもちながら学習することが重要となります。とはいえ、誰もがいきなり自分なりの「問い」を立てるということは難しいでしょう。この教科書では、高校生のみなさんが様々な「問い」をみずから立てられるようになることをめざしてつくられています。最初は、教科書の問いについて考えるだけで精一杯となるかもしれませんが、学習を進めていくにしたがい、自分なりの「問い」や答えを考えられるようになるでしょう。」
    • 「この教科書での学習を通じて、現代の世界について主体的に考え、そして、よりよい未来のために行動できる人間となるための基礎力を高めてほしいと願っています。」

6-3.この教科書の魅力

  • 1.厳選された見開き2ページ完結の47テーマ
    • "歴史総合を学ぶにあたって、これだけは押さえてほしい!という47テーマ(1テーマは見開き2ページ完結)で構成しています。"
    • テーマを通して本文の分量を統一し、図版などの資料や問いかけの点数を精選しています。2単位で余裕をもった授業展開ができるので、アクティブラーニングなども取り入れやすいです。
    • シンプルな構成と内容で、ご専門ではない先生にも扱いやすい教科書となっています。
  • 2.現場目線の楽しい工夫
    • 各テーマを高校現場で教える先生が執筆し、授業で活用しやすい要素を多く取り上げています。
    • 楽しく学べるやさしい文章を心がけました。地図や写真など図版も大きめに掲載しました。
  • 3.身近な歴史から世界をみる
    • 身近な話題が豊富。学校、給食、映画、野球、SDGsなど、生徒にとって身近に感じられるものを随所に盛り込んでいます。
    • 歴史の流れや出来事のつながりを重視し、平易でわかりやすい記述を心がけました。
    • 巻末の用語解説では生徒にとってなじみが薄いと思われる用語を取り上げて解説しています。

6-4.細かな編集ポイント

  • 1.テーマを通して本文の分量を統一し、図版などの資料や問いかけの点数も精選して、シンプルなレイアウトとしています。
  • 2.これまでの学習を通して、身近な現代の課題の解決を視野に入れて構想できるようにしています。
  • 3.「考えてみよう!」と題した特集ページを7つ設け、本文の内容をよりいっそう深く考察できるよう、重要なテーマを別途叙述しています。
  • 4.巻末の用語解説では生徒にとってなじみが薄いと思われる用語を取り上げて解説しています。

7.実教『歴史総合』(採択数5万996冊、占有率6.5%)

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https://www.jikkyo.co.jp/book/detail/22010222

7-1.執筆者より

  • 日本女子大学名誉教授 成田龍一
    • 「本書は、生徒が興味と感心をもって歴史を学ぶことができるように工夫しました。18世紀からの歴史を学ぶ意味や、「近代化・大衆化・グローバル化」についてもていねいに説明し、生徒が「問い」をつくりだすヒントを随所にちりばめました。中学校で学んできた歴史を基礎に、より多面的・多角的に思考力を深めることが可能になります。そのために、判型をワイド版とし、文字史料や絵画、グラフ、地図など多様性を重視して豊富に掲載しました。」

7-2.コンセプト 探究科目につながる詳細な通史型の学習と「新しい学び」を両立させた教科書

  • 1.コンパクトな構成で多様な指導ができる
    • 限られた授業時間でも、無理なく学習できる見開き2ページ1テーマ構成。本節は42節とコンパクトにし、「新しい学び」に対応できる特別ページを設けました。
  • 2.生徒の興味・関心を高めるビジュアルな紙面構成でわかりやすく学べる
    • 豊富な図版資料とさまざまな問いかけで生徒のやる気を引き出します。
  • 3.「新しい学び」をサポート
    • 生徒が自ら学ぶ意欲をもって歴史的思考力を培うことができるよう、問いかけ、ヒント、
    • 会話例で理解を深める工夫をしています。

