はつゆきさくら あずま夜シナリオの感想・レビュー

「はつゆきさくら」のあずま夜シナリオは、「過去の自分と向き合う」おはなし。
トラウマを負った若者がPTSDを発動させながら、もがき苦しんでいく。
現在の自分を構成しているのはかつての自分がいたからこそ。
どんな煩悶とでも向き合い、それを受け入れる強さを教えてくれているんだ。
物語の全体構造においては主人公くんに「過去と対峙する」ことの因子をもたらす。

あずま夜のキャラクター表現とフラグ生成過程

あずま夜は、スケート女子。奇抜なキャラ群がひしめきあう中では、わりと常識人。スポーツをテーマにし、過去のトラウマを乗り越える作品はエロゲの中でも珍しくない。さらにそのスケートという競技も「G線上の魔王」の妹シナリオや「こなゆきふりる」で扱われていますね。では、本作品ではいかがでしょう。この作品においては、過去の怨恨が生霊・死霊と結びつくことでオリジナリティが垣間見れます。概要はこうだ。あずま夜は過去にスケートで少しは名が知られていたが、ネガティブキャンペーンされて精神崩壊。だが、この冬で引っ越すことになった折に、自分がこの街でスケートした証が欲しい!、自分の生きた足跡を残したい!と再チャレンジできる社会を要求。だが風評被害は未だに止んでおらず、あずま夜のメンタルは次第に削られていく。そんな折、反魂香を入手したあずま夜は、全盛期であった頃の過去の自分の生霊を召還。呪いを行使しようというのであった。過去の自分に囚われ続け、失われたものを求めてあがいている。


そんなあずま夜の姿は主人公くんの心を打つ。嗚呼、こいつも自分と同じなんだなぁと。似ている人物像を見ることによって自分を客観的に眺めることができるとかいうやつ。ここで物語の全体構造の中で主人公に対して「過去と向き合う」ことを促すという鍵
をくれるの。フラグ解放。そして、反魂香で召還した生霊も、説教カウンセリングでバニッシュしてフラグ成立。

心の中にある、優しい風景に戻りたいと願うことだけが、唯一の希望だった。そんな場所は、本当はどこにもない。あるとしたら、心の中だけだって。じゃあ、俺はどこに行けばいい?多分それは終わりが無いって、なんとなく分かっているんだ。俺は…どうしたって辿り着けないものを求めているんだ。俺は世間に馴染めなくて、けど、そこを去るまでもなく居座り続けて。無理はどんどん大きくなって、その圧力がきっと俺の大事なものを壊してしまったんだってきっと分かるんだ。
探し続けるしかないんだ。消えてしまったなんて認めることはできなくて、例え狂っていると言われても探し続けるしかない。叫び続ければ、春に辿り着けると、思っていたのかもしれない気がするんだ。だけど、お前の願いを叶えることができたら、俺も少しくらいこの街に何か…綺麗な足跡を残せるような…

フラグ成立後の2人は、度胸試しの根性をつけるため、メールしたり、名前呼びしたり、合宿したりする。名前呼びするところで、「おにーちゃん」言い出し、周囲にからかわれるのは良いものよの。だが、生霊あずまは何度も復活。生霊曰く「過去のトラウマによって自分を抑制することになったストレスが、生霊を呼び出してしまう」のだとか。根本的な解決するには、大きなスケート大会に出場し、演技をやり終えるしかない!!しかしそこに魔の手が。あずまのトラウマの原因となった女が忍び寄る。その女があずまを呪う怨恨は以下の通り。かつてスケートがブームになったとき、将来を渇望された選手がいた。しかしその選手が怪我をするとマスゴミは新たな偶像「あずま夜」を見つけ出す。怪我の引退とマスゴミの掌返しにショックを受けた女は、あずまに対してネガティブキャンペーン。今回復活したあずまにもネガティブキャンペーン。この街から新たな英雄が出なければ自分の名は死なず、ずっと語り続けられるのと勘違い。ネガキャン風評被害によって、PTSD発動しちゃうあずまだが、今回は初雪さんもいるしホワイトグラデュエーションズも居るぜ!!野次にも負けず応援開始。見事!あずまは踊りきり、トラウマを克服するのであったよハッピーエンド。