みなさん、こんにちは。ようやく1学期のデスロードをくぐり抜けました。
定期試験対策・模試対策・入塾体験授業・テスト作成・授業研究会・成績処理などを終え、束の間の休息。
まだ夏休みに入っていないので、夏期講習も始まらず、久しぶりに世界史の解説です。
14〜17世紀初めの東アジア海域における琉球の盛衰について、中国の貿易政策の変遷と琉球と日本の関係に触れながら、次の語句を用いて300字以内で記述しなさい。
[海禁 朝貢 中継貿易 北虜南倭 日中両属 ]
東アジア海域世界っていっても琉球って日本史じゃないの?無理ゲー。
平成21年版高等学校学習指導要領から地歴公民の各科目連携が唱えられているからこういう問題もあるでしょ。
学術者会議では「歴史基礎」という科目を作ろうとしているぐらいだから日本史・世界史の連携はなおさら。
ここでは、琉球史、中国貿易政策、日琉関係について解説していくよ。
とりあえず、琉球史についての解説をよろしく!
(1)琉球史(14〜17世紀初め)
簡潔に概観していきますよ〜。まず14世紀になると琉球には按司(あじ)と呼ばれる領主が勢力を競い、結果北山・中山・南山の三大勢力が生まれるんだね。そして中国では元が滅んで明が興る。
たしか「イサムヤ(1368)明の朱元璋」だから1368年でしょ?んで朱元璋=洪武帝は朝貢貿易だよね。伝統的な東アジアの国際秩序は朝貢貿易と冊封体制。中国が華夷思想で国際システムを形成していたって習った気がする。
そう、琉球には1372年に明の使者が来て冊封を促すんだね。この後琉球では1406年に尚巴志が現れて中山王の王位を簒奪し、1429年には琉球を統一するんだ。琉球は明から冊封を受け、朝貢と引き替えに中国商品を仕入れることが可能になったんだね。
あ〜。ここがミソなわけね〜。他地域が朝貢貿易で制限くらってるから中国商品がレアものになって、みんな欲しがってて需要があって、琉球がそこに供給してやるって感じ。
これにより15〜16世紀に、琉球は中継貿易で繁栄するわけですよ。那覇港は明・日本・朝鮮・東南アジアをつないで栄えたんだね。だが、この繁栄も長くは続かない。
諸行無常で盛者必衰なの。
ここで登場するのが俗に「大航海時代」と呼ばれる、イベリア両国のアジア海域への参入だ。ポルトガルがアジア貿易に参加しtことにより、インドのゴア→東南アジアのマラッカ→中国のマカオ→日本の平戸というルートが形成されるんだ。
なんという死亡フラグ!
こうして琉球の中継貿易の繁栄は次第に衰え、1609年には島津氏に制圧されて、日中両属となるのです。
海域世界を学習すると主権国家・国民国家は相対化されるよね〜。国境とか主権とか西洋の価値観。それを東アジア世界に無理矢理組み込もうとしたから明治の時に国境をめぐってもめて、現在でもイロイロ問題が起こるって説明した方が生徒は絶対分かりやすいんじゃね?レトリックとしての「固有の領土」的な。
(2)明〜清初の中国貿易政策の変遷
東アジア海域世界では14世紀半ば、前期倭寇が勢力を誇っていました。これに対し明代前半に海禁を行ったのですね。洪武帝の朝貢政策に加え、永楽帝による鄭和の南海大遠征。こうして中国は朝貢貿易という貿易統制政策をとったのです。
むかし、定期テストでさー。【北虜南倭は「朝貢貿易」の拡大を求めた】っていう文章を丸にした教員がいたんだよねー。これって朝貢貿易が貿易統制政策ってことを全く理解していないよね。貿易統制政策を拡大したら、ますます不利になるじゃん?正解は「朝貢貿易における貿易量とか朝貢回数」って書かなきゃ丸じゃねーよな。理不尽だわぁ。
そんなわけで明代前半の海禁政策に反発し北虜南倭は明を苦しめることになるわけですね。そのうち琉球と関係あるのは後期倭寇。明は内憂外患に苦しめられて滅亡しちゃった。続いて清は明の復興を目指す鄭氏台湾を鎮圧するため遷海令を敷き、沿海部の民衆を根こそぎ強制移住させていきます。こうして17世紀の政権交代により16世紀の世界的な貿易ブームを収束していく。
16世紀の国際的な商業ブームがなぜ17世紀になると終わったかも論述問題で良くだされるよなー。ここらへんの接触・交流史って結構おもしろく感じるぜ。岸本美緒とかの著作読んでみ。山川の世界史リブレットで出てるから。
(3)日琉関係史
最後は琉球と日本の関係だ。
日本は琉球の15〜16世紀における中継貿易により海域世界に結びつけられます。教科書や資料集によっては球王国の「大交易時代」と記されている場合もありますね。
浜島書店の『世界史詳覧』には琉球の進貢船が薩摩と交易をする図版資料が載っているわ。
そして後期倭寇をどう処理するかがポイントかな。一般に昔の古い教科書だと後期倭寇は中国人が中心とか書いてあるけれど・・・。当時の人々に国家意識とかナショナリズムとか無いですよねー。明確に中国人とか日本人とかの帰属意識があったら驚きます。ここら辺の説明で生徒が混乱してしまうのです。
現代と同じ感覚で歴史を捉えるなと。具体的に挙げられるのが王直さん。王直は日本の平戸や五島に拠って倭寇を率いているよね。浜島書店の『新詳日本史図説』だと倭寇の進路が載ってるけど、後期倭寇は琉球を経て中国の沿岸部を襲ってるよね。
そして論述の最後は島津氏の琉球制圧で締めよう。ポルトガルの進出により、中継貿易で衰退した琉球が17世紀には島津氏に制服されて日中両属のカタチになっていくわけですね。