2022年度高等学校『地理総合』教科書の採択数・占有率

2022年度新高1から地理歴史科の科目編成は大きく変わり『歴史総合』と『地理総合』が必修となる(現行のA・B体制では世界史が必修で地理or日本史の選択必修)。すなわち従来は世界史を履修した後、理系は地理、文系は日本史で分岐するというパターンが多かった(勿論学校によっては3科目やる所もあるし、文系地理や理系日本史で履修できるところもある)。

A・B体制で問題とされていたのは地理教育の軽視。地理を選択する多くの人は理系であり、その中から受験科目として地理を育てるのは国立理系の人たちのみ(センター/共テレベル程度の地理)。さらに国立理系は公民で受験することも可能なため、地理は選択必修を満たすためだけの科目になりがちだったのである。文系で地理を選択し、二次・私大レベルまで育てるというのは本当に限られた一握りの人間だけだったのだ。また内容構成原理の問題として系統地理の自然地理・人文地理は大分毛色が異なる内容であるというのも指摘される。

上記のように地理教育が軽視されてきた状態の中から『地理総合』が必修化され、全高校生が地理を学ぶようになった。これは一大画期的事項であるといえる。では『地理総合』の教科書の採択数・占有率はどうなったかというと、帝国書院(『高等学校 新地理総合』)の圧勝であり1種類のみにもかかわらず数にして34万7,868冊、シェア率にして56.4%を誇っている。

f:id:r20115:20220309202006j:plain
2022年度高等学校『地理総合』教科書の採択数・占有率

(出典:「新課程スタートで総数が4・3%増 ●22年度高校教科書採択状況─文科省まとめ(上)」『内外教育』、2022年02月15日、第6975号)

f:id:r20115:20220309205216j:plain
『地理総合』教科書一覧と採択数・占有率

ここでは占有率順に、各教科書会社による『地理総合』の趣旨説明をまとめておくこととする。

1.帝国『高等学校 新地理総合』347,868冊、占有率56.4%

f:id:r20115:20220309202857j:plain:h300
https://www.teikokushoin.co.jp/hs2021/shinchirisougou.html

1-1.特色一覧

  • 総合的な特色
    • 豊富な写真や図表と因果関係がわかる本文を通して,地理的な見方・考え方を働かせた学習ができる。
    • 最新の具体事例を数多く扱うことで興味関心を高め,理解を深める工夫がなされている。
    • 世界各地の生活文化の特色や現代世界が抱える諸課題を学ぶことで異文化理解につながる教科書になっている。
  • 内容
    • 第1部第1章「地図と地理情報システム」では,地図やGISの活用といった基礎的・基本的な地理的技能を習得できるよう,特設「SKILL」が設けられている。
    • 第1部第2章「結び付きを深める現代世界」では,国と国との結び付きや地域的な枠組みについての理解が深まるよう,具体事例をもとに学習できるようになっている。また,交通・通信や観光などに関して,グローバル化が進む世界の様子が多様な写真や地図,グラフなどで示されている。
    • 第2部第1章「生活文化の多様性と国際理解」では,世界各地の生活文化の特色を捉える上で,学習効果の高い写真・図版や具体事例が数多く扱われており,生徒の興味関心を高める工夫がなされている。また最新の内容で,地域の「今」の姿が捉えられるようになっている。
    • 第2部第2章「地球的課題と国際協力」では,持続可能な社会の形成に参画する態度を養うことができるよう,地球環境問題や資源・エネルギー問題,食料問題など,現代世界が抱える課題について具体的な事例が数多く取り上げられている。
    • 第3部第1章「自然環境と防災」では,災害発生のメカニズムや特徴から具体事例による防災対策まで総合的に学ぶことができ,災害発生時に生徒自身がとるべき行動を能動的に考えることができるようになっている。
    • 第3部第2章「生活圏の調査と地域の展望」では,自ら発見した疑問や課題を多面的・多角的な視野から考察する態度を養うことができるよう,調査テーマの設定方法や現地調査の手順,発表方法が具体的なレポートとともに提示されている。
  • 構成・分量
    • 学習指導要領に合わせて,重要事項が適切かつ丁寧に解説されている。また,発展的な内容も学習できるように側注欄の解説や資料,特設コーナーが充実している。
    • 原則,1時限1見開き構成となっているので,分量が適量で学習計画を立てやすくなっている。
    • 学習課題→導入資料→展開→確認・深い学びと学習の流れが整理されているため,効果的に学習できるようになっている。
    • 特設「SKILL」では,地理学習に欠かせない重要な地理的技能が習得できるようになっている。

1-2.編修の趣旨及び留意点

グローバル化や情報化,少子高齢化など,急激な社会の変化を地理的な視点でとらえながら,平和で民主的な国家及び社会を形成するために必要な資質・能力を育成できる教科書を目指して編修した。特に現代世界における地理的認識を深めながら,地理的技能や地理的見方・考え方を習得することをねらいとした。また,主体的に社会の形成に参画する態度が身に付くよう留意した。

