サイレンススズカが「想い」の力で前世(リアルで「馬」だった頃)の因果律を書き換える話。
現実のサイレンススズカは絶頂期を迎えた118回天秋でレース中に怪我に見舞われ安楽死する。
その世界線の記憶の残滓は次第にトレーナーを蝕んでいき過労で倒れてしまうほどに。
不安に苛まれるトレーナーを救うのは正妻ポジションのメジロマックイーン。
ウマ娘は「想い」を背負って走る存在なのだと諭しトレーナーを鼓舞するのだ!
(第5章はトレスズが描かれ淡い感情を抱くスズカを垣間見られるがトレマク分が掻っ攫っていく)
レース中過去の因果に囚われそうになるスズカを救うのは彼女への「想い」の力。
鬼滅のラストで鬼となった炭次郎が想いの力で意識を取り戻した時と同様にスズカも闇世界から回帰する。
ラストでタキオンと共に歌うライヴでは世界線を超えたサイレンススズカが描写される。
第118回天皇賞(秋)の因果律を乗り越えろ!
- 【1】「想い」の力で「世界線」を超え、新たな「景色」を見たいんだ!
- 【2】スズカの走りを解き放て!
- シナリオの前半はサイレンススズカの個別ストーリーを発展的に再構成したような感じになっています。別のトレーナーの指導下に入っていたスズカですが、ロジカルなレース戦略に基づく走りに倦んでいき、実力を発揮できずにいました。そんなスズカを支えることになるのが、彼女を慕うスペシャルウィークであり、スペスズが満載となっています。このスペスズがきっかけとなってスズカはチームを移籍してくるのです。この流れは以下の通り。①主人公トレーナーの指導下で個に応じた走りを尊重されているスぺを見たスズカ→②鬱屈を抱えるスズカについ助言してしまう主人公トレーナー→③違和感から解放され本来の走りを取り戻したスズカ→④本来のトレーナーから離れて移籍する程トレーナーに惚れ込むスズカという流れになっています(分かりやすいチャート方式)。
- 【3】トレスズ~スズカの淡い感情編~
- 【4】ウマ娘とは何か
- シナリオの後半からは「ウマ娘とは何か?」を研究のテーマとしその存在を解明しようとするというメタ的な位置づけとしてアグネスタキオンが登場します。タキオンの研究室でウマ娘という存在原理の末端に触れたトレーナーは、次第にリアルでのサイレンスズカの因果律を幻視することになっていきます。トレーナーとの親密度がマックスとなったスズカの仕上がりはまさに絶好調だったのですが、その一方で主人公トレーナーは疲弊していきついには過労で倒れてしまいます。苦悩するトレーナーを助けるのは、第1章のメインヒロインであり、もう既に正妻ポジションとなったメジロマックイーン。ウマ娘は「想い」を背負って走るものであり、第1章から第4章までで散々主人公が少女たちを救済してきたではないかと鼓舞するのです。
- 【5】ウマ娘は想いを背負って走るもの
- マックイーンに励まされウマ娘への信頼を噛みしめたトレーナーはスズカに想いを重ねます。そして迎えた天皇賞(秋)。スズカはリアルと同じように第3コーナーの悪魔に囚われるのですが、ここで挿入されるのが「大団円」の法則。よくある物語構造として暗黒面に陥りそうになった時、仲間たちの声で覚醒するという展開があります。最近の作品で言えば、鬼滅のラストで炭次郎が鬼の王となった際、精神世界で死者たちから背中を押され生者たちからは手を伸ばされて現実に回帰していくシーンとか結構印象に残ってます。第5章スズカ√もそんな感じ。第3コーナーで闇の世界に囚われたスズカに対し、ウマ娘が背負う皆の「想い」が光となるという演出は、割と感動的。ライブの組み合わせがスズカとタキオンと発表された時にはそのペアについて様々な憶測がなされましたが、蓋を明けて見れば、デッドエンドに終わってしまった「現実での競馬界の世界線」をそれをモチーフとした「ウマ娘の世界線」がどのように乗り越えて行くのかを描いたストーリーだったのでスズカタキオンだったというオチでした。