7-3.検討の観点と内容の特色

  • (1)内容
    • 本文の理解を助ける絵画や写真・地図・コラムなどが随所に適切に配置され、見やすく理解しやすい。また,各種の「問い」を活用することで,世界史と日本史を比較・関連づけて考察するなど,「歴史総合」の主旨をふまえた学習への十分な配慮がなされている。資料読解特集「アクティブ」では,歴史的思考力を育成でき,特集「歴史のひろば」では生徒の興味・関心を高めるとともに多面的・多角的な学習も可能になっている。コラムは,本文理解を深めるトピックのほか,世界と日本の結びつきに注目する「Link 世界と日本」,現代的な問題を考える「Link 歴史と現在」のように「歴史総合」の科目の主旨をふまえたものが充実している。
  • (2)構成・分量
    • 2単位で歴史総合の学習が一通り終えられるよう、本節が42項目でコンパクトに構成され,通史とテーマ史の両面から多様な授業を展開できる。また,見開きの頁で内容が把握できる配慮がなされ、それぞれに記載されている分量も適切である。各章扉は,その章で扱う時代・地域を概観できるようになっており,これから何を学んでいくのかイメージをもってから本節に入っていける構成になっている。また,章末や区切りのよいところに資料読解特集「アクティブ」が入っているため,通常授業→習得した知識を活用したアクティブラーニング型授業をリズムよく展開することができる。
  • (3)表記・表現
    • 本文は簡潔かつ平易な記述となっている。図表は見やすく、写真も効果的にレイアウトされているなど、紙面の視覚効果が高い。500枚以上の写真と約90枚の地図、さまざまなコラムや特設ページを掲載し、図説なしでも楽しく勉強できるよう工夫がなされている。また,「読み解きのツボ」「ワーク」など写真や図版などを使った問いかけが設定されており、生徒の興味関心を喚起するとともに資料読解の技能や思考力を育成することができる配慮がなされている。見開き左頁下の小年表でその単元で扱う時代を,右頁端の地域別インデックスで学習する地域を確認できるなど,学習に役立つ工夫がなされている。
  • (4)その他
    • 巻頭の「世界史のなかの宗教」ページや「歴史のひろば」①~③を活用することで,近現代史を理解するうえで不可欠な前近代の知識を無理なくおさえることができる。また,第Ⅰ編と第Ⅱ編のまとめページは,編で学んだことの復習に適した内容になっている。

8.第一『高等学校 歴史総合』(採択数3万9020、占有率5.0%)

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https://www.daiichi-g.co.jp/pr/tb/5/52

8-1.編修の基本方針

  • 1.歴史学習の基本となる知識を身につけ,興味・関心をもって学習に取り組めるように配慮した。
    • 学習内容は基本的な事項を中心に精選し,平易で理解しやすい表現を心がけ,理解しにくい内容については注を付して丁寧に解説した。また,枝葉末節にふみこまず,近現代の特色を「近代化」「国際秩序の変化・大衆化」「グローバル化」の3つの変化から理解できるようにした。
    • 本編は見開き完結の紙面構成とし,写真などをダイナミックに掲載することで,学習内容へのイメージをもたせるとともに,生徒が興味・関心をもって学習できるようにした。
  • 2.主体的・対話的で深い学びにつながる学習に配慮した。
    • 本文ページの冒頭に問いを設けることで,生徒に学習の見通しを持たせ,主体的に学習に取り組むことができるようにした。また,本文ページの最後にまとめの問いを設け,学習内容の定着をはかるとともに,より深い理解を促せるようにした。
    • 地図や写真,絵画,風刺画,史料など諸資料を豊富に掲載することで,幅広い知識と教養を身につけさせるとともに,適宜問いを付すことで,生徒が主体性をもって,歴史を多角的に考察できるようにした。
  • 3.多面的・多角的に歴史を学ぶことができるように配慮した。
    • 「テーマ」「モノから学ぶ歴史」「フォーカス」「資料で整理」の4つの特集と,「クローズアップ」,「つながり」,「人物コラム」,「深める」という4種類のコラムを設け,歴史を身近に感じ,現在とのつながりや諸地域のつながり,日本と世界のつながりが実感できるように配慮した。
    • 巻頭に「18 世紀以降の世界の概観」,巻末に「用語解説」を設け,同時代の世界各地のつながり,歴史学習で用いられる用語に関する概念的・体系的知識が学べるようにした。
    • 巻頭特集として「コラム 歴史総合への準備」を設け,中学校までの学習との連続性に留意して,前近代の大まかな内容を扱い,歴史総合本来の近現代学習にスムーズに入れるようにした。
  • 4.持続可能な社会の実現と関連づけながら,歴史を理解することができるように配慮した。
    • 「近代化と現代的な諸課題」「国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題」では,テーマに関連する持続可能な開発目標(SDGs)のロゴを示し,現代の世界が抱える課題と関連づけながら歴史について考察できるようにした。

