ココロ@ファンクションは近未来ユビキタス社会におけるサトリ・サトラレなテレパシーモノ。
情報化社会が進展し、言葉にしなくても心情が勝手に相手に伝わるようになったので、さぁ大変。
生徒会長として周囲からの信頼も厚かった主人公くんが、妄想大爆発で一夜のうちに信用失墜。
信用回復のため対策委員会を立ち上げて、メディアリテラシーの分野で助太刀作業を展開します。
体験版だけでもかなり容量があり、これだけでも十分楽しめます。
メインヒロイン(蓮ヶ瀬水菜さん)が腹黒猫かぶり女で「演技」と言い放つシーンが見どころです!!
誰しも自分の心情をストレートに表現するが出来るとは限りません。ですので、相手に良く思われるように本性を隠して接するのは当然だと思います。しかし、このゲームは実に巧妙に「メインヒロイン=腹黒猫かぶり女」であるように感じさせてくれます。ネットで知り合った人物と1対1でオフ会なんて正気の沙汰ではありませんが、このオフ会でのヒロインとの情交が実に主人公くんのココロを打つのです。えろすだけれども優しくて善良な主人公くんとネット環境の無い所に引っ越してしまうメインヒロインとの別れが実にセンチメンタルに描かれるのです。しかし、偶然再び出会い想い出を語らおうとすると、メインヒロインは豹変し、陰険な態度をとり、素晴らしいほど見事な立ち絵の差分の表情で「そんなもの、ネットの幻想、まやかしよ。演技だったに決まってるでしょ」と言い放ってくれます。ハラショー!さすがにメインヒロインがプレイヤァに嫌われないように過去のトラウマを匂わして伏線を張って物語の原動力にもしていますが、この性格描写の対比はダメージが大きいこと請け合い。是非プレイして体感して欲しいところ。
舞台装置とかについて〜テレパシーものとユビキタス社会〜
古今東西超能力のテレパシーは題材となりやすく「人間の本音と建て前の相違を描ける」ので読者を引きつける表現技法となります。初代東鳩や曲芸商法のヒロインでも超能力者はいましたね。ですが本作がそんなに古くさくなく感じるのは、近未来のユビキタス社会が舞台となっているからだと思われます。ネットが繋がれメールやSNSなどのツールが発達したことにより、人と人とのコミュニケーションが再び見直されるているのもまた事実。これにより携帯端末で「相手の心情を読み取る事の出来る」アプリが登場した、と舞台装置を受け入れさせているのですね。ラインでのイジメやSNSでの犯罪自慢が取り沙汰されることが普通になった昨今の状況で、メディアリテラシーを扱い読者の興味を惹かせることに成功しています。特にネットでは本性を隠してキャラを演じる場合も多いかと思いますが、これを十分に生かしたのが本作のメインヒロインのキャラクター表現だと言えます。腹黒さの演出はお見事!!
体験版の流れ〜物語の目的の提示〜
- 信用失墜する主人公くん
- 主人公くんは特殊能力テレパシーを与えられたことにより妄想が駄々漏れになってしまい、朝会放送の際、全校生徒の前でエロ妄想が披露されてしまいます。どんな羞恥プレイや!!自殺もんだぜ。お労しや・・・。そして主人公くんは生徒会長の座を追われ、底辺まで堕ちていきます。この時主人公くんに惚れていたヒロインBが申し開きを求めるのですが、言い訳をしないで関係を絶とうとするのが良いですね。自分のことを信じてくれているのではなく、ヒロインBが自分の理想像を壊したくないだけと分析するところとか一種のエクスタシーがあります。底辺と化していく主人公くんですが、男子連中からは「勇者」扱いされ拒絶とかはされません。さらに、テレパシーの副産物として人工知能型アバターをゲットし、それに興味を抱いたメインヒロインとの関係は保持されたままになります。二人のただならぬ雰囲気に対してヤキモキするヒロインBという構図をさりげなく演出していきます。
- 体験版での一大イベント
- この腹黒メインヒロインとヒロインBによって学校のサーバーのデータが除去されかけるのですが、これを防止するために立ち上がる主人公くんパーティーというのが体験版の一大ビッグイベントです。主人公くん、腹黒メインヒロイン、ヒロインB、ヒッキーな妹の4人組で学校のピンチを救出!さらに主人公くんが全責任を取ろうとする男気を魅せてくれます。この主人公くんの男気が信頼回復の機能を果たし、底辺からは脱出します。そして、学校の危機を阻止した4人組で対策委員会を設立し、情報化社会におけるコミュニケーションに関する諸問題を解決すべく、対策委員会を設立するのでした。これにより様々な人間関係に関するココロの問題を描くことができるようになったわけですね。また、テレパシースキルはエロ妄想だけでなく「本音を伝える」という表現手段がじわじわ効いてきます。対策委員会設立の動機を自分のためだと口では言う主人公くんが実は困っている人たちを救いたいと考えていることが無意識にヒロインに伝わっていくという演出は結構ぐっときました。そんなわけで、「人と人とのつながりを描き出す」という物語の目的が提示されて体験版は終了です!お疲れ様でした。
- 物語のテーマ性とか引用
すれ違って、傷つけあって……それでも一緒にいることを選んで……。人はどうあっても、一人では生きていけないから……。どんなに強がっても、どんなに否定しようとしても、それだけは変えられなかった。そう、私たちは一人だから、一人では生きていけない。貴方がいるから、貴方が生きているから……。この残酷すぎる世界で、支えあいながら、助け合いながら……。−−生きていくことができる。