1-3.編修の基本方針

教育基本法第2条に示される教育の目標を達成するために,下記のような基本方針に基づいて編修した。

  • (1)世界各地に興味関心をもち,現代世界が抱える諸課題の解決に向けて主体的に取り組む態度を養う教科書
    • 世界各地への興味関心を高められるよう,第 2 部第 1 章では各地の地理的環境や人々の生活文化にどのような特色があり,どのように形成されてきたのかが理解できるよう構成を工夫した。その上で,第 2部第 2 章では,様々な地球的課題について具体的な事例を通して学習できるようにした。
    • 国際協力の重要性を理解できるよう,諸課題の解決に向けた日本の国際協力の事例を数多く取り上げた。
    • 生徒が主体的に解決策を考えて実践する態度を養うことができるよう,持続可能な社会づくりに向けて自分たちができることを考えるための特設「持続可能な社会づくりに向けて」を設けた。
  • (2)思考力・判断力・表現力を養う教科書
    • 思考力・判断力・表現力を養うことができるよう,学習を見通す「節の主題」や「学習課題」,学習内容を振り返る「確認」「深い学び」「節のまとめ」などを随所に設けた。
    • 写真や図表から地理的・地域的特色を考察する力を養うことができるよう,写真や図表の読み解きを促す「読み解き」を随所に設けた。

1-4.編修上特に意を用いた点や特色

グローバル化する国際社会に主体的に参画するために必要な資質・能力,平和で民主的な国家及び社会を形成するために必要な資質・能力を育成できる教科書となるよう以下の点に配慮した。

  • 1.日本や世界の諸地域の多様な生活文化を尊重することの大切さを学べる教科書
    • 第2部第1章では,地形や気候,言語・宗教,歴史的背景,産業と人々の生活の関わりを取り上げるとともに,事例を選択して学習できる「追究事例」を設置し,世界各地の多様な生活文化への理解を深められるようにした。「追究事例」については,世界の様々な地域の事例を数多く取り上げ,生徒自身の生活圏の課題などを踏まえながら,ふさわしい事例を学習できるよう配慮した。
    • 世界的な視野からみた日本の特徴を理解できるよう,コラム「世界の中の日本」を随所に設けた。
  • 2.持続可能な社会づくりに参画する態度を養う教科書
    • 第2部第2章では,地球的課題に対する世界の現状をとらえるとともに,持続可能な社会づくりに向けて自分たちができることを考えるための特設「持続可能な社会づくりに向けて」を設けた。SDGs と結び付く内容にすることで,生徒が様々な課題を身近なものとしてとらえられるよう配慮した。
    • 第3部第1章では,コラム「今も生きる先人の知恵」を随所に設け,持続可能な社会をつくるための見方や考え方が,昔からの日本人の生活のなかにもみられることを理解できるようにした。
    • 第3部第2章では,生徒自身が生活圏にみられる課題を解決できるよう,調査方法を丁寧に解説した。
  • 3.地理的な見方・考え方を働かせながら考察できる教科書
    • 各章や節の冒頭では,「場所」「人間と自然の関わり」など,着目すべき視点を踏まえた主題を設定し,地理的な見方・考え方を働かせながら学習できるよう配慮した。
    • 各項(見開き)には「学習課題」を設定し,どのような点に着目して学習を進めていけばよいのかがわかりやすくした。
    • 各節末には「節のまとめ」,各項末には「確認」と「深い学び」のコーナーを設け,地理的な見方・考え方を働かせながら学習内容をまとめたり,説明したりする活動を充実させた。
  • 4.資料の活用を通して思考力・判断力が育成できる教科書
    • 図表や写真を充実させるとともに,読み解きを促す「読み解き」を随所に設け,資料の比較や関連付けなど,資料の活用を通して思考力・判断力が身に付くよう配慮した。
    • 地図帳の活用を促す「地図帳」のコーナーを随所に設けた。
  • 5.地理的技能を習得できる教科書
    • 地理的技能を習得する特設「SKILL」を随所に設けた。特に地図や地理情報システムに関わる技能を充実させ,習得した技能については第3部第1章など,随所で活用できるようにした。
    • 情報をまとめたり表現したりする技能を重視し,「白地図による地域の特徴のまとめ方」「関係図によるまとめ方」「災害発生時の行動計画の作成」などの技能を習得できるようにした。
  • 6.現代世界の地理的認識を深められる教科書
    • 本文は平易に記述するとともに,随所に本文を補完する「用語解説」を配し,理解が深まるようにした。
    • 世界全体や州,国,都市など,様々なスケールで各地の生活文化や地球的課題を考察できるようにした。
    • 脚注には「Key Words」を配し,重要な学習項目が何かを一目で確認できるようにした。

2.東書『地理総合』108,200冊、占有率17.5%

f:id:r20115:20220309202900j:plain:h300
https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/hs/shakai/16597/

2-1.3つの特徴

  • 特徴1 新課程は,これで安心 ~基本事項をすっきり網羅
    • 本文は,〈問い〉を軸とした50項目で完結。
    • GIS〉の演習にピッタリの,身近な題材と解説動画。
    • 基礎知識の〈まとめ〉と〈評価問題例〉を,教科書内にご用意。
  • 特徴2 多様なニーズに対応 〜生徒の今と未来を応援
    • 豊富な〈活動用教材〉で,将来の仕事シーンが立体的に見えてくる。
    • 「地理探究」や大学受験を意識した〈発展〉と〈総合問題〉。
    • スマホを使って,教室でも家でも〈ICT活用〉できるDマークコンテンツ。
  • 特長3
    • リアルな今がある 〜教室が世界に直結
    • 地域のさまざまなトピックを扱う〈GLOBAL REPORT〉。
    • 身近な〈商業〉・〈情報産業〉から〈難民問題〉まで。現代の諸課題をキャッチ。
    • 実践につながる〈防災教育〉で,命を守る知識をわかりやすく。