8-2.編修上特に意を用いた点や特色

  • 1.社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ,主体的・対話的で深い学びを促せるようにした。
    • 本編ページの冒頭に導入の問いかけを設け,生徒が学習の見通しをもてるようにした。また,本編ページの最後にはまとめの問いを設け,生徒自らが学習内容を整理できるようにした。まとめの問いには,社会的事象の歴史的な見方・考え方にかかわるマークを付し,生徒が意識をもって問いを考察できるようにした。
    • 写真や地図などに適宜問いを設け,学習項目への興味・関心を喚起するとともに,生徒が主体性をもって,歴史を多角的に考察できるようにした。
    • 第2部第1章,第2章,第3章の冒頭にそれぞれ「近代化への問い」「国際秩序の変化や大衆化への問い」「グローバル化への問い」を設け,生徒自ら問いを表現し,課題意識をもって学習に臨めるようにした。
    • 第1部末尾の「探究ハンドブック」では,探究活動の進め方や,社会的事象の歴史的な見方・考え方の特徴を紹介し,以後の学習の助けとなるようにした。
    • 特集ページ「資料で整理」では,文字史料や写真,絵画,風刺画,グラフなどを読みときつつ,内容のまとまりごとに歴史を大観できるようにした。
  • 2.歴史の大きな変化に着目し,世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉えられるようにした。
    • 巻頭に 18 世紀以降の世紀ごとの概観をまとめた特集ページを設け,歴史の大きな変化について時代を追って理解できるようにした。
    • 綿や茶・砂糖,石油といった具体的なモノや,多地域間のヒトや文化の交流(移動),交通(船,鉄道),文化,情報通信などに着目した特集ページを設け,身近な日常生活と関連づけながら,広い視野から歴史を理解できるようにした。
    • 特集ページ「フォーカス」では,さまざまな概念をもとに広い視野から歴史を理解できるようにした。
    • コラム「つながり」では,世界とその中の日本における歴史の展開について,世界と日本の歴史の動きの関連にかかわる題材を積極的に取り上げた。
    • 本編ページタイトル下に設けた同時代の日本を示した帯で,日本の時代を確認できるようにした。
  • 3.現代的な諸課題の形成にかかわる近現代の歴史を考察できるようにした。
    • 第2部第1章,第2章の末尾に「近代化と現代的な諸課題」「国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題」を設け,現代的な諸課題の形成にかかわる歴史的な状況を考察できるようにした。
    • 第2部第3章の末尾に「現代的な諸課題の形成と展望」を設け,現代的な諸課題を理解し,その展望などについて考察,構想できるようにした。
  • 4.中学校社会科との関連を重視し,生徒の理解を高められるようにした。
    • 巻頭に設けた「コラム 歴史総合への準備」では,前近代の世界の歴史や,おおまかな日本の歴史をとりあげ,歴史総合で学習する近現代の歴史の前提となる内容を簡潔に理解できるようにした。
  • 5.地理的条件と歴史の関連を重視し,生徒の地理的理解を高められるようにした。
    • 巻頭の①②で世界の自然環境を,巻末の⑤⑥で世界の現勢を取り上げ,地理的条件と関連づけながら歴史を学べるようにした。
    • 本編ページの右端に地域のツメを設け,学習している地域が明確になるようにした。

9.第一『高等学校 新歴史総合過去との対話、つなぐ未来』(採択数2万8694冊、占有率3.6%)

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https://www.daiichi-g.co.jp/pr/tb/5/53

9-1.編修の基本方針

  • 1.歴史学習の基本となる知識を身につけ,歴史学習上の諸課題に取り組めるように配慮した。
    • 本文内容は,全体的に学習内容を厳選し,無理なく消化できるようにした。その際,世界のなかの日本ということを常に意識し,日本の状況を世界とのかかわりのなかで理解できるようにした。また,枝葉末節にふみこまず,近現代の特色を「近代化」「国際秩序の変化・大衆化」「グローバル化」として理解をはかれるようにした。
    • 本文は見やすい見開き構成の紙面とし,本文記述を軸に,注・図版を配して,学習内容を総合的に理解で

