シスターが破損した経典を復元した際、司書が私的に複製しており、その罪を贖うため遺跡調査に行く話。
遺跡は古代の修行場であり、地図は目を盗んで遊んでいた昔の女学生達が残したものであったというオチ。
だがシナリオのテーマ「普通の女学生としてひと夏を遊びたかった」という主題が良い味を出している。
当初は聡明であるが故に世俗に飽き全裸徘徊女として無聊を慰める天才ハナコの手の平の上の策略かと思われた。
そもそも論として貴重な経典を破壊してしまいウイが複製を作るきっかけを生んだシスターヒナタへのケア。
陰キャ系ヒキコモリの司書ウイ及び人見知りの激しい炉利ツンデレのコハルらの対人コミュニケーションの改善。
先生はハナコの能力をよく理解しているため、ハナコがヒナタ・ウイ・コハルらのために遺跡調査を目論んだと推測。
しかしハナコは聡明な才女としてではなく、変態淫乱女としてでもなく、普通の女学生として遊びたかったと吐露する。
自分の気持ちを隠しがちなハナコが夏の力を借りて、自分の本心をありのまま先生に語った貴重な瞬間であった。
今回のイベストの主役はハナコ!自分の気持ちを隠しがちな少女が夏の力で本心をさらけだし先生との関係性を深める。
- イベスト概要
- 今回のイベストは遺跡調査。概略を簡潔に記すと以下の通り。怪力シスターヒナタが貴重な古い経典を破壊してしまい、司書のウイに復元を頼む。ウイは復元を難なくこなすが私的に複製を作成していた。だが有能な教会はこれをすぐに見抜き、長であるサクラコは経典は市民に公開されるべきものなれど事前に申請して欲しかったと教え諭そうとする。だがサクラコの迂遠な言い回しもあってウイは人の話を聞かず処罰されるものと思い込んでしまう。そこに現れたのがハナコであり、教会の遺跡調査をするから経典複製の赦すようナシをつける。調査の結果、遺跡は古代の修行場であり、古代地図は修行者であった女学生たちが目を盗んで遊んでいた遊び場を記したものであると判明する。ハナコが選んだメンバーはヒナタ・ウイ・コハルであり、経典を破壊してしまい根本的な原因を作ったヒナタをケアし、対人関係に問題があるウイやコハルにコミュニケーション能力を身につけさせようとする側面があった。調査報告を受けたサクラコは、全てをハナコが知っており、手の平の上で転がされていたのではないかと感じる。一方で遺跡調査を通してコミュ障に改善の傾向が見られたウイはアイスアメリカーノを仲間たちに振る舞う余裕が生まれた。また人見知りの激しかったコハルをいたわるために、補習授業部の皆で水着遊びが開催され終幕となる。
- ハナコが自分の本心をさらけ出すことができた貴重なシナリオ
- 今回のイベストは一見するとウイが主役のように見え、偏屈で排他的なウイが遺跡調査を通じて仲間たちに心を開いていく様子がシナリオの原動力であった。だが裏の主役は何と言ってもハナコである。ハナコは聡明な才女であったが故に世俗社会に倦んでしまい変態淫乱全裸徘徊女性を演じることで憂さを晴らしていた。道化になることで無聊を慰めていたハナコであったが、その才能は隠しきれず一部の有力者からは非常に評価されていた。それが故にサクラコからも今回の遺跡調査は全てを知るサクラコにより仕組まれていたものであったと邪推されてしまうのである。
- だが今回重要なのは、ハナコが普通の女学生として夏を楽しみたいという感情を持っていたということ。先生はハナコがウイやコハルをメンバーに入れた理由として二人のコミュ力改善をハナコが意図したのではないかと推察し、イベスト中ハナコと二人きりになるとそれとなく話を聞くことになる。最初、ハナコは本心を隠そうとするのだが、先生の誠実さと夏の雰囲気がハナコの心の扉を開かせた。ハナコが語ったのは、様々な目論見があったのは事実であるが、自分もまた夏を楽しみたかったのだと。周囲から期待される聡明な才女としてではなく、普段日常的に振る舞っている全裸徘徊女としてでもなく、普通の女学生として夏を楽しみたかったのだと心情を吐露するのだ。ハナコが自分の本当の気持ちを正直に話すことは非常に稀なことであり、ひと夏の思い出という力がそれを可能にしたのだ。これによりハナコという人物像の掘り下げがさらに行われ、先生との関係性も深まっていく。
- 夏という季節感がもたらす情緒
- この「夏だから遊びたい」という気持ちは昔の女学生とも共通していることであり、修行場を抜け出して遊んでいた少女たちが、せめてもの足跡としてタイムカプセルを残したという流れとリンクしていく。研究者を嘯いていたウイであったが、遺産というものは歴史として後世に語り継ぐことだけが目的でなく、ただ想いを残すという側面もあると提唱。古代の女学生たちの想いを汲んだウイは古代地図の羊皮紙をタイムカプセルの箱に入れると、もう一度埋め直し、人知れず佇ませるのであった。
- ウイの心意気を見たハナコは、彼女を大いに気に入ることとなる。仲良しこよしというわけではないが、ハナコとウイはお互いを何となく認め合う間柄となった。終局部に繰り広げられる二人の静かな舌戦は一見の価値アリ。全てを理解った上でハナコはウイの行いを冒涜だとして喧嘩を売るのだが(ハナコとしてはじゃれ合い)、ウイは淡々と遺物に託された思いを述べていく。ハナコは自分のじゃれ合い(割と知的な会話)にウイがついてこられることは、ハナコをして大いに喜ばせるのであった。またウイもハナコへの認識を深めることとなるのだが、ウイが最後に振る舞ったアイスアメリカーノはその証左であったのだ。