2-2.編修の基本方針

  • (1)高校生が主体的な学習を展開できる教科書
    • 高校生にとって身近な話題や具体的な事象を取り上げて興味を引き,本文記述は内容の精選や平易な表現での叙述に努めたほか,側注欄や巻末の「用語解説」で用語の意味を簡潔に説明し,生徒が主体的に教科書を読み進められるようにした。
    • 各項の冒頭に学習課題を提示し,興味・関心や問題意識をもって学習に取り組めるようにした。項末には,当該部分の学習内容のポイントとなる事項を押さえるための「チェックA」および「チェックB」を設け,学習者が自主的に学習を広げられるようにした。
    • 章末には学習事項の「まとめ」を掲載し,自宅での復習を行いやすくした。
    • 章の冒頭では学習への動機付けを目的とした「WARM UP」,章末には学習事項を活用してプレゼンテーションなどを行うことを想定した「TRY」を設け,生徒が主体的に学習する場面を多く設けた。
    • 興味をもったテーマの学習を主体的に深めたり広げたりできるよう,本文ページの学習内容に関連して,内容を深める「発展」や,幅広い地域の話題に触れる「GLOBAL REPORT」などの特設ページを随所に設けた。また,巻末には,地理に関連する実験を紹介する「ジオ・ラボ」を掲載しており,中学校理科の既習事項と関連づけて地理の学習内容に慣れ親しめるようにした。
  • (2)地理的な技能を磨き,資料を活用して考察する力を培う教科書
    • 地図やグラフなどの資料を読み取って活用できるように,基礎的・基本的な技能を身につける「SKILLUP」を設けた。
    • 「SKILL UP」の中で「Web GISを使ってみよう」と題したものでは,例題と解答の手順を示し,GISを使った学習の最初のハードルが低くなるようにした。
    • 本文ページの資料には,読み取りのポイントを示した「読み取ろう」を付し,資料を活用した考察の手がかりとなるように工夫した。
    • ほぼすべての見開きに地図を掲載し,さまざまな種類の地図の読み取りを反復して行えるようにした。
    • 資料の読み取りに関して生徒が自ら演習を行えるように,「章末確認テスト」では資料の読み取りを伴う問題を含むようにした。
  • (3)教室での学習を現代社会での生活や地球的課題とつなげる教科書
    • 地理の学習が教室にとどまるものではなく,現代生活のさまざまな場面につながっていることや地球的課題を読み解く視点となることが伝わるように,本文ページや「GLOBAL REPORT」では高校生にとって身近なテーマや,ニュース等で話題になっている事項を積極的に取り上げている。
    • 「WARM UP」と「TRY」では,おもに卒業後の仕事中の場面という設定で課題を設けており,将来の仕事にも地理の学習が生きるということを間接的に伝え,学習の意欲が向上するように工夫している。
    • 地球的課題を取り上げる単元では,国際機関や民間企業,NGOなどのさまざまな立場から地球的課題の解決に取り組む人のインタビューである「国際協力の最前線」を設け,人の顔が見えることで学習内容をより現実的なものとして捉えられるようにした。また,キャリア教育にも資するように,進路選択の動機についても取り上げたコラムの拡大版をウェブページに掲載する。
    • 防災について学ぶ単元の末尾には「防災アクション」という特設ページを設け,自然災害への備えや,発災時の心がけ,避難生活での工夫などについてイラストを交えて具体的に示しており,地理の学習を生かした防災への取り組みを実践できるようにした。

2-3.編修上特に意を用いた点や特色

  • (1)主体的・対話的で深い学びの実現に向けた内容の充実
    • 各項の冒頭に学習課題を提示し,当該部分の学習内容でポイントとなる部分を明確にして学習を進められるようにした。項末には,ポイントとなる用語を振り返ったり,因果関係を整理したりするための問いかけ「チェックA」および「チェックB」を設け,学習者が自主的に学習を広げられるようにした。
    • 章の導入・末尾には,社会生活の中の場面を設定した活動である「WARM UP」と「TRY」を配置し,学習のための課題ではなく,現実味のある課題を解決する活動を用意し。生徒の学びに向かう力を育てられるようにした。
  • (2)特別支援教育に関わる適切な配慮
    • 資料の掲載部分を,文字などの読み取りに支障のない地色を敷いて区別することで,紙面の構造を明確化し,特別支援教育の観点での学習のしやすさを向上させた。
    • 教科書全体を通してユニバーサルデザインフォント(UDフォント)を使用し,文字の視認性を高め,読み取りやすさを向上させた。
    • 色覚特性がある生徒にも見分けやすい色を使用するとともに,グラフや地図などでは,凡例をできるだけ使用せずに図中に直接示すようにしたり,読み取りづらい破線や点線を極力減らしたりした。
  • (3)歴史的背景と関連づけ,地球的課題に対する総合的な考察
    • 本文ページの左下のミニコラム「つぶやき」では歴史に関連したトピックを豊富に掲載し,歴史総合などでの学習事項と関連づけて指導できるようにした。
    • 地域のトピックを取り上げた「GLOBAL REPORT」では,アメリカ合衆国やオーストラリアにおける移民の歴史や,西アジアの農耕文化,インカ文明の栄えたアンデス高地の生活文化など,歴史との関連を図りやすい題材を数多く取り上げている。
    • 民族問題など,地球的課題を取り扱う単元でも歴史的背景について丁寧に記述しており,現代の地球的課題を多面的・多角的に考察できるようにした。
  • (4)地図や地理情報システムなどを用いる技能の育成
    • 地理の基礎的・基本的な技能を身につける「SKILL UP」を設け,地図を読み取る技能を育てるほか,表現したいテーマや統計資料に合わせて地図の種類を選択する技能を育てるようにした。
    • 地理情報システム(GIS)については,第1編第2章において「Web GISを使ってみよう」と題した「SKILL UP」を設け,まずはGISに慣れ親しめるように丁寧に操作方法を説明している。
    • GISをその後の地理の学習に活用できるよう,教科書上において,「地理院地図」で表示した3Dイメージや色別標高図の例や,「重ねるハザードマップ」を活用した例を積極的に掲載している。