きるようにした。

  • 2.歴史を学ぶ意義がわかるように配慮した。
    • 現在私たちが直面する諸問題とのかかわりのなかで,歴史をとらえることができるようにした。現代の諸問題の源流を歴史のなかに見出せるようにし,現在の私たちも歴史のなかにいることを意識させ,歴史の当事者としての意識をもたせられるようにすることを重視し,そこに,歴史を学ぶことの意義や必要性を認識させることができるようにした。
    • 学習においては,近現代の日本および世界における変化や推移などの特色をとらえられるようにした。また,歴史の考察にあたってはさまざまなものが歴史資料となることに気づかせ,実際にみずからがその資料を活用して歴史を考察することができるようにすることに留意した。
  • 3.持続可能な社会へ向けた課題や役割が理解できるように配慮した。
    • 学習の過程においては,単に日本国内のことのみにとどまらず,当時の国際的状況を理解し,そのなかで日本を位置づけて考えられるようにした。現在の日本を形成した歴史的過程を世界史的視点から考察し,日本人としての自覚を養い,国際社会で主体的に生きていくことができるようにした。
    • 「近代化と現代的な諸課題」「国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題」のテーマでは,SDGsの 17 の目標との関連がわかるようにした。
  • 4.主体的・対話的で深い学びにつながる学習に配慮した。
    • 各テーマの冒頭には,テーマの目的を示した問いかけの文章を入れ,学習の指標として位置づけた。また,導入の資料には学習のきっかけとなるような問い(「注目」)を用意し,さらにテーマ内においては,適宜歴史的考察をうながす問い(「見方・考え方」)を設置した。そのほか,テーマのまとめの問い(「整理しよう」),より学習を深められるようにする問い(「深める」)などを設け,生徒の主体性を意識した学習理解をはかるための問いを構築した。
  • 5.幅広い知識を身につけられるように多面的・多角的学習ができるように配慮した。
    • 幅広い歴史学習をおこなうことができるようにするため,特集ページとして,近現代を理解するうえでポイントとなる事柄に焦点をあてた「歴史の糸」,ある人物の目を通して時代・社会背景を理解する「歴史の目」,諸資料から歴史を考察する「資料から読み解く」を取り入れた。そのほか,人物を紹介する「人物クローズアップ」,世相や人々の生活のようすなどを紹介する「エピソード」などのコラムを設け,興味・関心をもって歴史学習に取り組めるようにした。これらの特集やコラムでは,日本および世界に関連するものからバランスよく取り上げた。
    • 巻頭特集として「日本の歩みと世界」をコラムとして設け,近現代に至る前の世界と日本の歴史の流れを概観できるようにした。また,時代の節目ごとに特集「時代の扉」を設け,その時代で扱う内容を年表・写真で概観できるようにした。これらにおいては,中学校との接続を意識し,本文学習の導入として,「歴史総合」本来の近現代学習にスムーズにはいれるようにした。

9-2.編修上特に意を用いた点や特色

  • 1.主体的・対話的で深い学びを実現できるように配慮した。
    • 各テーマには,冒頭に,学習課題としての問いかけの文章を入れ,学習の目的を明確に示した。また,導入の資料には学習のきっかけとなるような問い(「注目」)を用意し,テーマのまとめの問い(「整理しよう」),より学習を深められるようにする問い(「深める」)などを設け,生徒の主体性を意識した学習理解をはかるための問いを構築した。
    • 分野・形式の異なるさまざまな資料を取り上げ,資料と対峙する機会をできるだけ多く与えられるようにした。あえて説明を詳しくせず,みずから考え想像する余地を残した扱い方とした。
  • 2.歴史的見方・考え方を働かせて学習を深められるように配慮した。
    • 各テーマ内においては,適宜,歴史的考察をうながす問い(「見方・考え方」)を設置し,冒頭の学習課題からまとめに至る案内板的役割をもたせ,生徒の主体的考察を手助けするようにした。
  • 3.現代的な諸課題について,近現代の歴史と関連させながら考察を深めることができるように配慮した。
    • 現在に残るさまざまな問題について理解を深められるようにした。現在の諸問題の起点となる部分の記述では,現在とのつながりを理解できるように留意した。また,学習指導要領上の大項目の「近代化と現代的な諸課題」「国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題」では,現在にみられる諸事象から歴史をふりかえりながら考察できるようにした。
  • 4.近現代の学習において「変化」に着目させるように配慮した。
    • 学習指導要領上の大項目の「近代化への問い」「国際秩序の変化と大衆化への問い」「グローバル化への問い」では,これからはじまる学習の導入として位置づけ,項目ごとにさまざまな資料を取り上げ,項目ごとの「変化」に気づかせられるようにした。ここで答えを出すことは求めず,生徒自身が問いを表現できることをねらいとした。
  • 5.近現代の歴史について多面的・多角的学習ができるように配慮した。
    • 「主体的・対話的で深い学び」や現代的諸課題とのかかわりを考察する学習などを成立させられようにするため,本文においては,中学校までに学習した事柄をおさえつつ,高等学校歴史としての扱い方を検討した。その際,世界のなかの日本ということを常に意識し,日本の状況を世界とのかかわりのなかで理解できるようにした。また,枝葉末節にふみこまず,近現代の特色を「近代化」「国際秩序の変化・大衆化」「グローバル化」として理解をはかれるようにした。
    • 時代の節目ごとに特集「時代の扉」を設け,その時代で扱う内容を年表・写真で概観できるようにした。年表においては,中学校での学習事項を確認できるようにした。また,巻頭特集として「日本の歩みと世界」をコラムとして設置し,本文学習の導入として近代以前の日本・世界の歩みを中学校までの学習内容で概観できるようにした。「歴史総合」本来の近現代学習にスムーズにはいれるようにした。
    • 本文において,随所に国際情勢を理解できる地図を設け,学習の手助けとなるようなポイントを絞った簡略な地図も適宜設置した。また,巻頭特集において 18 世紀以降の世界を概観できる地図を設けるなど,地理的条件を含めて総合的に歴史学習を深められるようにした。

