増田四郎『ヨーロッパとは何か』岩波新書、1967年

ヨーロッパという概念;「ギリシア・ローマ、キリスト教ゲルマン民族」をフランク王国に求める。

この本のねらい

    • 「ヨーロッパ」という舞台の成立とその構造の特殊性
    • 古代世界の没落してヨーロッパ社会が成立することの意味、歴史の転換とは何か
    • ヨーロッパにおける社会生活のあり方に見られる特色

メモ

  • 歴史意識の変換(多文化相対主義
    • 世界を一つの文明ないし文化の発展としてとらえるのでなく、色々複数の文明としてとらえるべきであり、いろいろな文化や文明というものが、相互にどういう関係を持ち、その相互接触のあいだに、どのように若返ったり、老衰したりするか、その法則をみることが、むしろ世界史研であるべきなので、ヨーロッパ中心史観というものは、ここでひとつヨーロッパ人自身の手で放棄しなければならない、あるいは克服しなければならない
  • 帝権・教権とヨーロッパ
    • ローマ帝国は滅びた。しかしそのユニバーサルな枠はローマ教皇を首長と仰ぐカトリック教会の制度に受け継がれ、皇帝の支配権は政治理念として残存した。また新しい団体精神が修道院の活動のうちに芽生えてきた。そうした中でゲルマン民族は、いままでの強制単一国家とはちがった原理の、いくつかの国家を形成し、新しい社会を打ち出すこととなる。それがヨーロッパの誕生というものである。
  • フランク王国とヨーロッパの成立
    • ヨーロッパを形成した三要素の融合が成された母体は、ほかならぬフランク王国であったのでありから、ヨーロッパの形成をみようとすれば、なんとしてもまずフランク王国実態を分析することからはじめなければならない。
  • フランク王国統一の手段とは何か
    • 人的結合国家の原理によるみせかけの統一、いいかえると封建制の前提の上に立つ国家形成
    • 崩壊期にある氏族社会が、たまたま非常に普遍的な国家理念というものを、近傍あるいは近い過去にもっており、さらにそれに適合的な普遍的宗教の影響をうけるときに、そうした国家理念と宗教制度を利用して、新しい国家統一に役立たせようとつとめる際に発生する制度が封建制度
    • 広大な支配領域全体を直接把握する支配の道具立てを作りたいのであるが、普遍的理念と普遍的宗教だけでは、実際の統治はできない。道具立てを作り出す実力がない。しかたなく、王と各地方にいる豪族・貴族とのあいだに、忠誠を基本的なモラルとする主従関係を結び、個別的・具体的な人的結合の集積というか、上下関係の糸をあつめることによって、王国全体をカヴァーしようとする