3.二宮『地理総合 世界に学び地域へつなぐ』58,845冊、占有率9.5%

f:id:r20115:20220309202903j:plain:h300
https://www.ninomiyashoten.co.jp/item/978-4-8176-0451-4

3-1.概要

教科書「地理総合」(地総704)は,基礎から大学入試まで対応し,国際理解などで「地理A」との互換性を保ちつつ,新科目の趣旨を踏まえて主題学習を行うことができるできる教科書です。

3-2.著者からのメッセージ

  • 菊地 俊夫 東京都立大学名誉教授
    • 地理総合では,地域の自然環境や歴史・文化環境や社会・経済環境を理解し,それらの環境条件を総合して考察して,個々の地域の性格を明らかにするとともに,地域を比較する方法も学びます。とりわけ,地域の生活文化に焦点をあて,対象となる生活文化の特徴が,自然環境や歴史・文化環境,および社会・経済環境から理解できるようになっています。そのため,本書は事例対象の選択や地域を総合的にみるユニークな視点,および地域を比較する体系的な方法や歴史の学びとの関連など多くの点で工夫され,教えやすい教科書となっています。そうはいうものの,地域の生活文化の性格は自然環境や経済環境など,1つの環境条件で短絡的に決まるものではないため,地域の生活文化の性格を複眼視して学ぶことは難しいといえます。しかし,その難しさゆえに地理総合には面白さもあります。生徒は地理総合を通じて地域の自然環境や歴史・文化環境や社会・経済環境を理解し,それらをジグソーパズルのピースのように埋め込んで,地域の性格という絵を完成させていくことでしょう。そのような絵を完成させることこそが生徒にとっての地理総合の学びとなることでしょう。
  • 田中 隆志 群馬県立藤岡中央高等学校教諭
    • 地理総合では,紙地図や地理院地図などのさまざまなGIS を軸に,現代世界や国内諸地域,生活圏の様々な地理的事象について学習していきます。地理を学ぶ皆さんには,この機会に,地図やGIS を通して,様々な地理的事象や諸課題について,主体的に情報を収集し,読み取り,まとめ,考察する,地理的な見方・考え方を身に付けてほしいと思います。きっとそれは将来,よりよい社会を切り拓いていくための有効な力となるはずです。
  • 中村 洋介 公文国際学園中等部・高等部教諭
    • 気候変動,格差,自然災害の増加…。SDGs では私たちの変容と行動が求められています。本書の豊富な主題図・グラフ・写真を根拠にして,たとえば,森林が減少している地域を探し,減少の理由を考え,「自分ごと」として解決に向けた変容を協議していく。課題解決とともに,国際理解のページでは,イントロの疑問をもとに,世界各地にみられる自然環境と人間社会のつながりや事象の背景をとらえ,多様性の理解とともに疑問を解き明かしていく。このような授業をイメージしています。

3-3.教科書の特徴

  • 1.基礎から大学入試まで対応
    • これまでの「地理A」との互換性を保ちつつ,新科目「地理総合」の趣旨を踏まえた主題学習が行えるように配慮しました。
    • 「地理探究」の基礎となる知識を過不足なく取り上げており,大学入試共通テスト対策としても最適です。
  • 2.4つの視点から学ぶ世界10の地域
    • 第3章「世界各地の生活文化」では,世界10地域を「自然」「社会」「経済」「開発」の4つの視点に分けて取り上げました。
    • 4つの視点からそれぞれ必要な事例地域を選ぶことにより,学校の特性に応じた多様な教え方に対応することができます。
  • 3.思考力・判断力・表現力を養う題材
    • 1授業時(見開き)ごとの学習事項を明確にするとともに,自ら探究学習を行うための特設ページ「ステップアップ」を設けました。
    • SDGs(持続可能な開発目標)に対応した課題を中心に,その背景から解決のための対策まで,思考する力を養います。
    • 地理学習を進めていくのに必要な地図・GISの技能が段階的に習得でき,地図や統計を正しく解釈し,判断する力・表現する力を養います。