10.東書『詳解歴史総合』(採択数2万1087、占有率2.7%)

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https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/hs/shakai/16594/

10-1.3つの特長

  • ここから始まる,新しい「歴史」
    • 世界史と日本史を合わせて,近現代史を大きくつかむ。
      • 用語にとらわれることのない,ダイナミックな歴史記述。
      • 充実したコラムや年表で,歴史の深みと流れをとらえる。
      • 豊富なビジュアル資料とデジタルコンテンツで,立体的なイメージを。
  • 歴史のとらえ方を,高校生に
    • 歴史は,資料から考える。主体的に考える。
      • 段階的な問いかけで,資料を活用しながら歴史を考える。
      • 〈前近代の世界〉〈地域の文化・宗教〉で,歴史理解の前提を網羅。
      • 自分なりの主題を自ら探究していく,具体的な方法を紹介。
  • リアルな今とつながる知識を
    • 今の世界を知るために,歴史を知る。
      • 3つの章の終わりで,歴史の流れと「今の課題」とを結びつけて提示。
      • 世界各地の様々な課題を,〈地域の歴史〉でじっくり解説。
      • 〈歴史のまなざし〉で,世界のトピックを縦横に紹介。

10-2.編修の基本方針

  • (1)近現代の歴史の大きな変化を広い視野で捉えさせ,主体的な歴史学習が展開できる教科書
    • 本文記述では,用語の羅列とならないよう事象の背景や歴史的な位置付けを丁寧にし,世界とその中における日本の近現代の歴史の変化を,大きな枠組みで捉えられるように心がけた。
    • 各節や各項の冒頭に学習課題の事例を提示することで,問題意識をもって学習に取り組めるようにした。項末には,当該部分の学習内容を活用してさらに深い考察へと導く「トライ」を設け,学習者が自主的に学習を広げられるようにした。
    • 近現代史を捉えるために基盤となる内容を概説した「前近代の世界」や,複数の時代や地域にまたがる大きなテーマを扱った「歴史のまなざし」といった特設ページを設け,歴史学習をいっそう広げたり深めたりできるようにした。
  • (2)歴史的な見方や考え方を働かせ,資料を活用して考察する力を培う教科書
    • 各項の冒頭では中心的な資料とともに,当該資料を読み取る際に重要となる内容を記述し,学習者が資料をもとにして近現代史への考察を深められるような構成にした。
    • 理解を深めるための注記や用語・事項解説を設置するとともに,学習内容に興味を深めるための人物コラムやコラムも各所に配置した。図版や年表は,ポイントを押さえる形で効果的に使用しており,端的でわかりやすい説明を付した。
    • 「探究の方法」では主題設定,資料・情報の収集,考察と表現の方法をまとめ,さまざまな場面で活用できるようにした。
  • (3)現代社会に主体的に生きる自覚と資質を養う教科書
    • 各章の4節では,現代的な諸課題の形成にかかわる歴史事象を豊富な資料をもとに考察を深めていく構成をとっており,学習者が歴史の当事者としての認識を持ち,よりよい社会の実現に向けた課題の克服に向き合う意欲をはぐくめるようにした。
    • 各時代の人々の生活や文化を扱ったページを設け,それらが現在の生活や文化につながっていることに気付くとともに,各時代を人々が支えてきたことを理解し,学習者も社会の一員として現代および将来の社会形成に主体的に関与する姿勢を養えるようにした。
    • 現代的な諸課題につながるテーマも幅広く取り上げている「歴史のまなざし」や,世界各地の歴史的な変遷について記した「地域の歴史」といった特設ページを設置しており,グローバル化する国際社会を生きていくために求められる,多面的・多角的に歴史を考察する力を身に付けられるようにした。

