HHG 女神の終焉「弥生学園ルート」の感想・レビュー

「失われた20年」において流行した「格差が固定化した社会体制」に反逆する「反逆モノ」。
ルートAでは愛する女を「聖女」として縛り付ける社会を破壊しようとする。
ルートBではその社会を規定する創造主に対して反逆する「世界箱庭説」。
あと各ルートでメイン以外にサブヒロインを一人攻略できるがオマケのようなものだ。

弥生学園ルートの概要

  • 世界観
    • 作品の世界観は「女神」が世界の創造主であり、その「女神」に奉仕する「聖女」の存在によって社会が成り立っているという設定です。その社会は学園異能バトルものであり、特殊能力保持者は一般人とは違いとても優遇された生活を送ることができるのです。非能力者であった主人公くんは自己研鑽の末、技術を特殊能力と偽れるところまで辿り着きました。そのため、今まで差別を生み出してきた社会を憎んでおり、変革しようという野望に燃えているのです。そんな主人公くんは世界を破壊するという野望のために次期「聖女」候補を自分の女として利用しようとします。ですが、主人公くんは自分の野望とは別に二つの意味で世界を変えることになっていくのです。


  • ルートA
    • ルートAではフツーに女の子を攻略するだけです。次期「聖女」候補生として自由を奪われてきた少女を解放させましょう。特別視されている偶像を一人の人間として扱い「世界から聖女を奪う」という意味での世界破壊なのですね。少し長くなりますが引用しておきます。

「ああやっぱりこの世界は間違っている。誰もが享受してただ消費し続けるだけの日常。そんなものに憧れを抱かなければならないやつがいる。生まれてすぐ、他者に決定づけられた運命をただただ歩かせ続けるやつがいる。世界のために『聖女』にさせられる。そして干涸らびるまで食い尽くされるのだ。人生を、自由を、全てを。単なる人身御供と何が違う。世界を維持するのにそもそも“聖女”は必要なのか?誰かの犠牲なしでは存在すらもできない脆弱なものが世界なのだというのなら。そんなものに撫子の一生を捧げなければならないというのなら。俺は喜んでこの世界に-このくだらない世界に-弓を引く!!」

    • こうして主人公くんは個人の自由ために社会や家族に反旗を翻したのでした・・・が、ここからはあっさり終了。家族から放逐され学園も退学となった撫子さんでしたが、シリアスな描写は一切されず、主人公くんのお嫁さんになって幸せにくらしましたとエンドを迎えます。まぁ本腰を入れるのがルートBだから仕方がないでしょう。



  • ルートB
    • 撫子をあくまでも世界変革のための道具と見なすことでルートBに入れます。内容はフジリュー版『封神演技』。創造主が世界を創り、人々は個人の意識で動いているようで、あくまであらかじめ決められたレールを歩ませ続けられているだけという考えですね。いわゆる「世界箱庭説」です。主人公くんは「世界破壊者として女神の創る世界を壊し続ける」という役割に過ぎないわけですが、このことに気づいた主人公くんたち一派が女神の創るシステムそのものに反逆するというメタ的な展開です。そして、この周回が終わると主人公くんたちの記憶はリセットされるのですが、プレイヤーは物語の世界設定を覚ていられるので超越者としての視点を獲得でき、作中の神と同等の存在になれるという欲望を喚起させられるのですね。通称「第三者の審級」モノ。