雑録

秋本弘章「『聖地巡礼』と地理教育 〜「あの花」を事例に〜」『地理月報』549号、二宮書店、2017年、10-13頁

  • 概要
    • 『地理総合』が開始されるにあたり、地理教育の新しい方向性が「聖地巡礼」(アニメツーリズム)と一致していることを指摘する文章

以下参考になった箇所

  • 聖地巡礼と学校教育
    • 「これまでの観光地化は行政や地元の業者等が観光産業の興隆を目指して作り上げてきた。しかし『聖地巡礼』は若者が火付け役となり、いわば勝手連的に発生した場合が多い。若者が主体の活動である『聖地巡礼』と社会参画を目指す近年の学校教育の方向性は、同期するように思える。」(10頁)

  • 聖地巡礼に行くという行為」と、「地理の学習、地図に関する技能」の関連性(11頁)
    • 「実際に『聖地巡礼』を行うためには、まず、アニメ等の文脈や画像から特徴的な要素を見出し、それがどこなのかを推定しなければならない(技能c)」
      • 技能c「ここにはどのような地理的現象が見られるのか、この地理的事象がなぜこの地域にみられるのか、既存の地図から地理的事象を読み取ったり、地理的事象を地図を通して追究しとらえたりする技能を身に付けること。」
    • 「そのうえで地図を頼りにその場所を訪れる(技能a,技能b)」
      • 技能a「地形図や、道路地図、案内書の地図などに慣れ親しみ、どこをどのように行けばよいのか、見知らぬ地域を地図を頼りにして訪ね歩く技能を身に付けること。」
      • 技能b「教科用図書「地図」(以下、地図帳という。)や地図に慣れ親しんで、この地名は日本のどこにあるのか、この人は世界のどの附近を訪ね歩いたのかなど、学習や日常生活の中で出てくる地名に関心をもち、その位置を確かめるようになること。」
    • 「ブログ等で発信する(技能d,技能e)」
      • 技能d「この調査結果やこの統計は地図に表すことが可能かどうか、地図に表すとすればどう工夫すればよいか、地域の諸事象や情報の地図化の適否を判断し、適切に地図化する技能を身に付けること。」
      • 技能e「略地図を描く技能を身に付け、略地図で位置を示したり、略地図を使って日本や世界にみられる諸事象をとらえ、説明したりするようになること。」

  • ストーリーに描かれた背景の意味
    • 背景と地理的な意味
      • 「アニメや映画などには、ストーリーがある。背景などはストーリーにふさわしい風景が選ばれていると考えられる。つまり、単なる背景ではなく、場所の特性、すなわち地理的な意味が隠されている」
    • 段丘崖を用いた心情表現
      • 秩父市市街地の地形的特徴は、盆地であることと河岸段丘が発達していることである〔……〕第3話で「じんたん」は〔……〕始業式に出席することができず時間つぶしをしたのが、定林寺東側に位置するケヤキ公園である。ベンチの背後に描かれている石垣が、段丘崖なのである。段丘崖の存在が、平坦とは言えない主人公たちが日常直面する悩み、超えるべき「壁」を示しているようである」(11-12頁)
    • 秩父の地理的特性「三十四箇所霊場巡り」と死霊顕現
      • 「そもそも『あの花』が秩父を意味していることにも意味がある。秩父は元々「三十四箇所霊場巡り」の場所であり、主人公の夢現のなかで死者が甦る物語としてはうってるけの舞台を提供している。また監督の長井龍雪秩父市に関して、「東京との微妙な距離感や山に囲まれた土地の閉塞感といった雰囲気」を述べている〔……〕主人公たちの内なる世界から外への旅立ちの苦悩が、西武線の正丸トンネルを通る列車や飯能市街地での主人公の姿を描くことで描写されている。すなわち、物語の背景を考察することが、地域の特性を調べ、理解することにつながっているのである。」(12頁)

  • この論文の著者は聖地巡礼には投資コストがかからないと主張している
    • 「〔……〕「聖地」は既存の施設や風景そのものであるため、投資コストはほとんどかからないのである。そのため経済力に乏しい地方の市長村でも実行しやすいという特性がある〔……〕熱心なファンがアニメを見て訪れ、それをソーシャルメディアで発信することから始まっている〔……〕アニメの舞台となった「聖地」は既にある施設や背景そのものであり、地元の住人にとっては「日常風景」である。つまり、「聖地」は以前から存在していたのである」(13頁)

  • 「持続可能な社会」と地理教育とアニメツーリズム
    • 「〔……〕『地理総合』が必修科目として設置されることとなった。この科目は、「持続可能な社会づくりに必須となる地球規模の課題や、地域課題を解決する力を育む科目」とされる。「地理総合」(ママ)では、単に教室の中だけの学習でなく、学んだ内容を社会の中で生かすことが求められている。地域の資源を再発見し、それを生かすことが求められている。地域の資源を再発見し、それを生かすことは持続可能な社会つくりで極めて重要である。『聖地巡礼』(アニメツーリズム)を通じてわかることは、若者=高校生であっても地域づくりに主体的な参画が可能であるということである。〔……〕住民、特に若者が地域資源を見直すきっかけになっている。すなわち、『聖地巡礼』(アニメツーリズム)は、地理教育の新しい方向性と一致しているのではないだろうか。」(13頁)









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