10-3.編修上特に意を用いた点や特色

  • 1.主体的・対話的で深い学びの実現に向けた内容の充実
    • 科目の導入「歴史の扉 歴史と私たち」や各章の1節や4節等,教科書の事例をもとに主題を設定し,その追究や解決のために資料・情報を収集し,自分の考えを文章でまとめて表現したり,意見を交換したりする活動を随所に盛り込み,学習者が主体的・対話的で深い学びに取り組めるように配慮した。
    • 各節や各項の冒頭に学習課題の事例を提示し,当該部分の学習内容でポイントとなる部分を明確にして学習を進められるようにした。項末には,当該部分の学習内容を総合的に振り返り,さらに深い考察へと展開するための問いかけを設け,学習者が自主的に学習を広げられるようにした。
    • 各時代の歴史事象を,豊富な資料で取り上げるとともに,資料を読み取る際の視点も提示しており,資料を活用しながら主体的な探究学習が展開できるようにした。
  • 2.特別支援教育に関わる適切な配慮
    • 教科書全体を通してユニバーサルデザインフォント(UDフォント)を使用し,文字の視認性を高め,読み取りやすさを向上させた。
    • 色覚特性がある生徒にも見分けやすい色を使用するとともに,グラフや地図などでは,凡例をできるだけ使用せずに図中に直接示すようにしたり,読み取りづらい線種を減らしたりした。
  • 3.地理的条件などにも関連付け,現代の諸課題に着目した総合的な考察
    • 各章の内容は,世界とその中の日本を相互的に捉えられるように構成している。
    • 前見返し「現在の世界」や後見返し「世界の気候」では各国や気候帯を示す世界地図を掲載し,地理的条件と関連付けながら近現代史の学習が展開できるようにした。
    • 巻頭口絵で世界各地の宗教・文化を豊富な資料で解説するとともに,「前近代の世界」では近代世界の成立へとつながっていく重要なテーマについて概説しており,近現代の歴史を理解するために基盤となる知識を身に付けたうえで学習を進められるようにした。
  • 4.中学校までの学習との連続性にも留意した形での歴史的思考力の育成
    • さまざまな視点のコラムや特設ページを設け,歴史を多面的・多角的に思考・判断・表現する力を養成し,国際社会を主体的に生き抜くための歴史認識の育成を図った。
    • 中学校での学習内容を概観する形で,「前近代の日本と世界のつながり」について振り返る特設ページを設けたり,各章の扉ページでは年表と写真資料を用いて中学校の学習内容を振り返らせたりするなど,各所で中学校までの学習との連続性を想起させる工夫を施している。
    • 各時代の生活や文化を取り上げたページを中心に,それぞれの時代を生きた人々の取り組みについて取り上げ,こうした動きが現在の生活につながっていることを学習者に実感させるとともに,伝統や文化を次代に保存・継承していく意識を涵養できるようにした。

11.清水『私たちの歴史総合』(採択数1万2746冊、占有率1.6%)

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http://www.shimizushoin.com/info_kyo/rekishisougou/index.html

11-1.本書の特色

  • 特色01.精選された問いと資料から探究できる。
    • 問いと資料をメインに据えた斬新な紙面!
    • 歴史的な見方・考え方から課題をとらえ、解決する力を養えます。
    • これからを生きる生徒に必要な歴史学習とは何か。「主体的・対話的で深い学び」をめざし、実現させたい方にお勧めしたい教科書です。
  • 特色02.日本史・世界史の基礎的事項をおさえた簡潔な内容
    • 簡潔な本文で基本的な知識項目や歴史の流れを無理なくつかめます。
    • 日本と世界の近現代の要点・全体像がよくわかる、小中学校から続く歴史学習の総まとめとしても最適な1冊。
  • 特色03.生徒の今・未来に役立てる「私たち」の歴史
    • 日本や身近な地域と関係のあること、現在につながること、日常生活にかかわることを歴史学習の手がかりとして随所に配置。
    • 歴史学習が私たちの暮らし・社会をよりよくするために欠かせないものであることを実感できる教科書です。

11-2.ご挨拶

  • 原田智仁 滋賀大学教育学部特任教授
    • 「歴史総合、それは日本史と世界史の総合をはかる壮大な試みです。若干の不安とともに、期待感もあることでしょう。これまでの日本史や世界史では、いわば教師が水先案内人となって歴史の流れをたどりましたが、歴史総合では個々の生徒が舵取りしながら、近現代の日本と世界を総合する航海をめざします。そのための海図となるのが「教科書」であり、三角定規やコンパスとなるのが「問い」と「資料」です。本教科書では、学習指導要領の趣旨を生かしつつ、生徒の確かな舵取りを支援する問いと資料の設定に細心の注意を払いました。是非手に取ってご覧ください。ボン・ヴォヤージュ!」

