宇河弘樹『朝霧の巫女』第5巻(少年画報社) の感想・レビュー

いつコミックスが出るのかと読者をして首を長くして待ち続けさせた『朝霧の巫女』。
ですが、本誌での連載は第5巻の単行本が出る前に完結してしまいました。
そして第4巻から約4年ぐらいの時を経て、やっとこさ第5巻の登場ですよ。


今回のみどころは、なんといっても「こまさんの過去編」。

こまさん、孕んでる結実の腹を掻っ捌く


猫又の妖怪であるこまさんが、夫・息子・孫へと見せる天津の血への執着はゾクゾクきます。血を拠り所とするこまさんの、忠寿への執着は、次第に彼を追い詰めていく。母親を大事にするからこそ、重荷となってしまうアンビバレンツな母子家庭。そして山にココロを持ってかれてしまった結実と精神崩壊する忠寿。ここからの展開がものすごくてストーリーに一気に引き摺り込まれてしまう。臨月を迎えても子供が産まれる気配のない結実を見て次第に焦れていく日常。そして母と息子の衝突。ついに、こまさんは結実の腹を掻っ捌いて赤子をとりあげる。


こまさん、忠明との証のために死姦をする。

そして一番オススメしたい描写は「こまさんが死姦をして子種を孕む」シーン。愛したオトコとの証を得るため屍骸に馬乗りになり忠明との子供を作る。人の死とは受け入れがたいもので、忠明の屍骸を目の当たりにしてもいつものように食事を用意し起き上がるのを待つ。本当に死を受け入れることができたのは、体が腐り始めてから。その腐った骸を死姦するこまさん。その様子を山へと魅せられる過程で見せ付けられる忠寿。自分が妖怪と死体の子供であることを知った時の忠寿の心情の表現は一読の価値ありです!!