小熊英二「日本の言語帝国主義-アイヌ、琉球から台湾まで-」(三浦信孝・糟谷啓介『言語帝国主義とは何か』 藤原書店)

  • 要旨
    • 日本の「言語帝国主義」が、周辺性の度合い(中央-周辺)に応じてどのような展開を遂げていたか。
  • 「周辺」の三類型(沖縄・北海道/台湾・朝鮮/南洋諸島・中国・南方)
    • 沖縄・北海道
      • 日本の近代国家制度が成立するまえに領有
      • 沖縄
        • 国民統合の対象地域
        • 多数派住民を「日本化」する
        • 社会的上昇と身分脱出のために日本語を学ぶ。
      • 北海道
        • 和人の植民者が多数を占める
        • 北海道土人保護法により「土人学校」を設立し隔離
        • 「民族的」な位置づけにより沖縄とは制度的差異
    • 台湾・朝鮮
      • 大日本帝国の正規領土だが制度的な統合は行われなかった。
      • 言語政策においても、統合と分離の折衷という政策。
      • 「国語」と天皇崇拝は教えられたが、台湾では漢文、朝鮮では朝鮮語が平行して教えられた。
      • 第二次大戦期に国民軍に動員され「国語」教育の推進が強化された。
    • 南洋諸島・中国・南方の占領地域
      • 非正規領土
  • 「国語」教育の揺らぎ
    • 原住民にどのような「国語」を提示するか:仮名遣い論争(歴史的仮名遣いVS表音的仮名遣い)
    • 「国語」教育の教授法:直説法
    • 「国語」にどのような役割を期待するか:精神の日本化
  • 大日本帝国の言語帝国主義の遺産
    • 直説法は現在でも外国人に対する日本語教育の主流
    • 戦後の表記方法は、朝鮮での「国語」教育で使用されてきた折衷的仮名遣いと同一のものである。