11-3.編修上特に意を用いた点や特色

  • 1.資料と問いにもとづき主体的に探究する
    • 写真や文字史料,地図,年表などの多様な資料を豊富に掲載するとともに,それらを活用して思考・判断・表現することを促す問いを随所に配置し,主体的・対話的で深い学びの実現をめざしました。
    • 歴史的な見方・考え方を働かせ,歴史事象を多面的に考察できるよう,資料を精選しました。
    • 大きな紙面で写真や図を読み取りやすくし,生徒自身が資料から新たな発見をしたり,新たな問いを立てたりすることができるようにしました。
  • 2.「今」を考えるための歴史的思考力を培う
    • 身近な事象や現代的な課題にもとづいて歴史を考察することにより,生徒の興味・関心を高め,歴史を学ぶ意義を実感できるよう,問いや資料に工夫をこらしました。
    • コラムページでは現代や高校生にもつながる話題を取り上げ,「今」を歴史的視点から捉え直すとともに,自分も歴史的存在であると気づくことができるようにしました。
  • 3. 歴史学習を生徒のこれからに生かす
    • 公民としての資質を養うため,細かな知識を羅列するのではなく,小・中学校での既習事項や日常生活に根ざした知識を活用しながら思考を深めることに重点をおきました。
    • グローバルな世界を生きる生徒に向けて,従来の日本史・世界史の別なく広く近現代史を捉え,現代世界を構成する歴史や文化について自分事として理解を深めることができるように配慮しました。日本のできごとも世界的な観点から理解できるよう工夫しました。
    • 時間的・空間的に広い視野を身につけながら,主体的・自律的に社会に参画し,身の回りにある課題や社会的な課題を見出し解決に向かう力を育むことをめざしました。

12.明成社『私たちの歴史総合』(採択数4300冊、占有率0.5%)

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https://meiseisha.com/%E7%A7%81%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E7%B7%8F%E5%90%88/

12-1.歴史を学ぶということ

  • 著作者代表 伊藤隆(東京大学名誉教授)
    • 「歴史を学ぶとはどういうことでしょうか。これまでの学校教育で学ぶ歴史は、暗記物がほとんどでした。しかし、それが大きく変わろうとしています。それが今回の「歴史総合」です。ここで、皆さんは歴史を学ぶ意味を、もう一度考えてみてください。歴史を学ぶとは、「自分自身とは何か」を確認することなのです。私たちの多くは日本人です。それは、両親や周囲の人々から日本語を学び、日本人としての生活習慣を学び、また学校教育を受けることによって、日本人となるのです。その一つが学校での歴史教育です。私たちの祖先がどのような生活をし、どのような文化を育み、世界の国々とどういう関わりをもってきたのか、そしてそれが今日に至ったのかというのが歴史です。とくに明治維新以降の日本の歴史には目を見張るものがあります。欧米が世界を植民地支配していた時代にも、その植民地になることなく、欧米と伍する国家をつくり文化を築きました。第二次世界大戦で敗北した後も、めざましい復興を遂げ、今日の繁栄を形づくりました。こうした我々の祖先が、どのように世界で生きてきたのかを知ることが、歴史を学ぶということなのです。『私たちの歴史総合』には、高校生が学ぶ歴史として、数多くの興味関心があることを掲載しています。この教科書をもとに、歴史総合の学習を進められることを望みます。

12-2.特色

  • 1.新しい高等学校学習指導要領の地理歴史科・歴史総合に準拠して、その目的が達成できるよう編集しています。
  • 2.世界史の流れの中で、わが国の近現代史を理解するように構成しています。
  • 3.歴史用語の無味乾燥な羅列ではなく、先人の生きた努力の跡を知り、歴史上の人物が、生き生きと躍動するような歴史を学ぶことができるように工夫しています。
  • 4.見開き2ページに、1時間の学習内容がまとめられています。「第1の問い」から、内容への興味関心を喚起し、「第2の問い」で、生徒自身が考察できるように工夫しています。
  • 5.「歴史View」「コラム」など読み物を多く記載して、歴史の奥行と広がりが伝わるように編集しています。
  • 6.地図、表や史料などの図版を用いて、本文をより理解できるように構成しています。

