小さな彼女の小夜曲「片貝汐音シナリオ」の感想・レビュー

『小さな彼女の小夜曲』は母子問題の解決。
周囲を気遣い自分を殺したことから感情の齟齬が生じた少女を救済せよ。
少女の本質を見抜き、自分を表現しても怖くないことを実感させてあげましょう。
最後は学園祭のステージでママンに歌を届けてハッピーエンド。
人魚伝説は全く関係が無かった!!

片貝汐音のキャラクター表現とフラグ生成過程


片貝汐音は引っ込み思案で小動物系の歌好き少女。母親との関係がギクシャクしており、それを改善しようと足掻いています。母子問題が発生したのは、汐音さんのスランプに問題がありました。汐音さんは歌好きであり、たいそう上手であったので、歌手としてデビューしそれなりに評価を受けました。しかし汐音さんは周囲と温度差を感じ、自分の在り方に疑問を持ち始めてしまいます。自分はただ好きで歌っているだけであるのに、周囲は必死になっている状況を垣間見て、自分が場違いのような感覚に陥ってしまうのですね(cf.大図書館の青髪少女シナリオ)。そのことによりスランプに陥りストレスを抱えた汐音さんでしたが、周囲やママンは皆、優しく気遣ってくれ無理に歌わなくて良いというのです。汐音さんはそれが不満でした。自分に「無理するな」というよりも、「頑張れ」と言って欲しかったのです。しかしながら汐音さんは自分の心情を素直に吐露することができず、対人関係を円滑にするために、自分の心を押し殺し続けました。自分を殺して生活していればどこかに齟齬が生じます。こうして汐音さんはママンとうまくいかなくなり、逃げるように転校してきたのでした。



ママンと和解したいと望む汐音さんは、もう一度歌えるようにカラオケで練習するようになります。主人公くんはその特訓に付き合い、汐音さんのためにあれこれと良くしてあげるうちに情が移ってPity is akin to love.汐音さんはそんな主人公くんに好感度を高めていき、振り向いて欲しくて、歌の選曲などに想いを込めるのですが、朴念仁な主人公は気づかないという展開。周囲のヒロインズによって、やっと気づくというパターンですね。しかし、このことから分かったこともありました。汐音さんは「自分の感情を言葉にしない」ということです。付き合いだしてからも汐音さんはどこか主人公くんに遠慮があり、主人公くんが所有するエロDVDを見つけても「理解ある彼女」を演出し、嫉妬や寂しさを隠そうとするのです。主人公くんはそんな汐音さんに対して、何があっても嫌いにならないと全肯定してあげることでオープンハートさせたのですが、そのことで同時に母子問題の本質も見抜くのです。

もしかして汐音さんは社会的な模範解答である「母親が好きな自分」を無意識的に振る舞っているだけではないかと。ママンに対して実は不満をもってるんじゃね?と突っ込みます。汐音さんはここで自分がママンに対して、本音をぶつけていなかったことを初めて理解したのです。こうして汐音さんはママンに対して自分の心情をありのままに吐露できるようになりました。母子問題は無事解決です。そして、主人公くんは汐音さんがママンに最高の歌を届けられるように学園祭のステージをセッティングしてあげます。学園祭当日も、交通トラブルによって時間に間に合わないかもしれないというママンをチャリで爆走して迎えに行き、時間内に送迎することで男を魅せてくれました。こうして汐音さんは最高の歌を届けることができ、ママンと感動の再会を果たしたのでした!ハッピーエンド。