3-4.細かな編集ポイント

  • 1.基礎的な知識を過不足なく掲載しており,地理探究につながる実力が身につきます。
  • 2.デジタルの地理院地図と,アナログの地形図の両方を活用できる力を身につけます。
  • 3.思考・判断の材料となる主題図・グラフをもとに,課題の現状に鋭く迫ります。
  • 4.「日本の自然環境と防災」では,地域により異なる災害リスクに対応した事例を取り上げました。
  • 5.GISでの主題図作りや現地調査をもとに,地域調査の成果を街づくりにつなげる表現力を養います。

4.二宮『わたしたちの地理総合 世界から日本へ』49,137冊、占有率8.0%

f:id:r20115:20220309202907j:plain:h300
https://www.ninomiyashoten.co.jp/item/978-4-8176-0452-1

4-1.概要

教科書「わたしたちの地理総合」は、全66テーマによる主題学習を軸に据えた展開で、生徒の主体的な学習を促す多彩なアクティビティを設定した教科書です。

4-2.著者からのメッセージ

  • 井田 仁康(いだよしやす)筑波大学
    • どのように教科書は変わったのか?―未来志向の地理をめざして
      • 必履修化された「地理総合」には,自らが課題を見いだし解決していく力が求められています。そのため,本教科書では生徒の課題意識を高めるために,疑問形にした課題を見出しとしています。課題には知識として習得すべきもの,考察するプロセスを問うもの,そして地球的課題として結論が出ない,議論し続けていくものなどがあります。「地理総合」で扱う地球的課題や国際協力,生活圏での防災をはじめとする地域的課題は,必ずしも一つの解答があるわけではなく,地域の特徴に応じて臨機応変に対応することが求められます。そのためには地理としての基礎的な知識,その知識を活用し地理的に考察(思考)していくプロセス,そのプロセスを通して地球的課題や地域的課題に取り組む,といった一連の資質・能力の育成が必要不可欠です。本教科書では,そうした一連の課題を提示しながら学習できるように工夫しました。
      • 地理の学習は,従来の知識習得を主としたものから,前述のような知識を活用し,社会的事象の地理的見方・考え方(思考力)を働かせて,地球的課題や地域的課題に取り組み,持続可能な社会,地球を構築する能力を養うというものに変わってきました。換言すれば,現状理解の地理から未来志向への地理となってきたのです。本教科書は,知識の習得も大事にし,しっかりとした知識を踏まえた未来志向の地理をめざしています。
  • 長谷川 直子(はせがわ なおこ)お茶の水女子大学
    • なぜすべての高校生が地理総合で地域調査や防災を学ぶ必要があるのか?
      • 現代社会は,その変化が急かつ大きく,将来を見通すことが難しい時代であるといわれています。そのような社会に対応できる人材を育成するためには,与えられた問いに正しい答えを返す形の教育だけでは不十分で,予想もつかないような問題に対処する 力が求められます。過去の経験が直接的に役に立たないことも多く,自ら考え解決できる力が必要になります。
      • 地域調査には,決められたお題も答えもありません。問題設定から調査方法,解決策まで,高校生自身が主体的に考えて進めていくことを想定しています。地域調査を通して,「自ら問いを立て解決策を考える」といったトレーニングを高校時代にすべての生徒が経験しておくことは,将来社会へ出てさまざまな課題に直面したとき,必ず役に立つものとなるでしょう。
      • この教科書では,高校生が興味を持ちやすいテーマを事例として扱い,地域の課題を「自分ごと」として捉えられるような工夫を凝らしています。災害大国といわれる日本でどのように生き抜いていくのか。自然環境から人間生活まで扱う地理だからこそ,この課題を丸ごと理解できると考えます。新しくスタートする地理総合を通して,将来,日本社会の生き抜く力が変わることを期待しています。

4-3.教科書の特徴

  • 1.授業イメージが浮かぶ構成
    • 主題を設定し、流れに沿って学習を進められるよう、節の流れ、見開きごとの展開を工夫しました。
    • 1授業1テーマとし、全部で66テーマを設定しました。
  • 2.生徒が主体的・能動的に学ぶ多彩なアクティビティ
    • 生徒自らが主体的に、見方・考え方を働かせながら活動する多彩な「アクティビティ」を用意しました。
    • 12種類のアクティビティは、学校の状況に応じて探究活動を行えるよう段階的に設定しています。
  • 3.興味を引き出す身近な題材
    • 生徒のスマホでも確認できるようGoogle Earth地理院地図などを取り上げました。
    • 世界で活躍する大谷翔平選手や、タピオカドリンク、ポケモンGOなど,身近な題材も豊富です。
    • 「Topic」「世界の衣・食・住」「私たちにできるSDGs」「日本とのつながり」などのコラムで、生徒に関心の高い話題を数多く取り上げています。

4-4.細かな編集ポイント

  • 1.章・節の導入部には、迫力のあるビジュアル写真、地図、資料を掲載しました。
  • 2.各節では、まず世界スケールで分布や特徴、背景や関係性などを大観させます。
  • 3.世界スケールで大観した後は、代表的な事例に焦点を絞り、具体的に主題を学習していきます。
  • 4.地形図やハザードマップなどを活用し、その地域ならではの自然災害と防災を考える具体例を、豊富に設定しています。
  • 5.テーマ設定や調査実践がスムーズに行えるよう、資料の活用方法や調査の手法について丁寧に解説しています。