12-3.編修の基本⽅針

教育基本法第2条に掲げる教育⽬標を達成するために、以下の諸点に意を⽤いた。

  • (1)幅広い知識と教養を⾝に着け、真理を求める態度を養い豊かな情操と道徳⼼を培うため、歴史的な⾒⽅・考え⽅を⾝につけられるよう⼯夫した。具体的には、全編を通じて、歴史を俯瞰的に把握できるよう、編の冒頭に「学ぶにあたって」というリード⽂を掲げる等である。
  • (2)個⼈の価値を尊重して能⼒を伸ばし、創造性を培い、⾃主および⾃律の精神を養い、いかなる職業や⽣活にも歴史的な背景や経緯があり、そこで培われてきた歴史的な意義があることに気付かせるよう意を⽤いた。具体的には、コラムなどの発展的な記述のなかで、多⾯的・多⾓的な視点から⼈物や事項を掘り下げて記述した等である。
  • (3)全体を通じて、正義と責任、男⼥の本質的な平等、⾃他の敬愛と協⼒を重んじ、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養えるよう、意を⽤いた。具体的には、歴史 View など発展的な記述中の「来⽇外国⼈が⾒た⽇本⼈像」「佐野常⺠と⽇本⾚⼗字社」「板東俘虜収容所と「第九」」「ポーランド孤児を救出した⽇本⼈」などである。
  • (4)⽣命を尊び、⾃然を⼤切にし、環境の保全に寄与する態度を養えるよう意を⽤いた。具体的には、近代化と現代的な諸課題の例⽰「明治期における森林の活⽤と植林」などである。
  • (5)伝統と⽂化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷⼟を愛する態度を養い、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養えるよう、意を⽤いた。具体的には、歴史 View など発展的な記述において、他国との⽂化交流のなかで新しい価値を⽣み出した事例「浮世絵とジャポニズム」「⽇本美術を救ったフェノロサと岡倉天⼼」「捕鯨と⽇本⼈」などである。

12-4.編修上特に意を⽤いた点や特⾊

  • (1) 平成30年3⽉改訂の⾼等学校学習指導要領により再編された地理歴史科の必履修科⽬である「歴史総合」の性格を踏まえ、その⽬的を達成するために学習指導要領に定められた趣旨に忠実な編修をめざした。特に、主体的・対話的で深い学びを実現するために配慮した。全体を通じて、⽣涯にわたって探究を深める未来の担い⼿を育てるために、社会事象の歴史的な⾒⽅・考え⽅を⾝につけ、歴史の⼤きな変化を⾒据えて現代的な諸課題に取り組み、近現代の歴史を俯瞰して⽣徒みずからが⽣きる歴史の位置を⾒定め、地に⾜の着いた思考⼒・判断⼒・表現⼒を⾝につけられるよう留意した。
  • (2)「歴史総合」が必履修の基礎教科であることに鑑みて、⽣徒が学びやすいように、⼀つの項⽬を⾒開き完結として、わかりやすくすることで⽣徒の学習における便宜を図るよう⼼掛けた。正確な表現、平易で分かりやすい表現となるよう意を⽤いた。
  • (3)各⾒開き冒頭には、これから学習する内容に関する「第1の問い」を設け、問題意識をもって授業に向かえるようにし、⾒開き末尾にも「第 2 の問い」を設け、次の学びにつながるように考慮した。
  • (4) 写真や地図などの図版を豊富に組み込むことで、視覚的にも訴える紙⾯構成にして、⽣徒に興味・関⼼を持ちやすいようにした。
  • (5) 多様な視点から学習を深めてもらうため、「コラム」や「歴史 View」を多く組み込み、⽣徒の興味・関⼼をさらに広げ、⾼められるように⼯夫した。
  • (6) ⼈物を様々な形で多く取り上げ、⽣徒が、⼈物を通して歴史の学びを体験できるよう配慮した。特に歴史 View では⼈物にスポットをあてるテーマも取り扱い、より深く学べるようにした。
  • (7)「⽣徒⼀⼈⼀⼈が⽣涯に渡って探求を深める未来の創り⼿」になることを⽬標に、⽣徒の⾔語活動を充実させるため、「問い」や「現代の諸課題」のテーマの学びから、興味・関⼼を持ち気づきや問いを持てるように留意した。さらにそこから進んで学び、探究していくきっかけができるように、「現代の諸課題」には参考になるようなテーマを挙げた。課題探究の進め⽅を掲載し、学びの⼿助けになるよう設定した。末尾に史料批判などの史料の取り扱い⽅の解説を掲載した。