2020年問題で「世界史」はどう変わるのか?

2020年問題は、現在の中2(2016年度)が高2(2019年度)になった時から直接影響を受ける問題です。
「高等学校基礎学力テスト」と「大学入学希望者学力評価テスト」が始まるのです。(「現行」の学習指導要領のまま始まります)
では世界史はこの二つのテストにおいてどのような関わりがあるのでしょうか?

※参考:高大接続システム改革会議「最終報告」の公表について (高大接続システム改革会議:文部科学省)

「高等学校基礎学力テスト」

まず前者の「高等学校基礎学力テスト」の方ですが、現行の学習指導要領で課されるのは「国語総合」、「数学?」、「コミュニケーション英語?」の3教科のみです。地歴公民理科に関しては、「次期学習指導要領が実施される段階において、地理歴史や公民、理科等を追加導入する」(「高大接続システム改革会議」「最終報告」)とありますので、2024年度までは基礎学力テストにおいて地歴公民理科は導入されないのです。2024年度からというと現在の小3(2016年度)から始まるのですね。

「大学入学希望者学力評価テスト」

次に後者の「大学入学希望者学力評価テスト」ですが、これは地理歴史も現行の学習指導要領のまま2020年から実施されます。つまりは「2020年〜2023年」の現行の学習指導要領の段階と「2024年以降」の次期学習指導要領の段階において2段階に渡って変革がなされていくのです。それぞれの段階ではどのようなことが求められているのでしょうか。

現行学習指導要領下における基本的枠組み(2020〜2023年度)においては以下のように述べられています(「高大接続システム改革会議」「最終報告」)。

地理歴史、公民については、知識・技能に関する判定機能に加え、例えば、歴史系科目においては、歴史的思考力等に関する判定機能を強化する。単なる暗記などによる個別具体的な知識の量や細かな知識の有無により判定することがないよう出題の仕方を工夫する。

ここでは「歴史的思考力」の判定機能を強化するとあります。

どのように強化するのかは次期学習指導要領(2024年度以降)の枠組みをみると参考になります。

地理歴史、公民については、次期学習指導要領における科目設定等を踏まえ、知識・技能に関する判定機能に加え、例えば、歴史系科目においては、歴史的思考力等を含め、思考力・判断力・表現力を構成する諸能力の判定機能を強化する。具体的には、歴史系科目については、共通必履修科目である「歴史総合(仮称)」と、世界史及び日本史に関する選択科目で構成することが、また、両選択科目は、「歴史総合(仮称)」で身に付けた歴史的事象の見方や考え方、思考力・判断力・表現力等を生かして学習を深める科目とすることが検討されており、そのことを踏まえた適切な出題科目の在り方を検討する。

ここで思考力・判断力・表現力を構成する諸能力の判定機能の脚注として以下の具体例を挙げています。

例えば、文章や年表、地図、図表等の資料から、歴史に関する情報を整理し、その時代の人々が直面した問題や現代的な視点からの課題を見いだし、その原因や影響、あるいは解決策等についての仮説を立て、諸資料に基づき多面的・多角的に考察し、その妥当性を検証して考え方をまとめ、根拠に基づき表現する力などが考えられる。

上記を参考にすると、高校生に資史料の分析・問題設定・仮説検証・論理的表現などを身に付けさせる必要が出てくるわけです。教員側もこれを念頭に置いた指導をしていかねばならない。ただ単に一方的に教員がしゃべるだけの「知識伝達型」ではとてもやっていけないことが分かります。アクティブラーニングとまではいかなくても、現段階で一斉授業をする時に、教師は発問を行うことで生徒の思考を促すように参加型になるよう工夫していかねばならないのです。