5.第一『高等学校 地理総合 世界を学び、地域をつくる』33,537冊、占有率5.4%

f:id:r20115:20220309202910j:plain:h300
https://www.daiichi-g.co.jp/pr/tb/5/51

5-1.第一学習者が提案する新しい地理学習

  • 『高等学校 地理総合 世界を学び、地域をつくる』ができるまで…
    • 主題を設定して地域を扱う「地理A」を継承した教科書にするか、まったく新しい地理総合の本筋に沿った教科書にするか、企画段階でプロトタイプを制作してから、著者・編集者が延べ50時間以上にわたり激論を交わしました。その結果、第一学習者は、異文化理解・国際理解とSDGsを相互に結び付つけ、GISをその解決ツールとして有効活用する。「地理総合の王道型」こそ、地理が必修となった2020年代の新しい地理学習であると決断しました。グローバル社会、ボーダレス社会に対応して、異文化との遭遇や共生を自分事として考えられるようになる授業、その際に用いる視覚効果の高いGIS、これらが有機的に結び付いているのが本書です。本書を通じて学びの醍醐味を味わい、これからの社会を担う高校生の生徒さんの「生きる力」を育む一助となれば幸いです。

5-2.編修の基本方針

  • 1.地理を学ぶ意義がわかる教科書
    • 世界を広くグローバルにとらえながら,世界各地の特色ある生活文化や世界各地で見られる地球的諸課題,自然環境と防災などについて,その地域性や他地域・自然環境との結びつきといった地理的な見方・考え方を働かせて多面的・多角的に考察することで,現代世界に対する地理的認識を深めることができるようにしました。
  • 2.地理の学習方法がわかる教科書
    • 読みやすく平易な本文記述に加え,ワイドな紙面を活かして豊富な図・写真を掲載しました。与えられた「問い」に対し,写真や資料をもとに考察を深め,得られた結論を再度冒頭の「問い」に立ち戻る「ふりかえろう」を設けた紙面構成のもと,どのように学習していけばよいか,自然と身につくようにしました。
  • 3.地理的な見方・考え方が身につく教科書
    • 豊富に掲載した図や写真に対し,作業や考察を促す「TRY」に,位置や分布,場所,人間と自然環境との相互依存関係,空間的相互依存作用,地域といった地理的な見方・考え方の視点を表示しました。目次では,それぞれの見方・考え方に関連した問いかけを例示しているほか,各章における「TRY」は,中心的な見方・考え方に関するものが多くなるよう配慮しており,教科書全体を通して地理的な見方・考え方が身につくようにしました。
  • 4.持続可能な社会への地理の役割がわかる教科書
    • 前見返しでは,持続可能な社会に向け,地球上で見られる課題を広く概観するとともに,第2編2章の地球的課題と国際協力では,SDGs の 17 の目標と学習課題の関連性をつかみやすいようにしました。また,学習のまとめとして,カンボジアを事例に地域的な課題解決に SDGs の観点が有効であることを示し,地理を学ぶことが持続可能な社会の構築につながることを示しました。本書の最終ページにあたる p.220‐221 の地域調査のワークでは,持続可能な観光地づくりに向け,社会参画にもつながるよう配慮しました。
  • 5.主体的・対話的で深い学びにつながる教科書
    • 作業的・体験的な学習をともなう全 14 の「ワーク」や図・写真に対する問いの「TRY」,章末の「学習を深めよう」などを通して,話し合いや発表などの対話的な学習を設定しています。また,地理院地図をはじめとした地理情報システムの活用を促すとともに二次元コードによる Web 活用がしやすい構成をとり,主体的に学習に取り組む態度が養えるようにしました。

