ウマ娘 メインストーリー 最終章 前編「夢の原石」の感想・レビュー

スペシャルウィークを主役に据え黄金世代(1998世代)に焦点を当てる話。
2人の母(産みの親と育ての親)の夢を叶えるため単身北海道からやってきたスぺ。
高い能力を備えてはいたもののレース経験の乏しさから遅れを取ることになる。
特にセイウンスカイの盤外戦術にアッサリ嵌りアイデンティティ崩壊しスランプに陥る。
ダービーは制したものの三冠は遠くスズカの海外遠征もあり「日本一」の定義にも悩む。
そんなスぺだが天皇賞(春)での死闘を制し皆の期待に応えることに答えを見出す。
スぺの個人史というよりも黄金世代とその周辺の同時代史的な側面が強い。

黄金世代の時代的熱狂を描き出す

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勝つために盤外戦術を取るセイウンスカイ
  • 【1】セイウンスカイの盤外戦術
    • 北海道から単身トレセン学園に乗りこんできた道産子スぺちゃん。1998年世代は黄金世代と呼ばれ、スペシャルウィークの他にもセイウンスカイキングヘイローエルコンドルパサーグラスワンダーと粒ぞろいの精鋭たちを誇っていました。スぺちゃんには2人の母親(産みの親と育ての親)がおり、その夢を叶えるため「日本一」となることを公言していたのですが、この「日本一」という概念をどのように捉えるかが本シナリオを通した主題となっていきます。
    • まず初めにスぺちゃんに襲い掛かる最初の敵はセイウンスカイの盤外戦術です。策略家であるセイちゃんは、血統の良さや周囲からの定評を覆すことを信念としており勝つためには手段を選びません。スぺちゃんは高い実力を誇っていたもののレース経験が乏しく、セイウンスカイの盤外戦術にアッサリ嵌ってしまうのです。スぺちゃんの夢ってお母ちゃんたちの夢でしょ?そこに自分はないの?と主体性の無さを指摘されたことにより、これまで無邪気に夢を追っていたスぺちゃんはアイデンティティ崩壊。
    • 自分とは何か?なぜ自分は走るのか?という問いに苛まれることになります。こうして動揺したスぺちゃんはあえなく皐月賞で敗北してしまうのでした。こうして「日本一」になるため「三冠」を目指したスぺちゃんは速攻でその夢が絶たれます。

 

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スズカさんからの自立
  • 【2】サイレンススズカの海外遠征
    • スぺちゃんの盤外戦術は尾を引き精神崩壊を引き摺るスぺ。セイちゃんは自分のせいで苦悩するスぺちゃんを見て流石に気の毒になったのか釣りに誘うことになります。そしてスぺちゃんに原体験を語ることで、走る動機を思い出させるのです。スぺちゃんの走る動機のひとつなっていたのがサイレンスズカでした。スズカさんのように走りたいという気持ちはスぺちゃんを奮い立たせ、何とかダービーを制することに成功します。しかし今度はスズカさんの海外遠征が決まり寂寥感に苛まれることに。スぺちゃんの第二の課題がスズカさんからの自立。スズカさんがいなくなることでまたもや不調になるスぺちゃんでしたが、スぺちゃんが惹かれたスズカさんの走りとは「景色を見たい」というスズカさんの根源的欲求からくるものでした。それ故、スぺちゃんはスズカさんを妨げてはいけないとの結論に達し、スズカさんがいなくてもやれるという所を見せつけようとします。『帰ってきたドラえもん』かよ!スぺちゃんはわざとレースの日とスズカさん出立の日を同じにしてもらい、スズカさんがいなくてもやれるということを示したのでした。

 

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メジロ家 ライアンとブライト父子の絆
  • 【3】メジロブライト天皇賞(春)
    • 何か菊花賞は捨象され気味でアッサリとセイウンスカイが勝利。シナリオは天皇賞(春)が主軸となり、ここからは新たな敵としてメジロ家のライアン&ブライト父子が立ちはだかります。前年天春を制しているメジロブライトは二連覇を目指し猛特訓に励みます。この場面での見所はライアンとブライトの親子の絆。ライアンは自分の無念の気持ちをブライトに投影しすぎているところがあり、ついつい猛特訓を課してしまうのです。この時ブライトのことを考えずに自分の押し付けをしていたことに気付くライアンが可愛いですね。そして寧ろライアンの期待を喜ばしく思うブライト。ブライトはライアンをお姉さまと呼称し、姉妹百合的関係が掘り下げられます。スールの契り。
    • 一方スぺちゃんは憧れのスズカさんがいなくてもトレーナーやチームメイトに支えられ天春の戦略を練っていきます。スぺちゃんは一人じゃない、みんながスぺちゃんに協力してくれるんだ!皆の絆パワーは本番でも発揮され、見事スぺちゃんはメジロブライトを破り、天春を制することになります。「日本一」になることを掲げ、その第一歩とした三冠獲得はダービーのみの勝利に終わったスぺちゃん。しかし天春を制したことにより、皆に期待され、それに応えることこそが「日本一」であると思い至ります。私は信頼されている。私は信頼されている。信じられてるからこそ走るのだ。ついて来い!フィロストラトス。こうしてスぺちゃんは自分なりの「日本一」に近づけたのでした。
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スぺちゃんなりの「日本一」の定義

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