5-3.編修上特に意を用いた点や特色

  • 1.地理的な見方・考え方に基づき,主体的・対話的に学習できる教科書
    • 地図や主題図の読図,写真の読み取りなどの地理的技能が身につく作業的・体験的学習ができる「ワーク」を設けました。学習の過程を通して,ペアやグループで話し合ったり,インターネットを使って調べたり,考察したことを発表したりする力が身につくように配慮しました。
    • 図版や写真に関連した問いかけである「TRY」を 140 か所以上設けました。それぞれ,「地理的な見方・考え方」の主な視点別に色分け表示しており,それぞれの章では,学習指導要領の中項目ごとに例示されている視点が割合として多くなるよう配慮しています。
  • 2.持続可能な社会に向けた行動につながる教科書
    • 第2編2章の「地球的課題と国際協力」は国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)の5つの P に沿って節を構成し,節の冒頭には SDGs の 17 の目標のうち,学習内容に照らして該当する項目を明示しました。持続可能な社会に向けた国際社会の抱える諸課題とその解決に向けた取り組みを体系的に学習することができるとともに,足元からの行動(Act locally)の実践を促す構成になっています。
    • 自然災害への備えとして高校生が取り組むことのできる,インターネットも活用した各種ハザードマップの事前確認とマイタイムラインの作成や地域社会における共助の担い手としての能力の発揮など,地域社会への参画に向けた第1歩を踏み出しやすいよう配慮しています。また,地域調査の事例には,持続可能な観光地づくりを課題として設定しており(p.220‐221),地域の課題の調査からあるべき社会の考察,構想,表現までスムースに取り組める構成としました。
  • 3.探究的な深い学びにつながる教科書
    • 各章末には学習内容を踏まえさらに探究的に学びを深められるよう,「学習を深めよう」を設けました。より理解度を深め定着させるよう,1人で考察するだけでなく,ペアやグループで話し合ったり発表したりする活動を交えています。
    • 2編の末尾には「学習を深めよう+PLUS」を設けました。特色ある生活文化として気候や衣食住,産業,宗教,文化を学び,さまざまな地球的課題と国際協力について学習したのち,それぞれの地理的事象を主題として設定し,具体的な事例をもとに考察を深めるための特集ページで,主題ごとに地理的な見方・考え方に基づいた問い,振り返りを設定して,探究的な学びにつながるように配慮しています。
  • 4.防災・減災の重要性が理解できる教科書
    • 自然環境と防災を学習するにあたり,プレートテクトニクスの考え方が理解できるよう地球規模の地形の特徴について扱いました。そのうえで,日本の自然環境の特徴でもある,自然災害が多発する変動帯と湿潤地域に焦点を当て,丁寧に地震や火山噴火,風水害のメカニズムとそれに対する備えを解説しました。
    • 1編1章で学習した地理情報システムの知識を活用した,国土地理院地理院地図や気象庁のホームページのほか,各種地図サイトを利用した防災への取り組みを紹介しています。高度情報社会における防災での ICT と地理情報システムの活用により,高校生が世代をつなぐ役割を担うことができることを紹介しています。
  • 5.地理学習が楽しくなる教科書
    • メリハリをつけたレイアウトに 700 点以上の写真を掲載して,世界の地理的事象に対する興味・関心を喚起するよう配慮しました。また,親しみを覚えられるよう,丸みを帯びたレイアウトで写真を掲載するとともに,丁寧な解説文を用意し,必要に応じて写真上に文字情報を加え,見ているだけでも地理的事象に関する知識・教養が身につくように配慮しました。
    • 世界の特色ある生活文化として,定番の衣食住や宗教だけでなく,生活を彩る気候,暮らしを豊かにする産業,暮らしを楽しむための文化のように,さまざまな観点から世界の生活文化を学習することができるよう工夫しました。文化では,祭りや観光だけでなく,スポーツや音楽など,従来地理ではあまり扱ってこなかった題材も積極的に教材化し,地理的な事象の幅広さと奥深さ,そして面白さを感じられるようにしました。
    • 本文の書体にはユニバーサルフォントを用い,図や地図はカラーユニバーサルデザインの観点から制作しています。また,参照ページを丁寧に付しており,独立した地理的事象が別の学習項目で改めて関連してくることが理解できるように配慮しています。

6.実教『地理総合』19,151冊、占有率3.1%

f:id:r20115:20220309202914j:plain
https://www.jikkyo.co.jp/book/detail/22010022

6-1.コンセプト 専門科目を問わず、安心して使えるビジュアルな教科書

  • 1.安心のサポート ー新課程・新設科目の不安を解消ー
    • 新課程・新設科目という状況に不安を感じるすべての先生へ、新しい学びや先生の専門科目、あらゆる状況に対応できるサポートをたくさん用意。
  • 2.地理・歴史・公民すべての先生がつかいやすい
    • 地理総合は、地理専門外の“歴史・公民の先生”も受け持つことが予想される。
    • だからこそ、地歴・公民科すべての先生が専門性を発揮できる地理総合として編修。
  • 3.教える内容を選べる、資料集一体型
    • 地理的技能の扱いや地誌の内容など、教える内容を自由に選べる。AB判の資料集サイズにし教科書と資料集を一体化。
    • 豊富なスペースには、たくさんの資料を用意。

6-2.著者からのメッセージ

  • 吉田圭一郎 横浜国立大学
    • 本書は、必履修科目としての「地理総合」の新設にあわせて実教出版がおよそ20年ぶりに作成した地理の教科書です。本書では、先生方や生徒の皆さんの新設科目に対する不安を少しでも軽減し、担当する教員が教えやすく、学習する生徒たちが着実に地理的な見方・考え方を踏まえた思考力・判断力を身につけられるように、さまざまな工夫を取り入れました。使いやすく、分かりやすく、楽しく学べる。そのための多くの創意工夫を凝らした本書を是非ご活用ください。

6-3.編修の基本方針

○2条の目標を達成するため,次の通り編修した。

  • 幅広い知識と教養を身に付け,真理を求める態度を養う観点から,学習効果の高い地図やグラフを多数掲載した。また,同様の観点から,本文記述の歴史的背景を学べるコラム「歴史への旅」,本文記述に関連した最新の話題や動向を学べるコラム「時事ノート」を設けた。さらに,作業的で具体的な体験を伴う学習を通じて地理的技能を養えるコラム「アクティブ」も多数設けた(第1号)。
  • 自主及び自律の精神を養う観点から,生徒の思考力,判断力,表現力等の養成に資する問いかけを全編にわたって掲載した(第2号)。
  • 主体的に社会の形成に参画し,その発展に寄与する態度を養う観点から,生活圏における地理的な課題の把握,調査,考察,構想のあり方についての記述を掲載した(第3号)。
  • 生命を尊び,自然を大切にし,環境の保全に寄与する態度を養う観点から,地球環境問題と国際的な取り組みについての記述を掲載した(第4号)。
  • 伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養う観点から,我が国の領土に関する内容を詳述した。また,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う観点から,国際理解に資する内容を詳述したほか,国際社会のあり方を多面的・ 多 角的 に 学 習で き るよ う に, 世 界 の多 様 な生 活 文化 を 学 べる コ ラム 「 クロ ー ズ アップ」,国際社会の繋がりを学べるコラム「つながる世界」をそれぞれ設けた(第5号)。

6-4.編修上特に意を用いた点や特色

「地理総合」が地理歴史科の必履修科目であることを鑑み,生徒が興味・関心を持ちながら,基礎的・基本的な事項を無理なく学習できるように,以下の点について配慮した。

  • 1)生徒の主体的な学びを促したり,学習の動機付けをはかったりできるように,各種資料の着目点を確認する「気づきの問い」を随所に設けた。
  • 2)地理的な見方・考え方に基づきながら,社会的な諸事象・諸課題を多面的・多角的に考察したり,課題解決に向けて構想したり,考察・構想したことを効果的に説明したり,議論したりする力を養うため,各ページに,地図・資料から情報を読み取ったり,地図・資料を比較したりする「Check」,学んだことを踏まえながら考えたり,構想したり,表現したり,調べたりする「Try」を設け,生徒の主体的な学びのきっかけを作り,対話的な学習を促し,それらを段階的に発展させて深い学びにつなげ,地理的な課題を主体的に追究,解決しようとする力や態度を養う一助となるように工夫した。
  • 3)地図や地理情報を教材として取り上げた作業的で具体的な体験を伴う学習によって興味・関心を喚起し,生徒自身が主体的に地理的技能を習得できるよう,コラム「アクティブ」を設けた。
  • 4)地理情報を用いた汎用的かつ実践的な地理的技能の端緒となるよう, 地理情報システム(GIS)に関する基礎的・基本的な知識や技能を紙面上で確認・習得できる教材「透過シート」を設けた。
  • 5)本文を理解するうえで重要な用語については,用語解説型の注でコンパクトにわかりやすく解説した。
  • 6)多種多様な図,写真,資料から情報を読み取り,本文で説明する地理的事象に関わる事実的知識や概念的理解と関係づけることで,現代社会の地理的事象を多面的・多角的に考察できるようにした。
  • 7)我が国の位置や領域について,世界的な視野から捉えつつ,歴史的背景を踏まえながら詳述した。また,世界的視野から我が国の位置や範囲を捉えることのできる地図や諸資料,海洋国家としての特色を理解できるコラムを掲載した。
  • 8)(B)-(1)-(1)「生活文化の多様性と国際理解 」における「世界の人々の特色ある生活文化」については,「自然環境からみた世界の生活文化」と「各種社会環境からみた世界の生活文化」といった観点でグループ化をおこない,世界の生活文化の多様性や変容に関わる地理的環境について多面的・多角的に考察させて,国際理解の重要性に気づかせる学習活動ができるようにした。また,複数の地域を事例として取り上げた後者では,網羅的な地域学習とならないよう,各グループの冒頭に導入ページを設け,生徒が考察するにふさわしい特色ある事例(テーマ)を選んで学習できるようにした。
  • 9)「世界の人々の特色ある生活文化」については,日本との つながりや共通点・相違点に着目し,多様な習慣や価値観などをもっている人々と共存していくことの意義に気付 けるようなコラムを各所に設けることで,生徒が国際理解のあり方を日常的な視点と結び付けて捉えられるように工夫した。
  • 10)世界の人々の特色ある生活文化に関わる自然環境について,本文理解の一助となるよう,世界の気候区分と大地形を常に参照できるように工夫した。
  • 11)地球的課題について,持続可能な社会づくりなどに着目しながら諸課題の現状や要因,解決の方向性などを多面的・多角的に考察,構想,表現したり,それらを基に議論したりする力を無理なく習得できるように,具体的な事例に基づくコラムを最終ページに設け,生徒の主体的・対話的で深い学びの一助となるように工夫した。
  • 12)自然災害と防災について,地形図やハザードマップなどの主題図の読図,地理情報の活用など,日常生活と結び付いた地理的技能を身に付けるとともに,防災意識を高めることができるように,作業的で具体的な体験的を伴う学習を通じて,地域性を踏まえた自然災害への対応や防災のあり方を実践的に習得できるページを複数設けた。
  • 13)生活圏の調査をおこなうための基盤となる「地理的な課題の解決に向けた取組や探究する手法」の習得については,具体的な地域を設定して,その地域における諸課題の把握,調査,考察,構想のあり方を詳述するとともに,イラストを多用して視覚的に無理なく習得できるように工夫した。
  • 14)世界の人々の特色ある生活文化に深く関わる歴史的背景を学べるコラム「歴史への旅」や,世界の生活文化の多様性を学べるコラム「クローズアップ」,地域や国どうしのつながりや関係性を学べるコラム「つながる世界」を随所に設けることで,生徒の興味・関心を喚起しつつ,多面的・多角的な観点から世界の人々の生活文化を捉えられるように工夫した。
  • 15)現代社会にみられる特徴的な事象を地理的な見方・考え方で捉えるためのきっかけとなるよう,最新の社会情勢や諸課題を扱ったコラム「時事ノート」を設けた。